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専属(腹黒)護衛付きました。

「御初にお目にかかります。

この度、姫殿下の専属護衛の任を拝しました。

レオンハルト・アーキスと申します。」



・・・・腹黒護衛来た!?



「初めまして。ローズ・ミリア・リスウェットと申します。

よろしくお願い致しますわ。」


内心の動揺を押し隠し、なんとか挨拶することができた。


とうとうユリウス以外の攻略相手との死亡フラグを回避する時が来た。


決意を新たに私は前世での後輩のセリフを思い出していた。




『先輩!やりましたょ!とうとう腹黒護衛を跪かせてやりましたぁ!!』


『何度彼奴の毒舌に殺られそうになったか!』


『うっかりMの扉を開くところでしたょ!!』




…無理かもしれん。


嫌。折角専属護衛として一緒にいる時間ができたのだ。


なんとかヤツの性格を把握し、死亡フラグだけは回避しなければ!!!





事の発端は数日前。


庭園で襲われ、背中に傷を受けた私は回復魔法で身体は癒えたものの

急に覚醒した魔力のせいでしばらく寝込むことになった。



何故急に魔法が使えたのかは解らない。

何か夢を見ていた気がするけど…ちょっとイラっとしたような…



本来の魔力が覚醒し出すのは6歳前後。


私はまだ4歳の身体で膨大な魔力が一気に覚醒し行使したため、

魔力が幼い身体に馴染むのを待たなければならないらしい。




襲撃を受けたと聞いて、父(国王)は半狂乱になり、

部屋からの外出禁止という軟禁状態に陥っていたが、

丁寧に宥め透かし、すぐさま専属護衛を付けるという事で話は落ち着いた。




そこで話は冒頭に戻る。専属護衛として紹介されたものの、

今はベッドの住人。


特にしてもらうこともなく、

ただ部屋にいてもらうのも気になるし、


しばらくはユリウスの方に付いていてもらうことにした。




因みにユリウスはあの襲撃で怯えてしまったかと思ったが、

相変わらずのシスコンで、襲撃の恐怖よりも私への心配が勝ったらしい。


目を覚まして最初の1日は私の側から一歩も動かなかったが、

それとなく稽古を勧めると、

「姉さまは僕が護りますから!!」

と勢い良く出ていった。


なので、レオンハルトにはユリウスの剣の稽古をお願いした。


最初は渋っていたが、私が動ける様になるまでの条件付きで受け入れてくれた。




 レオンハルトは下級貴族の愛人の子で、本妻に子が出来ないため仕方なく引き取られたらしい。


その為、家で疎まれ、他の貴族からも馬鹿にされ、性格が歪んでしまっていた。


だが心の中で毒を吐きながら、剣の腕を磨き、

今では騎士団の中でも一目置かれる存在になっている。


まだ18歳と若いが、将来は騎士団団長かと噂されているとか。



何故こんなに詳しいかといえば、父情報だ。


騎士に襲撃され、いざというときのために知りたいと言うと、嬉々として教えてくれた。



そんな彼に好かれはせずとも、疎まれない様にするにはどうしたらいいか…





いろいろ対策を考えていたが、転機は突然やってきた。 ただベッドで寝ているのも飽きたので、あの時見た闇の手のことを考えていた。


私の魔力があの時覚醒したのなら、十中八九あの闇の手は私の力だったのだろう。


影から出ていたし、私の属性は闇なのだろうか。



うんうん頭を悩ませていると喉が渇いてきた。


ベッドの横に水差しが置いてあるが、この身体には少し遠い。


変なところで面倒くさがる私は、ベッドから降りるのが面倒で、まぁいいか頭使ったし寝よう、と目をつぶると、



−−−−にゅる。



…ん?

今視界の端で何か動いたような…


部屋は私だけだし、窓も開いてないハズ…



−−−カチャ、カチャ。



何かの物音が聞こえる。


扉の音はしなかったし…



ちょっとドキドキしながら目を開けると、



「えぇっ!?」



目の前に水の入ったグラスがあってびっくりした。



「姫殿下っ?!」


私の声が聞こえたのだろう。

扉の外で見張りをしてくれていたレオンハルトが慌ただしく入ってきた。



「・・・・・」


「・・・・・」


「…殿下…そちらは…?」


「喉が渇いたので、お水が欲しくて」


「そうでしたか。声を掛けて頂ければ致しますものを」


「ありがとう。大丈夫です。」


「そうですか。

時に…私の目には床から黒い手が出て、殿下にグラスを捧げている様に見えるのですが、、、」


「…やっぱり…そう見える?」


「見えております。」



水が飲みたいあまりに幻覚を視たのかと思ったが、

現実らしい。



とりあえず差し出されているグラスを受け取ってみると、

黒い手はしゅるしゅると床に消えていった。

「殿下、今のは?」


「私も詳しくは解らないの。

多分私の力だと思うのだけれど、

時に意識して使ったわけではないし…」


「そうなのですか?

私もいろいろな魔法を見てきましたが、このような使い方は初めて拝見致しました。」


「そうなの?

でも動かなくても物を取ってくれたし、便利な能力ね」


「便利…ですか?

失礼ながらどのような使い方かお聞きしても?」



「そうね。とりあえず梯子を使わなくても高い所の本が取れるかも!」


「は…?本…ですか?」


「そうよ!ドレスだと梯子を登るのに邪魔なのだもの!

本当はズボンを履きたいのだけれど、侍女に泣かれてしまって…

最近読んでいるジャンルは、図書館でも上の方にあって、毎回司書に取ってもらうのも気が引けるし…

でもこれでドレスでも気にせず高い場所にある本を読めるんだわ!」



おっと。うっかり興奮して王女殿下らしからぬセリフが…


なんせ今世の私は知識を得るのが楽しくて仕方ないのだ。


王宮の図書館だけあって、蔵書が半端ない。


あらゆる種類の本が置いてあるし、国外の本もある。


まだ他国の言語は解らないが、まだ4歳。

脳ミソが柔らかく、勉強すればするほど吸収できるのだ!


転生万歳!幼児万歳!


この点だけは転生させてくれた事に感謝している。


前世では勉強なんて適当にやっていればそれなりに出来たし、

足し算かけ算ができればやっていけたし、

実際働き出しても全く困らなかったし。


でもある日、戦国ドラマを見ていて気付いたのだ。

武将の名前はある程度解るが、その部下や年代が解らないこと。

今手元に歴史の教科書があればこのドラマももっと楽しめるのに、と。


でもその時に思っただけで、わざわざ勉強し直そうとまでは思わなかったし、実際しなかった。


転生してみてそれがとても勿体無いことだと思ったのだ。


最初は死亡フラグ回避のためにこの国のことを知りたくて知識を求めたが、今では新しい事を知るのがただ楽しい。 つらつらとそんな事を考えていると、妙に静かなことに気付いた。


そう言えば一人じゃなかったんだ!



恐る恐るレオンハルトの方を見てみると、彼はお腹を抱えて、震えている様に見える。


どうしたのかと様子を伺っていると、彼は片手をお腹に、もう片手は顔を覆って俯いている。



 はっ!


もしや気分が悪いけど、今は見張りの時間だから無理をしているとか?!



「アーキス様…?

ご気分がすぐれないのならば、今日はもう休まれては…?」


「あっ動くのも辛いようなら人を呼びましょうか?!」



反応のないことにオロオロしていると、



「っぷっ……」


「…え?」


「ふっははははははっ」



あら?

何故笑われているのかしら…



「あの…アーキス様?」


「ふふっ…っ失礼致しました。

あまりにも姫殿下が愛らしいので微笑ましくなりました。」


「微笑ましい笑いではなかった様な…」


「微笑ましかったのです。」



ニッコリ。

効果音付きではっきりと言われ、それ以上は追求できなかった。


…これが腹黒たる所以か…。



「そう。でも少し休まれては?」


「それには及びません。

ご心配をお掛けしたようで恐縮でございます。」


「そうですか。アーキス様にはユリウスもお世話になっておりますし、何かありましたら遠慮なくおっしゃって下さいね。」


「では一つ。お願いがございます。」


「お願い?私に出来ることならば」


「もちろんでございます。

私のことは様付けする必要はございません。」


「でも…」


「よろしければレオンとお呼び頂ければ幸いです。」



愛称呼びキタ―――!!



これは少しはフラグ回避出来ているという事かしら!!


内心歓喜しながら、あまりにやけない様に気をつけて了承した。



「わかりました。ではレオン。改めてよろしくお願いしますね。」


「光栄にございます。」



その時のレオンハルトの顔といったら…


神々しくて、うっかり浄化するかと思いました。


腹黒どこいった…?

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