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「今まで、ご両親と暮らしてたお家があるだろう」

「もう処分してしまって、おばさまが私の家の荷物や私物を預かって下さっているんです」


 なるほど。

 多分、そうせざるを得ない理由はあるのだろう。

 母の行動は突飛だが、一般常識はちゃんとわきまえている。それに…。

「すみません。ご迷惑をおかけしてしまって」

 ソファーの上で、ただでさえ小さい身体をさらに縮こまらせてこちらを見ているこの少女。

 先程は焦ってしまってちゃんと見ていなかったが。

 多分150センチ前半だろう身長で、まだおうとつの少ないスレンダーな体つき、決して美人じゃないけど、可愛らしく歳相応に幼い顔。

 そして年齢のわりには礼儀正しい。

 この分だったら自分の立場も、きちんと理解しているのだろう。


 一般的には…。

 だけど、自分の婚約者という立場の異性と、こんな狭いアパートメントで暮らすということがどういう事なのか、どこまで理解しているのだろうか。


 ちょっとした、好奇心と悪戯心と…そして、初対面の。しかも、婚約者といわれている男への警戒心をもって貰おうと少女が座っているソファーに近づいた。

 そういえば、焦りすぎて名前も聞いていない。

「俺はマルセル・ベルトランというのだけど、君の名前を聞いてなかったね」

 横に腰掛けながら、手を肩をまわしつつ。耳元にささやくように聞いてみる。

 ぴくんと少し怯えたように反応して。

「あ…アリスです。アリス・バシュレ」

「アリスちゃんか…これから、一緒に暮らすんだ。そんなに堅苦しくしてないで、仲良くやっていこうよ」

 震える身体を、そっと抱きしめて口づけしようとしたら…ギュッと目を閉じて、身体まで硬くして…。

 だよねぇ~、子どもだし、怖いよね~。

 俺は、行き先をおでこに変えて、軽くチュって口付けた。

 驚いた顔で、こちらを見てくる。目尻に涙が見えた。

「部屋は、狭くなるけど奥のゲストルームに使っているところしか、鍵がないから」

「あ…はい」

「一応、ロリコン趣味は無いけど。付き合いでお酒飲んで帰る事もあるから、鍵はかけて寝るようにね」

 ソファーから立ち上がりながらいうと、アリスも立ち上がって。

「あのっ」

「……ん?」

「よろしくお願いします」

 ぺこんと頭を下げた。

 とりあえず、アリスにはゲストルームを明け渡したわけだけど。

 ベッドは置いてある、クローゼットも全部屋備え付けだから良いとして。学生だったよな。

 勉強するための机とか、その他諸々いるものは、買いに行かないといけないか。

 女の子だから、こっちに言えない物もあるだろうし、お小遣いも…。

 結構な出費だな。

 まぁ、明日だ。学校がどうなっているのかも分からないが、それもこれも明日以降の話だな。

 ……とにかく疲れた。

 もともと、他人と居るのは好きじゃないんだ。

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