気づいたら流されてました。【改稿】
矛盾もあると思いますが、スルーして頂ければありがたいです。
【2017/03/07改稿しました。】
王太子視点の追加。本文を修正。
後々書き直す可能性アリです。
これは、ソルティア王国とノヴェリウス王国のお話。
緑豊かな自然の中に、馴染むように中世ヨーロッパを思わせる建物が軒を連ね、中心部には青と白を基調とした城が十字のように裾を伸ばして中心街を食い込んでいる。
中心街は所謂城下町、王都と呼ばれる場所で、各種店が連なり大層な賑わいを見せており、治安もいい。
たまに、国のカラーである白と青を基調とした騎士服を身に纏った騎士達が歩いている光景は、街の人たちの名物と言っていい。
今日は、そのソルティア王都が大変な賑わいを見せていた。
隣国の王太子の留学訪問の歓迎式典が行われる為に御祭り騒ぎになっているのだ。
それを、あまり関係ないと思っているソルティア王国の中心人物、一風変わった王女がいる。
彼女は、王国では珍しく一夫一妻が徹底しているこの国で、2男1女いる子供たちの王女である。
名をノーラスゥエイズ・フォン・ソルティア。御年16才。
天才と何とかは紙一重と言われることわざを体現した姫であった。
王族の義務である教育の他に、暇だからという理由で殆どの国の言語を勉強したり、地歴を調べたり、それはもう勤勉だ。変わっていると評される最たるものが、料理。王女が厨房に来たと大騒ぎになった後、とやかくあって、厨房の出入りを許された彼女は今までなかったお菓子やおかずを作り出し、今や料理長を始めとする料理人の心を掴んで、昼間暇な時間に数人で囲んで料理開発をするまでになっている。その料理は城下で評判になり今や国の特産品にまでなっているのだが本人は気づく様子もない。
彼女自身、ただの興味と自身の欲望から始めたことが、思わぬ所で国に利益を産んでいるなんて思ってもいない。
家族愛が薄いとされる王族で、楽しめることを探した結果だ。国の王である父とは殆ど顔をあわせることもないし、王妃である母も、毎日顔をあわせることがない。
彼女は兄達からは敬遠されていると思っている。
実際の所、彼らは今まで害なしと放っておいた妹とどう接していいのかもわからず、陰ながら護衛を倍つけて色々と厄介な連中に好かれる妹を守ろうと画策しており、必死に話のネタになりそうな料理を勉強したりしているヘタレな兄達だ。
その妹は政略結婚の駒にされる前に好きな事をしようと弾けている結果なのだがそれもまた兄達は知らない
彼女は今日も今日とて、自らの楽しみに勤しんでいた。
「ふふん、ふふーん」
ドーム型の屋内に所狭しと書架が建ち並ぶ城内の一角、図書館で天窓になって木漏れ日が当たる場所を陣取り、数冊の本を広げて、魔法研究書と呼ばれる魔法学の上級書を読んでいた。
そうこの世界には、魔法がある。
生まれてこの方、勉強の密かな楽しみといえばこれを読む時間だった。
緩やかな薄い茶髪のウエーブがかった髪をハーフアップに纏め、至福の時間というだけあってその顔は淡い笑みを浮かべてさえいる。
ボソボソとこの国の人間には、理解不能であろう言語を並べてうふふと微笑む姿は、楽しそうではあるが魔女を思わせる。
彼女は転生者だった。
生まれた時には、すでにその記憶が蘇り、呆然としたものだ。
あとはもう諦めの境地。動けるようになってからは、興味の赴くまま、好奇心のままに突き進み、周囲を慌てさせた。
「お兄様達は、私を嫌っておられるし、お父様も執務が好きって感じだし…、私もいつかはどこかへ嫁ぐのだろうし、うーん…」
彼女の父は王でありながら、初めての長女を溺愛し過ぎるあまり遠くから眺めるしかないヘタレ、彼女の兄らと同類なだけだ。会っても、表情が緊張と緩みそうになって凍りつき、勘違いさせるばかりなのだ。そんな父を母である王妃は呆れた目で見ており、お仕置きとばかりに長女に勘違いをさせたままにしている。婚約者が今の歳まで一つも上がらなかった理由はそれである。
少し考える素振りを見せていたもののその能天気さで、切り替えた彼女は再び本に熱中し始めた。
「……ノーラ様、そろそろお時間です」
そんな中、声をかけてきたのは彼女のお目付役ともいうべき存在。中性的な顔立ちの美形紳士、ノエル。
頭が切れ、ノーラの言うことも説明すれば大体理解してくれるという優れものの逸材である。
「あら?今日は何かあったかしら?」
「……ノーラ様、すっとぼけるのもいい加減にして下さい。」
無表情であった顔に呆れを滲ませて、息を吐く紳士は、大抵の女性を虜にしてしまうであろう顔立ちをしている。綺麗な銀の髪に、深い金の瞳はこの国にはない色だ。
「えー?嫌よ、あんなキラキラした場所。行きたくないわ」
「そんなことを言わずに、いつものような猫かぶりで王族のお役目だと思って参加して下さい。」
「猫かぶりってあなた、明け透けた言い方するのね」
「私を拾った物好きなお方に、そう言って頂けて光栄です」
「………。拾ったって犬猫じゃないのよ?」
「承知しております。本当に物好きなお方です」
ノエルは彼女が10歳の頃お忍びで城下に出かけた際に連れ帰ったスラムの少年だった。
「……もういいわ。ノエルには勝てないものね。行けばいいのでしょう?」
「はい。部屋で着替えのため侍女たちがお待ちしております。」
ご案内致します。と丁寧に頭を下げたノエルは、図書室の扉を開け、先に歩き出す。
部屋で、侍女たちに揉まれて着替えて気力を使い果たしぐったりしているところにノエルが戻ってきて、ノーラを見ていい笑顔を浮かべた彼に連れられ、式典の開かれる大広間へ向かう。
「ノエル、本当にあなた誰に似たのかしら?」
「……。さあ?」
そもそも、主人であるノーラしかまともに見ていない彼は、そうはぐらかすしかない。そのおかげで人を見る目は、凄まじいものがあるし妙な方の知識もついた。これでも彼は彼女に感謝してるし、二足の草鞋を履くほど器用でもない。仕えるべき人は、生涯でただ一人と決めているのだ。
大広間までの廊下でそんなことを考えつつ、辿り着いた大広間の扉の前。
「では、行ってらっしゃいませ」
彼はげんなりした顔をした主人を、笑顔のまま頭をさげ見送った。
「……、あの腹黒紳士め。」
大広間に入ってからボソッと、悪態をついたがノーラはさっと笑顔を貼り付けて猫かぶりを実践する。
国王王妃と紹介が進み、隣国の来賓の方々の挨拶をぼんやりと聞きながら周囲に悟られないよう辺りを見回す。
王族の護衛がちらほらと混じってはいるが、この広間にいるのは総勢200人程度だろう。
位の高い公爵方が前方におり、その後ろに伯爵家と続いている。
前方にいた公爵家のお嬢様達がお兄様や隣国の王太子に見惚れて頬を赤く染めている。
へー、お兄様も綺麗な顔立ちをしているけど、それに負けに劣らず美形ですのねぇ…。
対するノーラの彼に対する初見はこんなものだった。
見事なまでに一切興味なし。
影で王太子をみても見惚れないノーラに兄らと父がホッとしていることも、母が何故か顔を引きつらせたことも知らず、食べ物に興味のうつったノーラは、料理人達の頑張りに頬を緩ませた。
交流が始まるとそそくさと王族の群れから離れ、1人テラスへ出た。
やはり、キラキラした場所は合わない。
はぁ、と息を吐きぐっと伸びをする。
「明日は、お散歩しようかしら…?」
お散歩という名の、お忍びだが。
ノエルが聞いたら、冷たい目で即却下されそうだ。
自身の立場をよく考えてください。と懇々と説教されるに違いない。
「散歩とやらに、私もお付き合いしていいか?」
後ろから聞こえた低い声にびくんっと震えた。
そーと後ろを振り向けば、美形な噂の隣国の王太子様がそこにいた。
内心、げんなりする。一番面倒なひとが来た、と。
乙女であれば、頰を染めてドキドキするところであるが転生前の年齢を合わせればアラフォーとまで呼べる年齢になってしまうノーラには、厄介ごとが降ってきたようにしか見えなかった。
「あら、ノヴァリアス様、御機嫌よう。本日は、遠路はるばるありがとうございます。ですが、私のお散歩は、図書室ですの。それでもよろしくて?」
遠回しに静かに本を読みたいだけだから来るなと、仄めかしてみる。
彼は、深い蒼の瞳と艶やかな黒髪をしており、それに端正な顔立ちが相まって、ミステリアスな紳士といった感じだ。
「あぁ、是非ご一緒願いたい。ノーラ姫。」
姫と笑顔で言われた瞬間ゾワッと鳥肌がたった。
な、なに?
なんか、蛇に睨まれたカエルの気分…。
「…姫は、やめてくださらない?そういうの嫌いなの。呼び捨てで構わないわ。」
「おや、それは失礼した。ノーラ。では私の事も、シーヴィと。」
妖艶な笑みを浮かべた王太子は、面白そうなものを見つけたとでも言いたげな瞳をしている。
それを見て、危機感を覚えたノーラは悟られないよう逃げ道を探す。
「わかりましたわ。それより、今日の主役が居なくては、皆様面白くありませんでしょう?戻りませんこと?」
「えぇ、そうですね。今日のところは戻ります。明日、お迎えに上がっても?」
やーばーいー、ロックオンされてる?
内心冷や汗ダラダラだ。悟られないよう曖昧な笑顔を浮かべる。
「えぇ、お待ちしておりますわ。あぁ、できれば午後にしてくださいませんこと?」
「承知致しました。」
フッと笑った彼は、広間へ戻って行った。
その瞬間座り込みたくなるような疲労に襲われる。
なんなんだ、あの人。
「能ある鷹は爪を隠す…ね」
ノヴェリウス国の次期国王は恐ろしい事になりそうだと思いながら、またため息をついた。
次の日、お昼過ぎに本当にやって来た。
まさか、本当に迎えに来るとは思って無かったノーラはキョトンとしてしまった。
ドナドナされて、図書室で過ごし疲れ果てた所に、シーヴィから爆弾が投下された。
「そうそう、明日のパーティーにお誘いしたいのですがよろしいですか?」
明日のパーティーとは、ソルティア王国主催の歓迎パーティーのようなものである。もちろん、初めだけ国王夫妻も参加するし、お兄様達も参加するが、ノーラはもちろん欠席しようとしていた。
「……えぇと?」
是非ともなんで?と聞きたいが、そんなことを聞かれるとは思ってもいなさそうな彼はにっこり笑う。
「もちろん参加なされるのでしょう?」
いいえ、しません!
そう声を大にして言いたい。
「……」
イエスともノーとも言わず微笑む。
すると、彼の雰囲気がガラリと変わる。
「では、私の為に参加してくださいませんか?」
……は?
そう言って固まってしまったのは仕方ないと思う。
艶やかに微笑む美男子は、謎めいた容貌と相まってか何故か威圧を感じる。
「…ご冗談を。そう言ったことは婚約者になさいませ私に仰っても宣のないことですわ」
「おや、これは失礼を。ですが、私は冗談を言っているつもりはありませんよ? もう一度言いますね、参加してくださいませんか? もちろん国王陛下には昨日すでに許可を取ってあります。」
……早っ。
「……っ…、わかりましたわ。お願いいたします」
瞬間、彼がニタリと笑ったのを見てしまった。
しくじった?
ゾクリと大きな失敗をしてしまったような気になり、やはり…と続けようとすれば、すかさず彼はにこにこ笑ってありがとうございます。とお辞儀した。
そのまままた断ることも出来ずにドナドナされて、部屋に戻った時には、力尽きた。
「……ノエル。その変な顔は何?」
自室のソファーに身を投げ出していれば、側仕えのように後ろで隣国の王太子の資料を眺めていたノエルが可哀想なものでも見るような目で見ていた。
「……多分、明日わかりますよ。私が、どんな心境かはね。しかし、よくこのような王子に好かれましたね?」
「……それは、褒めているのかしら?」
「もちろん。彼は、彼の国でとても有名みたいですよ?賢王になるのでは、と噂されるほど実力も備えているようで…それに魔法に特化している国なのですが彼は先祖返りと呼ばれるほど魔力が高いようですね。」
「先祖返り…?」
「えぇ、彼の国の先祖は、“竜”と交わったと言われているのです。彼らの耳は尖っていたでしょう?」
「……そういえばそうね?」
魔法とは、元もと先人達が人ならざる者、つまり竜人と呼ばれる種族、竜の姿と人の姿両方を併せ持つ種族から教えてもらったものであるのだ。彼は、先祖に竜人がいるのだろう。
「竜人の血は人と交わるに連れて薄くはなっているのですが、時たま先祖のような強い個体が生まれるそうで、それが彼のようですね」
「へぇ…」
ノーラにとって、どうでもいいこもではあるが、竜人というのはとても興味がある。何せこの世界でもドラゴンや竜なんて滅多に会えたものではない。転生者ならば誰でも会いたいに決まっている!
それを敏感に感じ取ったノエルは、内心ため息を連発していた。この人は、また厄介な虫に捕まって…と。
「ノーラ様、彼と対面して何かを感じましたか?」
「……いきなり何?その質問は…」
「お答え下さい」
「…え…?んー、最初はミステリアスな人だなぁってぐらいだけど、あの人絶対腹黒い鬼畜だと思うし、私より猫かぶってると思う。絶対婚約者は御免だわ。」
………隣国の王太子になんとも酷い評価を下すノーラ
「……それは何故?」
「だって、笑顔で嫉妬する令嬢達の盾にしそうなんですもの。それに、面倒ごと全て任されそう…」
もう、評価は最底辺らしい。
ノエルはそれに安堵していいのか、頑張れとエールを送った方がいいのか迷ったが、結局は何も言わずに無難に微笑んだ。
もう外堀が完全に埋められているので、頑張って逃げ回るしかないですよ、ノーラ様。
心の中でそう囁いて。
この時一番シーヴィの腹黒さと狡猾さを知っていたのはノエルだったのかもしれない。
その後、一ヶ月という早さでノーラとシーヴィの結婚式が行われたのは、完璧に外堀りも内堀も埋め切ったシーヴィに父である国王も兄達も手が出せなかったからだろう。
初夜を終えて見事に足腰が立たなくなったノーラを甲斐甲斐しく世話をする旦那と一年後、三人の子宝に恵まれるなんてまだ知らない。
ーーーー
彼女を見たのは、俺が10歳の頃。
ちょうど、父上が隣国を視察するとかでついて行った王城でのことだった気がする。
「魔法が使えない? あり得ないわ! 魔法なんて簡単で誰しもが使えるものよ!」
何を言っているんだ、こいつは。
初見、第一印象は一言で言うならこれに尽きた。
俺の国は、魔法で栄えた国と言っていい。元々の祖先が人でないからか、魔力保持者が多いのもその一因である事は確かだ。だがそれは人一倍経費や時間を費やして努力してこそ魔力で栄えたと声を大にして言えると誇りに思うところでもあるのだ。その中には、保持する魔力が少なくて、影で泣いているものもいるという事実も忘れてはいけない。実際国に居づらくなって出ていくものもいるのだ。俺は、皇子としてその多くを実際に見ている。
それを、『簡単で、誰しもが使えるもの』だと?
馬鹿にしているのか。
齢10歳にして明確な殺意が芽生えた瞬間でもあった。
生まれた時から、人生が国王、皇帝になると定められ教育されてきた俺にとって、民とは掛け替えのない大切なものであり、切り離せない存在。それが仕方ないとはいえ、自国を離れて行くのを見るのがどんなに耐え難いことか。
「いい、ノエル。炎って言うのは、燃えるものがあってこそ火がつくのよ。」
「燃えるもの、ですか。」
美青年と言っていい少年を連れたその彼女は、ポッと手のひらに詠唱も無しに炎を出して見せた。
「ええ。でも私たちが炎を出そうとするときは、身近に燃えてるものがない場合が多いわね。だからこうして魔法を使う。そうよね?」
「……そうですね。」
この世界では魔法あってこそであり、火は魔法無くしては発生させられない。魔力のない者は種火と言うものを一家に何種か持っているのだ。
「でもね、その考え自体がおかしいのよ。魔力がない人間はいないわ。多少はあるのよ。それをどう使うか。問題はそれだけだというのに、量にモノを言わせようとするから、そういう発想になってしまうのね。魔力なんてちょっとでいいの。キッカケにするだけなんだから。魔力を少し外に出した途端燃える。この発想でいいのよ。空気にさえ触れればあとは勝手に燃え広がるわ。魔力は、揮発性が高いの。そんなものが燃えれば広がるに決まっているじゃない。空気が乾燥していればもっと広がるわね」
「………」
「風や水の魔法だって同じよ。
キッカケさえあればいいの。想像次第よ。
少し出した魔力が水になる。大きな風になる、カマイタチになる。本当は原理を知れば分かりやすいのだろうけど、それを説明すると長くなるから、その程度の認識でいいと思うわ」
何を言っているんだ、この女は。
先ほどとは違う意味で衝撃を受ける。
俺の魔法の感覚からしてもその教え方は、的を得ている、気がする。
それに原理?
炎や水ができる原理などが存在するのか?
あるものを、ありのままの姿でしか認識していなかった俺には、衝撃的過ぎる言葉に先程まで馬鹿にしていた自身のことすら忘れて呆然とする。
「……ノーラ様。それらの知識はどこで…」
「ふふふ。さぁ、どこでしょうね?」
見た目まだ俺よりもまだ幼い子供。なのだが、その姿は圧倒的に年上に見える。
ノーラ、ノーラ……
心の中で、何度も繰り返して彼女の姿を目に焼き付ける。
「……陛下に、よい土産ができそうだな。」
数年後運良く、隣国へ行く機会に恵まれた。
いや、詳細に言えば仕組んだのだが。留学という大義名分があるのだから土産に婚約者を見つけてもいいだろう。
獲物にロックオンしている彼女は無意識なのか、国に色々と貢献しているようで、この国の発展が凄まじい。そして、彼女の親族の溺愛具合が半端ない。よくあれで擦らずに育ったものだ。そのおかげで今まで婚約者が浮かばなかったのだから感謝しなくては。
父王には、くれぐれも怖がらせて逃すな、と釘を刺されている事だし多分、この式典が終わる頃を見計らってこの国には父王直々の書状が届く事だろう。これは何としても捕まえよという事だろう。無論俺は逃がすつもりなど毛頭ないが。
式典で、見つけたノーラは俺の隣に立っても劣らない程美しく育っていた。
俺は気づかぬうちに彼女を欲していた。我が国の姫たちよりも賢く美しく、国のためにもなり、何よりその知識は俺を退屈させない。そんな逸材がこの世に二人といてたまるか。
「では、『午後』にうかがいますね」
うまく誘導して、午後に約束を取り付ける。盛大に猫を被ってはいるが、それは警戒している彼女とて同じ。これから終世共に過ごすのだ。そんな警戒に意味はないぞ?
口角が上がるのを自覚しつつも、収まらぬ高揚に足取りも軽くなる。
俺の国では、午後に男女が会うのは恋人か婚約者同士。この国ではどうだか知らんが、俺の中では『午後に会う約束をし、会った』その事実が大事なのだ。
そのあと、ダンスでも共に踊れば外堀は完全に埋まる。もう、この国の王にも婚約の通達が来てるはずだ。
後ろに控えた男の顔が引き攣る。
幼少の頃、ノエルとか呼ばれていた少年は、俺の本性を少なからず認知しているらしい。しかし、気付くのが遅かったな。
妙なところに危機感のないノーラ姫が俺に嫁ぐまであと少し。
俺なりに可愛がって溺愛してやるとしよう。
かわいい可愛い俺の姫は、忠実な騎士と共にその底知れぬ知識で我が国を発展させてくれる事だろう。
拙い文章を最後まで目を通してくださり、ありがとうございます。感想などは、豆腐メンタルなのでお手柔らかにお願いします。