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 それから、俺たちは自分の屋敷に戻って大急ぎで着替え、なんとか、パーティーのラストに間に合った。

 そして、お客さん達を無事に帰して、俺らの婚約パーティーは終わりを告げる。

 使用人たちは、パーティーの片づけをしている。

 ルフォールも警察の方々も、現地で別れた。警察には、色々聞かれるだろうけど、それもあす以降の事だ…。


 俺らは、それぞれの自室に入って着替えたりシャワーを浴びたりして、やっと一息ついた。

 時計を見ると、もう2時を過ぎていた。

 コンコン。

 少し控え目に、アリスのお部屋と繋がっているドアがノックされた。

「どうぞ」

 声をかけると、ドアが開いて、ひょこっと顔を出した。


 アリスは、部屋着の上に薄いカーディガンを羽織っただけの格好で、手にはサンドイッチが乗ったお皿を持っている。

「良かった。マルセルさん、まだ起きていて……」

「今、下に降りてお夜食もらってきたんだけど、一緒に食べません?」

「ああ。今お茶を入れるよ、入って」

 相変わらず、無防備に入ってくる。

 持っているサンドイッチのお皿をテーブルに乗せると、紅茶を入れる用意をしていた俺のそばにやってきた。

「私が入れましょうか?」

「いや…今日は、慣れないパーティーがあった上に、誘拐までされて。

 その……怖かったろ?」

「怖かったけど。マルセルさんが来てくれるって、信じてたし」

「……信じてた割には、自力で逃げようとしてたみたいだけど?」

 上目使いで見られて、慌てて眼をそらしながら少し意地悪な事を言ってしまった。

「だって、足手まといになりたくなかったし……」

「落ちたり…最悪、エルヴェシウス子爵家側に見つかっていたらどうするつもりだったんだ」

 ついつい強い口調になってしまい、アリスの肩が、ビクッと揺れる。

「あっ…ごめ「悪かった。大声出してしまって……」

 アリスが、謝るのを遮った。

「でも……本当に、アリスが、ぶら下がっているのを見つけた時、心臓が止まりそうになったんだ…」

 横にいるアリスを抱きしめる。

「無事で良かった……。

 本当に、無事で良かった。なんで、あんな作戦に許可を出したのか…その事ばかり、ずっと後悔していた。

 アリスを危ない目に合わせなくても、他に手があったはずなのに…」

 アリスの手が俺の背中にそっとまわされるのがわかる。

「でも私、長引いて、ずっと学校に行けなくなるとか、いやですよ?」

「そうだったね。でも……」

「止めましょう? 私は無事だったんだし…。もう、危険な事は無いんでしょ?」

 10数歳も年下の少女に、諭されるように言われてしまった。

「もし、あったとしても、今度は危険な目に合わせないから」

 俺の腕の中で、アリスが嬉しそうに笑う。




 明日は、俺らのアパートメントに戻って、1週間もしたら、学校も始まる。

 俺は、アリスに起こされて会社に行き、彼女は学校に行く。

 良い事も、悪い事も二人で乗り越えていって…。


 そうして、突然訪れた非日常的な生活は、日常に埋もれて行くのだろう。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

感謝しかありません。

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