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平和の終わりの始まり

「殿下、お食事のご用意が整いました。お部屋へご案内致します」


現在午後七時頃。いつもこの時間になると、同じ侍従の方が殿下を迎えに来て、私の仕事はここまで。後は他の優秀な侍女の皆さんがやってくれるから、特にすべき事もない上に、年端もいかない子供を持つわたしは、両陛下のご好意により、仕事を上がることを許されている。


「それでは殿下、私はこれで」

「リュシーきょうもいちにちありがとう、またあした。フィオによろしくね」

「はい。貴方様が過ごされる夜がどうか、静かで暖かいものでありますように。貴方様の見られる夢が、幸せなものでありますように」

「きみたちおやこもね」


この長い言葉は、こっちの世界で言うところの『おやすみなさい』を意味するもので、ちょっと面倒くさいけど、素敵だなぁといつも思ってる。


(さぁて、私も帰ろっと)


殿下と分かれ、使用人用の廊下や階段ですれ違う同僚たちに会釈をしながら、早足で部屋へと向かう。


「フィオ、ソル、シアただいま〜」

「ま〜、きゃえり〜!」

「リュシー、おかえりなさい」

「おっかえり〜」

「ソル、シア、フィオの面倒見てくれてありがとう。助かったわ〜」

「「どういたしまして」」


高速ハイハイで近づいてきたフィオを抱き上げ、頬ずりしながら二人に話しかける。


「さて、ご飯食べにいきますか」

「じゃあ俺たちは帰るな」

「ばいば〜い」


そう言って二人は某ぽんぽこ映画に出てくるタヌキたちのようにボンッという効果音付きの煙に巻かれて消えた。

いつもこんな消え方や現れ方だから特に驚くことは無い。


私の部屋にキッチンはあるけれど、あいにく食材が無いから、最近は殆ど毎日お城の使用人プラス騎士用の食堂でご飯を食べてる。手料理を作ろうと思ったら、城下町まで買い物に行かなければいけないから、なかなか出来ない。

私の数少ない趣味なのに…。

そんなことを考えながらフィオにミルクを飲ませてげっぷをさせてから抱っこし、自分の身だしなみも少し整えて部屋を出ると食堂へ向かう。


「お、リュシーさんとフィオちゃん!今日は少しいつもより遅かったね」

「はい、そうなんです。もうお腹ぺこぺこ‼︎」

「ははは!そうかいそうかい、じゃあいつもより少し多めにしてあげるよ」

「ありがとうございます!」


すっかり馴染んだ給仕のおじさんは、いつも気を使ってくれる。

なんだかんだ言って実家は公爵家だったし、前世は食にうるさい日本人だったから、私はとても舌が肥えてる。

この食堂のご飯は、そんな私が思わず唸ってしまうほどに美味しい。だから、多めにして貰えるのは実に嬉しい。


「ごちそうさまでした。今日もとっても美味しかったです!」

「いや〜そう言ってもらえると作った甲斐があるってもんよ」


使い終わった食器を返却口に返しておじさんに感想を言い、踵を返そうとしたその時。


ジリジリジリジリッ‼︎

『全騎士及び戦闘員の奏者に告ぐ!白宮に賊が侵入し、王太子殿下が攫われた模様。直ちに準備をして上官の指示を仰げ!いいか、何があっても殿下をを取り戻せ‼︎』

「「「「「「「「は‼︎(はい‼︎)」」」」」」」」」」

『王太子殿下付きの乳母殿。至急白宮清流の間に来てくれ。以上‼︎』


こうして、突如食堂は混乱の渦に叩き込まれた。

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