キチガイプレイヤーとキチガイフレンド1
「はぁ…」
【Death World Online】は現実の2倍の速度で進んでいる為、ゲーム内時刻で丁度1日の間はゲームをすることが出来ない。まだ10時にもなっておらず、やることも無くなってしまった為、メール等を確認した所、さんざん文句を言った友達がもう一度会おうと言っているので、会いに行くことにした。
そのメールが来てたのは10分程前だ。住んでいる場所も然程遠くないから、今日でも会うことが出来るだろう。
待ち合わせの場所である飲食店まで移動してきた。
「…快斗おひさ」
「久しぶり奏!」
「…殴っても?」
「いや、駄目でしょ?世界に大損失が」
「無さそうだから良さげだな」
「いやいやいや!駄目なものは駄目だから!」
このアホみたいな雰囲気を全身から発している男が、俺の友達だ。因みに、イケメンの大学生で5個程年上だが、本人の希望により完全なタメ口で接している。なんか、堅苦しいのは苦手らしい。
「で、何のよう?【Death World Online】で意味わからん死に方したから機嫌が悪いんだけど」
「プッ。ねえねえ、どんな死に方したん?詳しく教えてよ」
「…こんな感じ」
取り敢えず、全速力で目を隠して横から軽く殴った。
「えっ?いや、分からないんだけど…」
「種族スキル【盲目】で、気づいたら死んでたんだよ…」
「何その鬼畜ゲー…」
本当に鬼畜ゲーだろう。まあ、別にそれ以外は面白いし、空を飛ぶ体験などそうそう出来ないので楽しめてはいるが。
「…ま、まあ俺も【Death World Online】始めたよ。初期種族はレッサーゾンビで、今はゾンビまで進化してる」
「…殺しても?」
「それがもうプレイヤーに殺された後なんだよね…」
何故そんな当たりとしか思えないような種族で殺されているのだろうか?本当に意味がわからない。人型なんだから無双しろよ。
「…ざっこ」
「ひどくない!?いやさー、女の子で、ゾンビって服がボロボロだからさ、あれが見えるか見えないかっていうすれすれを攻めてて、やばかったよあれ。揺れてたし。片方腐り落ちてたけど…」
「…死ねばいいのに」
「だから、プレイヤーに殺された後だって…」
「てか、本気でそれ見てて殺されたの?」
「うん!」
完璧なタイミングで、笑顔でサムズアップをしたイケメン。軽く殺意を覚えるが、今はおいておく。あとで殺すけど。
「で、何のよう?」
「暇だし奏を弄って遊ぼうかなーって」
「帰るわ」
「待て待て待て。本題をまだ話してないだろ」
「今言ってただろ」
「いや、あれはガチの本題だから、軽めの本題はまだ話してないんだよ」
本題って何なんだろうか。まあ、このイケメンの情報は割と凄かったりするので、聞くことにした。
「で、何?」
「いやー本当にあのおっ」
「帰るわ」
「冗談だよ冗談!…で、【Death World Online】の全ての種族を練習できる個人用ソフト有るけどいる?」
「何それ」
そんな物は聞いたことがないし、ネットの何処にも載っていなかったが…。
「俺の人脈知ってるでしょ?数量限定で一部のお得意様向けに作られた特別物、先行販売だよ」
「…」
「これ、【Death World Online】のデータと連動してて、10倍の加速空間で自分のキャラを操作する練習が出来る。【盲目】状態になる特殊なキャラならこれは必須じゃない?」
今の会話で分かると思うがこのイケメン、割とお偉いさんだ。今までの経験上、俺に可能で不都合はないけど、向こうは得する条件をつけて、俺にそれをくれるような気がする。
「で、何が交換条件?」
「【Death World Online】で俺とは絶対に敵対しないで欲しい」
「いいよ」
「いや、助かる。あのゲーム最終的にプレイヤーの殺し合いが主軸になるゲームだろうからさ、奏だけは敵に回したくないんだよね」
「普通に俺以外にもヤバイやついるだろ」
「いや、奏ほど野生的で意味のわからない動きをする人いないよ?プロの方々からも、特殊種族時の奏は特別視されてるんだから」
特別視されてるって聞くと良い印象が有るが、野生的とかそこらへんは完全に駄目なやつだ。俺みたいな一般人を捕まえてそんな事を言わないで欲しい。
「本当に、人型時よりも、獣の見た目をしてる時の方が奏強くなるじゃん。あれってだいぶ頭のおかしいことだからね?」
「いや、それは周りが上手く動けてないだけで、強くはなってねえよ」
「まあ、そう思ってるんだったら思ってれば良いんだけど…」
実際に、周囲の人は皆、人型のほうがやりやすいと言っているのだから、俺の言っていることは間違ってないだろう。
「あ、それとね。【Death World Online】の運営が正式に、【人化】のスキルの存在を認めてたよ」
「それは知ってる。てか、お前は関係ないだろ」
「まあそうなんだけどねー。んじゃ、話すことは話したし、遊びにいかない?ゲーセンで特殊格ゲーやろうよ」
「いいよ」
勿論、格ゲーというのはVRで自分で動かすものだ。その中でも、特殊格ゲーというのは人間だけでなく、犬だったり鳥だったり、何でも使うことが出来る意味のわからないゲームだ。
取り敢えず、一回目は真面目に人型でぶっ殺そうと思う。