希少価値
ドタドタと騒がしく足音をたてながら、太った男は何者からか逃げていた。
歳は四十手前といった所。頭髪は薄く、身なりを見れば、この男がオシャレに無頓着な事は容易にわかる。お世辞にも格好いいとは言えない男だった。
男が建物の角を曲がるとそこは行き止まりだった。男は何とか逃げ場を探すが見当たらない。
そこへ、男を追ってきた女が追い付く。女は男とは対照的な、この世の美を集約させた様な絶世の美女だった。
女が言った。
「もう逃げられないわよ。いい加減観念しなさい。」
「か、勘弁してくれ!!もうほっといてくれ!!」
「ダメよ。さあ、早く裸になって私とHするのよ。」
「い、嫌だー!!助けてくれぇー!!」
世界の総人口七十億人中、染色体異常で男の数が百人をきった世の中では、男の存在は貴重なのだった。