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1ねこ 俺の素性とゲームを始めた理由

自分の尻を叩く意味も込めて投稿。

プロローグだけ投稿する勇気!

《アカウントの認証に成功しました。続きまして、ダイブカプセルに接続ください》


「ヴォニャアァァァーッ!」


 パソコンの画面に表示されたメッセージに、興奮して奇声を上げる猫が一匹。俺だ。


「ニャーニャアアァ、にゃっにゃっ」


 次いで、マタタビでも食らったかってくらいのトロ顔をさらす猫が一匹。俺だ。


 ……よーし、そろそろ現実に戻ろうか。


 俺は真顔になると、パソコンから俺の痕跡を丁寧に消していく。帰ってきたご主人に不審がられないよう、メルアドなどの情報はもちろん、クッキー、キャッシュの一つとて残すわけにはいかない。

 相変わらず、肉球でパソコンを操作するのはものすごくしんどいが、タッチパネルよりは断然マシ。あれは無理ゲーだ。


 ……これでよし、と。


 深いところまで探られたらこれでも粗は見つかるだろうが、我がご主人はそんなことを日常的にやる人間ではないから、よしとする。俺の技量的にも、この辺りが限界だ。


 パソコンの電源を落として、デスクの上から飛び降りる。自分の背丈の数倍はある高さからのダイブも、もう慣れたものだ。音もなく着地を決め、急ぎ足でダイブカプセルへと向かう。


「にぅ……にッ、ぐ、にゃん!」


 そうして、あんまり力の入らない前脚で電源を入れる。次いで開いたカプセルの中に入り込むと、ぎこちなくも各種設定を動かしてシステムを起動させた。

 さらに、内部の各所に表示される案内に従って、端末を身体に取り付けていく。


 ここらの細かい作業はやはり猫の手には余る。しかし、予行練習は何度も重ねてきた。ご主人の目を盗んでがんばってきたのだ。なんとかなる。なんとかできる。


 ……よし、起動した!


《端末の接続を確認。ゲームを起動しますか?》


「にあっ!」


 答えはもちろんイエスだ。俺は興奮を抑えられないまま、カプセル内の天井に映し出された最終確認画面を肉球でタップした。

 すると即座に、カプセル内の景色が変わる。昔のSF映画にあったみたいな、黒い背景に緑色の数列が流れるアレだ。

 その光景を不思議な心境で眺めながら……少しずつ、俺の感覚は現実から乖離していった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 我輩は猫である。名前はまだない。

 どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。なんでもペットショップのケージの中でニャーニャー鳴いていたことだけは記憶している。

 品種はソマリ。フォーンカラーの長い体毛と、ふさふさのしっぽがトレードマークのナイスガイである。


 ……とかなんとか、気取った風に始めてみたが、実際のところ俺には名前があるからそれは嘘だ。すまんな。


 ああいや、自分が猫ということは嘘じゃないぞ。正真正銘、俺は猫だ。


 名前は黒川北斗……だったんだが、今はナナホシと呼ばれている。背中に七か所だけ、色合いが違う黒い毛並があるのがその由来だ。

 前世のハンドルネームも、北斗、からの北斗七星で、ナナホシだったりするんだが。まったく奇妙な巡り合わせだと思うよ。


 何を言ってるのかわからない?


 うん、まあ、そうだろう。俺も慣れるまで半年はかかった。

 ぶっちゃけて言えば、転生というやつだ。そう、俺は死んで、猫に生まれ変わってしまったのだ。


 なんの因果で死ぬ前のことを記憶しているのかは、まったくわからない。ただ、俺が人間「黒川北斗」のすべてをそのまま受け継いでいることは間違いない。


 そのせいで、人によっては気味悪がられたりもしたけどな。人間と同じようにふるまう姿は、かなり人を選んだんだろう。

 一方、世の中何が幸いするかわからないもので。逆に天才猫として取沙汰されることもあって、出演した某動物番組でゲストだったとある女優が俺を気に入り、購入されて今に至る。このときばかりは縁という言葉に思わず感じ入ったものだ。


 それはともかく。


 実のところ、転生したこと自体はそこまで驚いてなかったりする。

 いやほら、そういう作品は昨今珍しくないし? 俺自身も例に漏れず、お気に入りの小説サイトでよく読んでいた口だし?

 なんだったら、そんな題材のアニメにだって出演したこともあるんだぞ。これでも前世は声優だったんだ。端役しかやったことのない木っ端者だったけど。


 とまあそんなわけで、転生自体は驚いてないわけなんだが。むしろある種の心構えすらあったレベル。


 ただな? 珍しいことに(?)俺が転生したのは異世界でも並行世界でもなかったんだ。これが問題なんだ。だって元の世界にそのまま転生したんだぜ?

 しかも、しかもだ。

 転生先が戦国時代とか、ポストアポカリプスの世界なら壮大な物語の始まりかとでも思ったんだろうが……あいにくと俺が転生したタイミングは、死んでからわずか一年後。世に変化はほとんどないに等しく、おかげで真新しさとか、そういうものとは一切無縁でいささか残念である。


 いやまあ?

 過酷な異世界でサバイバルを強いられたりするよりは、何百倍もマシだとはわかっちゃいるんだが。事故死でも嫌だったのに、生まれ直して改めて殺されるなんて超嫌だし。

 だとしても、平和な時代に猫に転生ってどうなのよ? なんて思ってしまうわけさ。


 おまけに猫だろ。おかげさまで買い手がつくまでは暇で暇でしょうがなかったよ。

 その間あれこれと考えたが、もちろんどうにかできるはずもなく。俺を引き取ってくれたご主人には、まったく感謝してもしきれない。


 ともあれそんな感じで新しい生活が始まったのだが……ペットショップから脱したとはいえ、猫の生活が暇であることに変わりはなかった。


 しかしこれまた幸いなことに、ご主人は今日びの若者でな。自宅には遊ぶための道具はそれなりにあって、その最たる例がパソコンと言える。これを使わない手はなかったね!

 起動パスワードを覚えてからは、溜め込んでいた鬱憤を晴らすかのようにご主人のパソコンを使いまくる生活が始まったわけだ。それがちょうど二週間前のこと。


 猫の身体での操作は難しかったが、慣れれば意外となんとかなる。そこでようやく己がどういう世界に転生したかを……まあ薄々気づいてはいたが、ともあれ世界について知ったわけだ。


 そうして人心地つけて、しばらく。


 死んでから転生するまでに一年。転生してから今日まででおよそ一年。あれから都合二年しか経っていないわけで、それなら前世の知り合いは大体みんな生きているはずだと思い直した頃合いだった。


 ある日、いきなりご主人が友人からダイブカプセル……つまりVRゲームのための機械をもらってきたからいけない。

 ただでさえ退屈に殺されそうだったんだ。そこにそんな面白そうなものを持ち込まれたら、触るに決まっているじゃないか!


 というわけで俺は、前世の友達への思いを振り切り、涙をこらえてVRの世界に飛び込むことにしたってわけだ。


 いやもちろん、冗談ではあるんだよ? ただ、本気でもあるんだ。これでも思惑はちゃんとある。


 そもそもとして、俺の前世の知り合いの多くは、オンラインゲームをよく嗜んでいた。そこから始まった交友関係もある。幼馴染の中には、フルダイブVRが実現したときのためにと称してVR貯金なる行為をしていたやつすらいるくらいだ。

 そういうわけだから、いくら高価な機械がいるとはいえ、なんだかんだでVRに縁のあるやつはいるんじゃないかと……まあ、そう思ってだな。こうやって猫のデータを端末に登録して、起動するという難関に挑んだわけだ。


 猫の身体で長距離移動は難しい。危険も多い。それならいっそ、電子の世界でがんばったほうが建設的だろう?

 それに、ネットはゲームの中でもできるみたいだしな。それもより感覚的に操作が可能らしい。とくれば、ネット上での知り合い探しはゲームの合間にもできるはずだ、という読みもある。


 そんなわけで俺は今、すべての難関を乗り越えてVRゲームに……世界初のフルダイブ型VRMMORPG、『Secret Wisdom of the World』……略してSWWにアクセスすることに成功した。それが冒頭というわけだ……。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


というわけで先日投稿した短編はなんだったのかという話ですが、まったく違う新作始めました。

今回は初挑戦のジャンル、VRMMOものです。

のわりに転生とかくっついてますが、いつも通り細けぇことはいいんだよの精神でいてくださるととても幸いです。

続きはできるだけ早く投稿したいですが、力尽きたら明日の夜ということで・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] 飼い主がゲームしようとしたら猫の登録がバレるのでは?
[一言] 最初の数行で吹きましたw
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