正体
「で、あなた達本当に何者なの?」
ぐずり疲れて眠ってしまったフィオをベッドに寝かせてから二匹に尋ねる。二匹ともさっきのフィオの攻撃のせいでフラフラになっている。どうも娘がすみません。
「俺たちは精霊族だ」
「え?精霊族ってあの精霊族?何でそんな凄いのがあの程度の山賊集団なんかに捕まってたの?」
その言葉に二匹がズドーンと暗い影を落とした。やめてよね、私の可愛いフィオが湿気ちゃうじゃない。
「俺たち精霊族は、百歳になったら契約者を探す旅に出るんだ。それで里を出た所を狙われて…」
「浮かれてたから警戒が疎かになっていて、大分抵抗したけど結局捕まっちゃったのよ…」
「あらら、あなた達そんなに弱いの?一体何の属性の精霊なの?」
「俺は空気」
「私は木」
「は?」
なんと、残念すぎるひよっこ精霊族の二匹は、風と土の特殊魔法属性の精霊でした。
なんとまぁ…
「それなのに山賊程度に負けたのね」
更に二匹の影が濃く深くなった。
「まぁ、本当に油断していただけなんだろうし、これからは気をつけることね」
「あぁ、もう二度と捕まったりなんかするもんか」
「そうね、気をつけるわ。でね、物は相談なんだけど、あなた私達と契約しない?精霊族は受けた恩を忘れないの。でも今の私達は里を出たばかりでお金なんて持ってないし、まだまだ子供だから加護を与えることもできない。だからあなたと契約して、あなたの力になりたいの‼︎」
「俺たちと契約すれば、風と土の魔法を魔楽器なしで第一位まで使えるようになるし、魔楽器を使えば木と空気の魔法も使えるようになるぞ!だから頼む‼︎」
子黒豹と子白猫が目をめっちゃキラキラうるうるさせて上目遣いで私を目上げる。
か、可愛い…!
「わ、分かったわ。というか、こちらこそよろしくお願いします。精霊族って人型にもなれるんでしょう?私最近忙しいから、フィオの子守をしてくれる人を探してたのよね〜。あなた達ならフィオにも好かれてるしぴったりだわ!」
私がそう言った瞬間、二匹の目の輝きが更に増した。ま、眩しい‼︎。
「本当か⁉︎嘘じゃないよな!なら俺たちに名前をつけてくれ。それで契約が成立する」
「精霊契約は、精霊本人の意思と契約者に名前をいただくことで成立するのよ。さあ、私達に名前を頂戴!」
名前ねぇ…う〜ん……
「よし、なら子黒豹、あなたはオルソル。普段はソルって呼ぶわね」
「オルソル、ソルだな!かっこいい名前をありがとう‼︎」
「で、子白猫あなたはフェリシア。普段はシアって呼ぶわ」
「フェリシア…シア…。うん、可愛い!気に入ったわありがとう‼︎」
こうして私は二匹の精霊族と契約した。
〜後日談〜
ソ「なぁリュシー、なんで山賊の財宝全部持って帰ってこなかったんだ?」
リ「ん?あぁそれね。そりゃ、あんなに沢山の金銀財宝全部持って帰ってきたって使いきれないし、あの程度の迷惑料なんて、両手に抱えるくらいの量でちょうど良かったのよ」
シ「ふ〜んなるほどね。あ、そう言えば、何か大きいのがあったけど、何を持って帰ってきてたの?」
リ「杖と刀よ」
ソ「杖は分かるけど、カタナ?何だそれ?」
リ「刀っていうのはね、物凄くよく切れる剣の一種よ。ちょうど良い長さのものがあったから持って帰ってきたの」
シ「杖はどうするつもりなの?」
リ「杖術っていう武術があってね、私それが出来るから使おうと思って」
ソ「リュシーは武術も出来るのか‼︎」
リ「えぇ、剣術と護身術が出来るわ」
ソ&シ「流石リュシー‼︎」」