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Angel's Belief~天使たちの存在証明~  作者: 著:Roxie 原作:岳飛 様
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4話 ボクはメイドになりました

西暦2052年12月22日

コロンビア駐屯地



「祝勝パーティー? 今日だったか?」

「今日ですよ、少佐」

 数々の提出書類そっちのけにニュースペーパーを読みふけるだらしない大隊長、ヴィクトル・カルカーニ少佐に、ルークは肩をすくめた。

 避難民、負傷兵、何人もの命を守り抜いてきた偉大な兵士であることは疑いようもない事実なのだが、書類の締め切りだけは微塵も守らないのが玉に瑕。あまりにひどいときは、副官のルークへ仕事が流れてくることもある。

 とは言えルークは、このトライデント大隊の一員としても、ASTSとしても、先輩にあたるヴィクトルのことを深く尊敬はしていた。

「そうか。いや、俺はてっきり、そういうのはクリスマスに被せてくるものかと」

「少佐、たまにはカレンダーとにらめっこする時間を設けてください」

 と梓燕中尉が少しトゲのある口調で文句を言う。

 あーだこーだと文句を言いながら、抜け目なく世話を焼く部隊の若女将。明るい性分で、平常時のムードメーカーでもある。

 兵士としても有能でありながら、歪天使としても【例外過多の無差別殺戮】という、レギオンのみにダメージを与えそれ以外の物質・生物には寸分も傷つけない特異な放電ができる、便利な異能を持っている。ついた渾名は『素手で重戦車を瞬殺する女』である。

「パーティーねえ。……おしとやかなレディがそれなりにいるなら、行く価値もあるんだが、大半はどうせ汗臭い野郎なんだろうなあ」

「あら少佐、私も行きますよ?」

「そうか。俺は『おしとやかなレディ』って言ったんだが、鏡とにらめっこしてきたらどうだ?」

「ひどっ」

 壮年のせせら笑いを見せるヴィクトルに、オーバーなリアクションを見せる梓燕。それを、巻き込まれぬよう静観するルーク。このトライデント大隊長の執務室では見慣れた光景である。嫌味合戦の中身も、Dr. エルシーの暴言に比べれば可愛いものだ。

  壮年のせせら笑いを見せるヴィクトルに、オーバーなリアクションを見せる梓燕。それを、巻き込まれぬよう静観するルーク。このトライデント中隊では見慣れた光景である。嫌味合戦の中身も、Dr. エルシーの暴言に比べれば可愛いものだ。

 ──こんなほのぼのとした3人だが、今から3年前のおびただしい死者を出したメキシコ会戦で勇敢に戦った仲だ。

 後方部隊の撤退時間を稼ぐため、事実上の玉砕命令が下った中、なんとか生き残ったのは彼ら3人を含めても数えるしかいなかった。

 そんなわけでヴィクトル少佐は、元よりフランクな人間であったとは言え、このルークと梓燕には特に気を許していた。

 そして1度は壊滅した部隊も、今や再編成を経てかつて以上の勢力を持ちつつある。

「私だって、本当はこんな軍服じゃなくて、シックなワンピースでも着ていきたかったんですからね」

 と、梓燕。

 一応は19歳の乙女ということを考えれば、分からんでもない言い分でもある。

 一方、幼少期から生きるか死ぬかの地にいることが当たり前だったルークは、パーティみたいな浮ついた場は苦手だった。

 なので先日、梓燕が出欠をとっていたときに、きちんと残業処理を言い訳に欠席することを伝えていた。

 それが良い理由になるほど、ヴィクトルが貯めこんだ仕事の量は多いのだ。

「まあ、俺は行かないから、少佐と梓燕と他の連中で楽しんできてくださいよ」

「何言ってるんですか。ルークも行くことになっていますよ」

 梓燕がケロッとした顔で言った。

「おい、梓燕。俺は出ないと言っただろ。カップケーキ奢らせといて怠慢かよ」

「いえいえ。少佐が『何、ルークの奴、欠席だ? 連隊長の顔を潰す気かよ、あいつ。良い良い、出席にしとけ。いざとなったら俺が責任とる』と仰ったので出席に」

 苦い顔をするルークに梓燕はつゆも臆さず答えたが

「梓燕。確かに似たようなことは言ったが、『いざとなったら俺が責任とる』の部分は全く覚えがねえな」

 と、いざとなっても責任から逃げたがるヴィクトルが注釈を加える。

「そこは上官と部下の間にあって当然のアイコンタクト、暗黙の了解というものです」

 そう簡単に屈しないのは梓燕も同じだ。

 しかし責任がどこにあろうと、勝手に出席にしたことまではヴィクトルも共犯らしい。

 ルークは顔をしかめてヴィクトルに詰めよった。

「少佐。つまり、少佐も手伝ってくれるということで良いんですよね。というより、本来なら少佐ご自身がやるべきことなのですが」

「まあ、なんだ。その辺については、シャンパンでも飲みながら相談しようぜ」

 もうルークと目を合わせようともしないヴィクトル。

 すると梓燕、にっこり笑いながら

「良いアイディアですね、少佐。私もシャンパンを飲みながら、なぜ副官でも何でもない私に仕事が流れてくるのか、き、っ、ち、り、聞かせてもらいたいです」

 と迫る。

 うっすら青筋が浮かんでおり、今にも放電しそうな勢いだ。

 苦し紛れにヴィクトルは

「おい、梓燕。そんな怖い顔してると、顔に小じわが残って、嫁に行けなくなるぞ」

 と言ったが、これは類を見ない悪手だった。

 カッと鬼のような形相になった梓燕が一気にまくしたてる。

「誰のせいだと思ってるんですか! 元を正せば、少佐がきちんと仕事してくれれば──」

「分かった分かった。苦情は酒の席で聞いてやる」

「まったくもう。ただでさえ【素手で重戦車を瞬殺する女】なんて嬉しくない風評が広まって、新人から怪力ゴリラ女と勘違いされてるのに。本当にお嫁に行けなくなったら、少佐、どうしてくれるんです?」

「あん? そうだな。……ルーク。確かおまえ、まだ決まった相手がいなかったろ。もらってやれ」

 ヴィクトル、渾身のキラーパス。

 ルークは満面の渋面で

「辞退させてください。俺にも選ぶ権利くらいあります」

「上官である俺の命令だぞ。刃向かう気か?」

「公私混同は部隊の士気にも関わりますよ?」

「私を押し付けあうなー!」

 ついに梓燕が異能の放電をぶちまけながら怒鳴った。




 †





 祝勝パーティは、駐屯地内の大ホールを用いて開催された。

 主催者である連隊長、スネルマン大佐は今時珍しい文化人。節目に部下をねぎらうことは忘れないし、費用を自分の懐から出すことも厭わない。

 そんなわけで、本当の上流階級の食事に比べれば粗末かもしれないが、質素な食堂の飯ばかり食べている兵たちから見ればご馳走ばかりだった。

 それでいて参加費は割安で、しかも給料は出たて。これで参加しないのは、入院中の絶対安静を命じられた負傷兵くらいのものである。

 確かに物資が全面的に乏しい時代だが、士気の維持も大切なことだ。これが損なわれては、勝てる戦も負けてしまう。そもそも貴重だと言うなら、勝利を喜べる時間の方がもっと貴重だった。このところ人類は、だいぶ負けがこんでいる。

「これまた、結構な規模になったな」

 結局は連れてこられたルークは、用意された華やかな料理に舌を巻いた。

 それと同時に、彼の予想を上回る出席率の高さにも。腕や足にギブスをはめたまま、何とかやってきた者もいる。

「な? 来て良かっただろ?」

 とヴィクトル。

 賑わい事が好きな彼らしく浮かれているようだったが、それでもトレードマークであるサーベルだけはこの場にすらも携行していた。

 ASTSは普通、鐡聖将を操って戦うことになるが、鐡聖将が使えないような場においても置物と化さないように生身での戦闘訓練もしっかり受けている。

 実はこのサーベル、レギオンにも十分通用する威力を持つ特殊仕様の代物である。いつ何があるか分からないこの時代、このように何らかの武器が手元にないと落ち着けない軍人は少なくないし、それはルークも同じだった。故に軍も、精神疾患や犯罪経歴などに問題がない者に限り、申請されれば階級や役職に合わせた武器の携行を認めている。 

 その点、まるで手ぶらなのが梓燕で

「って少佐、こんなところにまでサーベル持ってくるんですか?」

「俺たちはおまえと違って、素手では重戦車を瞬殺できないからな」

「まーた、そうやってー」

 嬉しくない渾名を揶揄された梓燕は頬をぷーっと膨らませる。

 それはそうと、1つ隣のテーブルの向こう、ステージ直下の端の方では主催者のスネルマン大佐が副官などと何か話し合いをしているようだ。

 これだけの雑踏の中でも、多少の距離をもろともせず拾い聞きできてしまうのが、研ぎ澄まされた五感を持つASTSならではの所業で、ルークはそれとなく耳を傾けてみた。

「ワッハーブ准将はどうなされた。もう時間だというのに」

「それが、リオデジャネイロからの出発が遅れてしまったようです。例の【天羽々斬プロジェクト】に関する会議が長引いたのだとか」

 苛立ちを隠せない大佐に、その副官が説明を述べている。

「天羽々斬というと、確か次世代鐡聖将とかいうアレのことか」

「そうだったはずです。あちらの副官から伺ったところ、かの倉城少将をはじめとする大御所が大勢集まったそうで」

「そういうことなら仕方のない話だが、しかし、やはり准将に鼓舞と慰労の演説をしていただきたかったな」

「なら、そこだけスキップして進めますか? まさかここまで来て、パーティを順延はできますまい」

「そうするしかないだろうな。准将の演説は着き次第、最悪の場合はお流れということで」

 そこで話はまとまったらしい。

 ワッハーブ准将と言えば、このコロンビア支部でも屈指の権力者だが、同時に新型鐡聖将の開発者としても結構な権威である。傑作機と名高い鐡聖将【ストライクランサー】の開発にも携わった、という経歴だけでも脱帽ものだ。

 次世代鐡聖将というのはルークはよく知らなかったが、出世もしすぎると色々と忙しいのだな、とはぼんやり思った。その点、ヴィクトル少佐はずいぶんといい加減だが。

 そのとき、梓燕が興奮気味にルークの服を引っ張った。

「あ、見てくださいよ。ほら、鮮魚のカルパッチョ! 」

 梓燕は頭の中が食欲でいっぱいの様子。

 まあ、海の大部分がNBC兵器(核・生物・化学兵器の総称)により汚染されてしまったこの時代、鮮魚は目の飛び出るような高級品。

 それが食べられるというだけでも、テンションが急上昇するのは無理もない話かもしれない。

 戦場では名だたる戦果をいくつも挙げてきた彼女も、今は年相応の少女らしさ全開だった。

 ──偉い人の話が一通り終わると、いよいよパーティーの幕開け。

 その瞬間、

「総員、突撃ー!」

 梓燕は自身が率いる歪天使たちを連れ、本当に戦車でも跳ね飛ばしそうな勢いでカルパッチョの皿へとびついた。

「突撃ラッパの音が聞こえてきそうな光景だな」

 陰ながらルークが呆れ顔でコメントする。

 ステージの上では主催のスネルマン大佐が開幕の挨拶をしているが、参加者の過半数は聞き流しつつ酒や食事に舌鼓を打っているところだった。

 真面目に聞いていたら、何も口にできないうちにパーティが終わってしまう。

 ルークも、あちこちの御馳走を荒らしまわる歪天使たちを遠目に眺めつつ、好物のスパークリングワインを開けた。

 スパークリングワインと言っても、無水エタノールを炭酸糖水とブドウ風香料で割っただけの安物だったが、そもそも安物しか飲んだことがないので文句はない。

 それにASTSは肝機能も強化されているため、いくら酒を呑んでも酩酊を楽しむ前に人工肝臓がエタノールを速やかに分解してしまうため、風情も何もないのだ。

 それでもまあ、たまにしか呑めない酒である。ルークはとりあえず自分のグラスに注ぐと、ヴィクトルにも、

「少佐」

「お、渋々来たわりには気が利くな」

 ヴィクトルはスパークリングワインを注いでもらいながら、向こうではしゃぎまくる梓燕と愉快な天使たちに目を向けた。

「しかし……。あれじゃあ、どんなに長生きしたところで、嫁にだけは行けそうもないな」

「でしょうね」

「まあ、ルーク。おまえがもらってやるなら話は変わってくるだろうが」

「だから、なんで俺なんですか」

 とルーク、ヴィクトルに不機嫌そうな目を向けて抗議する。

「じゃあ、あれと死神先生のどちらかを選べとなったら、どうする?」

「その2人を結婚させて、俺は1人で生きますよ」

 ルークは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。

 死神先生(言うまでもなくDr. エルシーを指す隠語である)の悪評は、もはやASTSの中では常識中の常識。そしてヴィクトルは上司として、なぜかルークがエルシーにやたら気に入られていることは把握していた。

「あのな。酒と女はほどほどが1番と言ってな。溺れるのは論外だが、一切拒絶するのも勿体ない。端から見てりゃ、ルーク、おまえの生き方は堅実だが花がなくていけねえ」

 女好きのヴィクトルらしい説教だ。

 士官学校時代は無茶苦茶モテたという自慢話を何度聞かされたか分からない。

「少佐。俺にだって好みって物があります。野良犬と同じで、向こうからグイグイ迫ってくる奴は苦手なんですよ」

「そういうのは大抵、男にエスコートしてほしいんだ。──お、あれ見てみろ」

 とヴィクトルは彼のルークを抱きながら、向こうのテーブルでワインやシャンパンの補充をしているウェイトレスを小さく指差した。

 まだここへ来たばかりなのか、見かけない新顔だったが、だいぶ若い。手際は良く見えないが、それでも一生懸命に仕事をこなしている。

 だがその顔を見た途端、ルークは危うくシャンパンをこぼしそうになった。

「こういうのを運命的な再会って言うんだろうな。覚えてるか? ジャマイカのラッキーガール、ロザリアちゃんだ」

 ──そうだ! 路地裏で会った妹気取り、ロザリア・バタリオン!

 気づいた途端、反射的にルークは顔をそらした。

 こんな所で【お兄さん】と呼ばれようものなら、恥ずかしさで発狂死するかもしれない。

 それにしても、就職したのは結構なことだが、なんでよりによってここなんだ!

「ああいう健気な娘は、数年置いておくだけで良い女に化けるもんだ。安いうちに手に入れておき、美味くなったら楽しむ。ワインと同じよ」

 なんだか、いやに経験味にあふれたアドバイスだった。

 が、そんなアドバイスはそれどころではないルークの頭を素通りしていく。

「少佐、ひょっとして幼女に手を出したことあるんですか?」

 振り向くと、いつの間にか戻ってきていた梓燕が、女の敵を見るような目になってヴィクトルを睨んでいた。

「おい、待て。俺が手を出したのは成人だけだからな。憲兵に連絡するなよ。絶対だぞ」

 少佐がとっさに釈明する。

 梓燕はしばらく疑いの視線を向けていたが

「まあ、保留しておきます。今は、このカルパッチョが私を待っているので」

 と、皿に取ってきた鮮魚のカルパッチョを一口。

「あ~ッ、頑張って良かった! 人生サイコー!」

 とガッツポーズを掲げる。ホール中の参加者が何事かと視線を向け、スピーチ中のスネルマン大佐までもが思わず閉口してしまう。

 流石の梓燕も赤くなって縮こまった。

 が、このとき梓燕のすぐ隣にルークがいたことが、致命傷となった。

「あれ? ひょっとして……」

 あちらのテーブルで酒類の空き瓶を回収していた新人ウェイトレス、ロザリア・バタリオンが、ついにルークの存在に気づいたのだ。

 その途端、空き瓶なんかそっちのけに

「お兄さん!」

 と高らかに一声。このときルークは、やっぱり来なければ良かった、と深く後悔した。

「あ、やっぱりお兄さんだ! 奇遇だね、こんなところで」

 その間にもロザリアは、ルークらのいるテーブルへやってきてしまった。

 こういう馴れ馴れしい小童が何より苦手なルークは、眉間にしわを寄せながら、

「おい、なんでおまえがここにいるんだよ」

「お仕事」

 ロザリアはにっこりしながら、端的に答えた。

 笑うと案外かわいいのは相変わらずだが、ルークはとてもそれを素直に言える気分ではなかった。

 もう少しで「すぐに転職しろ」と言うところだったが、それも言わせてもらえなかったのは

「ちょっとルーク! こんな可愛い妹さんがいるって、なんで教えてくれなかったんですか!」

 と梓燕がしゃしゃり出てきたからだ。

 酒の勢いもあって、間髪いれずロザリアに熱いハグ。

「お姉さん、だあれ?」

 ロザリアはすっかりきょとんとしている。

「おまえが幼女に手を出してどうするんだよ」

 とヴィクトルは部下の暴走を嘆いたが、すぐに声をひそめてルークに、

「ところでルーク。おまえも隅に置けねえな。いつ手を出した?」

「違います。あのチビはこの前、路上でチンピラに絡まれてたのを助けてやったんですが、そんときから勝手に俺の妹気取りしてるだけです」

「そうか。確かに、おまえの妹にしてはブルテリアみたいな顔してないな、と思ったが、そういうことか」

「あのガキに比べれば、ブルテリアの方がよほど可愛い」

 ルークは「気にいらん」とばかりに毒づく。

「でもボクのことを『俺の妹』って言い出したのは、お兄さんの方だよね」

 全部拾い聞いていたロザリアが口をはさんだ。

 ルークの眉間にみるみるシワが寄る。

「ああ、今年の『言わなきゃ良かった失言オブザイヤー』だよ。それをここまで真に受けやがって」

「そこまで言うなら、私に譲ってください!」

 なぜか梓燕の方が必死になっている。

「この子、今夜だけで良いから隊舎に持ち帰りたいです」

「ごめんね。ボク、このお仕事が終わったらおうちに帰るんだ。ママが待ってるから」

 ロザリアは梓燕に抱き締められながらもそう言った。

 もしかしたら、ここで得た給金を汽車賃にして、母親の待つ地へ帰還するつもりなのかもしれない。1人でレギオンだらけの孤島へ潜りこんだことを考慮すると、凄まじい行動力である。

「うーん、そういうことなら仕方ありませんね」

 梓燕はようやく、口惜しそうにロザリアを解放した。

「ったく。おい、チビ」

 ルークがキツめの口調で言い放った。

「チビじゃないよ。ロザリアだよ」

「どっちだって良い。早いところ仕事に戻れ。勤務態度が悪いって減給されても知らねえぞ」

「あ、そうだった。今はメイドさんなんだった」

 どう見てもウェイトレスである。

 思い出したようにロザリアは厨房へ戻ろうとした。

 しかし、途中で何か思い直したように、ルークのところへ戻ってきた。

 何だと思いきや、ルークの耳元でささやく。

「ねえ、お兄さん」

「なんだよ」

「ボク、おなかすいちゃったんだ。どこかのパン屋さんから何か買ってきてくれない?」

「……はあ?」

●祝勝会

いくら物資がないと言っても、兵士に報奨を授けるのは大事。

士気だって大切な資源です。


●パン買ってこい

一流のヒロインってのは、受けた恩を忘れないもんだぜ。



○ ヴィクトル・カルカーニ

トライデント部隊の大隊長で、ASTS。

ルークや梓燕の上司であり、2人の良き面倒見。

鐡聖将の敏腕パイロットだが、私生活や事務業面はルーズ。

座右の銘は「良い女かどうかは尻を見れば分かる」


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