出逢い
白宮は王族の私室がある王宮の最奥地。で常に厳重な警備体制が敷かれている。つまりその賊とやらはそんな場所に入り込み、殿下を連れ去る事が出来る実力を持つ手練れ、もしくは随分前から計画を練っていた用意周到な人物という事になる。時は一刻を争う。急ぎ清流の間に向かわないと‼︎
清流の間に続く廊下を走りながら、主従スキル【以心伝心】でソルとシアにフィオことを頼んでおく。今夜は帰れないかもしれないから。
清流の間に入ると、中心に黒ずくめの男が拘束されて転がされていた。
「只今参りました。その者は一体?」
「この者が息子を城外に転移させたのだ」
「城外に転移、ですか?」
「あぁ、今この城の中で息子の魔力を追う事ができるのは、汝だけであろう。どうか余の息子を探してくれ」
「お願いリュシー!」
陛下と正妃様が揃って頭を下げられた。確かに転移で何処かに飛ばされた人を探して迎えに行くには、とんでもない魔力と技術を消費する。これは私以外の誰かには無理なことだろう。
「了解いたしました。すぐに殿下を見つけ出し迎えに行って参ります」
「あぁ、ありがとう!」
私は直ぐにその場を離れ城の中庭に出ると、地面に魔法陣を書き始めた。この世界には魔工学というものがあり、それを使う時にこの魔法陣を書いて効率を良くしたりする。今回はそれを応用して私の魔力を国中に送りセンサーのようにして殿下を探そうと思っている。
書き終わった陣の中央に立ちフルートを吹く。そして数十分後、ついに国の外れにある『魔の森ルクストロワーツ』の直ぐそばで殿下の魔力を感知した。
(ここだ‼︎)
そのまま殿下の魔力を追って転移すると、殿下の前に全身をローブで覆った怪しさ満点の大男がしゃがみ込んでいた。