我が眠りを妨げる者よ、戦うからあと5分…
2,000字程度の短編小説です。
我々はゲームでドラゴンとか倒してますよね。相手からしたら堪ったもんじゃないですよ。
ゴオォォォ
我々が進む洞窟の奥から風が吹き抜ける。
「この先に…我々の倒すべきドラゴンが…」
我々は勇者様御一行、近くの国の王より悪しき龍を倒してくれ、と頼まれ今に至る。
私こと勇者、魔法使い、賢者、武闘家の4人のチームでここまで来た。途中、ドラゴンの手下と思える魔物とも戦ったが…弱すぎる。相手にもならない。
せめてドラゴン様は強いんだろうな?そうでないと我々もやる気が出ないよ。
光が差し込んでくる、我々は大きな空洞に出た。
ここにドラゴンがいるのか、よし、
「おい!王国の敵、姿を現せ!我々は王に依頼されお前を退治しに来た!」
私の声が響く、そしてついにその時は来た。
「誰だぁ…我が眠りを妨げるものは…」
目の前の巨大な山の様な物がゆっくりと動く。こいつがドラゴンだったのか。
気が付かなかった、いや、気が付きたくなかった。こいつ、威圧感をまとっている。
「姿を現したな、悪しき龍よ!貴様は我々が退治してくれる!覚悟しろ!」
ドラゴンは冷たい目でこちらを見る、恐ろしいが我々は怯まない。
「………わかった、わかったからあと5分だけ寝させて…」
は?なんだこのドラゴン、さっきの威圧感はなんだったんだ。
再びドラゴンは山の様に横になる。
「う、うるさい!お前は今!ここで!我々が倒してくれる!」
5分だけだと?ふざけるな!我々を馬鹿にしている!
「くらえ!銀の剣!」
次の瞬間、ドラゴンがすごいスピードで起き上がってきた。
「5分くらい…5分くらい寝かせろー!」
ドラゴンの火炎放射!勇者達は真っ黒に焼ける!
残念!勇者様御一行の戦いは終わってしまった!
「…眠い」
「眠い、眠いぞ…くそぅさっきの人間め、5分くらい寝かせてくれたっていいじゃないか」
我はドラゴン、寝不足だ。いや、我はしっかりと夜9時には寝ている。しかしそれでも眠い。
そういえばあの人間、王国がなんとか言ってたな。よし八つ当たりだ、あの人間に我の討伐を依頼した王国とやらを襲いに行くか。
「その前に5分だけ寝よう…」
「ここがあの勇者の言ってた王国か。よし、手始めに国民を襲うか。そしてゆっくりと、王の城へと進行してやろう」
がおー!ドラゴンだぞー!オビエロー!
「キャー⁉︎な、なんでこんなところにドラゴンが…」
おお、怯えてる怯えてる、さすが我だ。
「みんな逃げろー!ドラゴンが来たぞー!」
ハハハ、どれどれ炎でも吐いてやろう。
ドラゴンの火炎放射!町は火の海!国民は大混乱!
よし、もうそろそろいいだろう。では城を襲いに行こう。
それではお約束
「ドラゴンだぞー!オビエロー!」
「悪しき龍よ!よくも町を滅茶苦茶にしてくれたな!ここで倒してくれる!」
傭兵達が我に襲いかかってくる。しかし、我の前には塵に等しいのだ。
「くらえ!尻尾なぎはらい!」
傭兵達は吹っ飛ばされた!
「フフフ、さて王はどこだ?さっさと倒してくれる」
と、我は城の屋根を持ち上げる。そこには、王らしき服を着た者がいた。
「お前が勇者に我の討伐を依頼した者か?」
我は王のような者に尋ねる。
「そうだ、わしがお前の討伐を依頼したこの国の王、エラ・イヒトだ」
そうか…こいつが、こいつが我の眠りを邪魔した勇者を送った者か。
「よしわかった、ではお前の命をいただこう」
我は自慢の爪を振り上げる、これで終わりだ。
「ま、待て!わしが悪かった。もうお前を襲わない!だから許してくれ!」
ふん、だらしのない王だ。これだから人間は…構うことはない、このまま我の爪でやつを引き裂いてやろ…待てよ?
「その言葉、本当だな?」
王は呆気に取られている。なんだ?そっちから申し出てきたのに。
王は少しの間をおき、「ああ、本当だ。だから頼む、これ以上この国を破壊しないでくれ」
「わかった、頼まれればやめる。そうでないと我を討伐しに来た勇者と同類になってしまうからな。じゃあな、荒らしてすまなかった」
我は王国を後にする。
「くそう、あのドラゴンめ…」
「ふう、今日は疲れたな。もう寝よう」
我は洞窟に戻り、眠りにつく。明日は1日中寝よう…
「おい、ドラゴン!起きろ!」
なんだ?また人間か?
「誰だ…我が眠りを妨げるものは…」
「俺はこの近くの王に頼まれ、お前を討伐に来た勇者だ!」
なんだと、あの王め嘘をついたな。こいつを殺してから今度こそ王国を壊滅に陥らせてくれる。
その前に…
「わかった…わかったから後5分だけ寝させてくれ」
「…わかった。じゃあ待ってやるよ」
お、今回の勇者はいいやつだな。じゃあ遠慮なく眠らせてもらおう。
ふう、昨日も9時に寝たのに、なんでこんなに眠いんだろう。ドラゴンだから病院で検査もしてもらえない。まあいい、我はドラゴンとしての人生を楽…し…む…
「グハァッ!」
くっ…な…なんだ⁉︎勇者が我に剣を我に突き刺している⁉︎まだ1分も経ってはいない。
「お…おのれ貴様!嘘を…嘘をついたな!」
この似非勇者め…今すぐに殺してくれる!
「おいみんな!でてこい、一斉攻撃だ!」
勇者がそう言うと、岩場の陰から魔法使いやら剣士やらがたくさん出てきた。
そして出てくると同時に我に向かい剣で斬りつけ、魔法を撃ち込んでくる。
「おのれ貴様ら…なんと卑怯な…」
バタンッ!
我は力が入らず倒れてしまった。
「くそう…こんな…こと…が…」
勇者が力尽きそうな我に向かいこう言う。
「ふん、ざまぁないな!5分だけ眠らせてくれ?5分と言わず永遠に眠らせてやるよ!」
こ…このクズめ…
「クズが…お前のような勇者はいつもそうだ!暴力で物事を解決し、他人の家のタンスを開け、ツボを壊し物を漁り、小銭をくすねる…それで一般人に感謝されて…お前のようなクズがいるからこの世界は!」
「なんとでも言え…どんな事を言われようが最終的に俺ら勇者が正義でお前ら魔物は悪なんだよ!」
何故…何故こんな…正義とは…なんだ…
くっ…無念…
勇者ってなんだ、正義ってなんだ。
それでも私はRPGを止めない。