師匠
外に出ると3人の男性が田坂さんの側に立っているのが見えた。3人共一度はTVや雑誌で見た顔である。
刑事依頼を受けるハンターは結構有名人が多い、刑事事件にかかわるとメディアの露出も増えるしイメージアップにもつながる。
彼ら元へ行こうと歩き出した瞬間、後ろから胸を鷲掴みにされた。
「秋ちゃん、少しは大きくなったかな?」
「きゃっ」
一瞬、パニックに陥りかけた私…… ん? この声と香水の香りには覚えがある。
「舞奈さん?」
首だけ振り返ると、イタズラっぽい笑顔を浮かべた背の高い美人が立っている。
「あはは、秋ちゃん聞いたわよ、大活躍ね。私も鼻が高いわ」
月島舞奈さん。私の師匠とも言うべき人で、ヴァンパイアハンターだった両親を失った私の後継人でもある。ちなみに私の両親は舞奈さんにとって師匠ということになる。
女性ハンターのトップ3に数えられ、美人で気取らない性格のためか一般の人気も高く、ファンクラブまである。
高校在学の3年間、この人の下でハンターとしてのいろはを叩き込まれた。この人がいなければ私はハンターとしてここに居なかったかもしれない。
「あの…… 舞奈さん、胸を離して下さい」
私は赤面しながら言った。男性陣の視線が痛い。
「あまり変わらないわね。もっと私の事務所に顔を出しなさい」
と、言いつつ手を離さない。
「2週間前に『リーフ』のチーズケーキを持って遊びに行った時にも、同じ事をされましたけど……」
「まあ、いいじゃない」
舞奈さんがやっと胸から手を離してくれた。
「おい月島。弟子とじゃれてないで急いでくれ」
田坂さんが見かねたのか、大声で言った。
「はい、はい。では待ちくたびれている野郎共に、秋ちゃんを紹介しますか。さぁ、行くよ」
歩き出した舞奈さんの後に、私は慌てて付いていった。
「容疑者らしい女が監視カメラに写っていました。ホテルを出たのは午前10時ですね」
自己紹介のあと、佐藤さんが写真を持ってきた。写真の中には金髪の美しい女性。
先ほど見た写真と違い、女性の顔が正面から映っている。
「午前10時だって…… ということは、星はヴァンパイアじゃないのか? だが、昼間行動できるヴァンパイアもいるという説もあるな」
「ヴァンパイアの可能性を捨てるのは危険だと思う。秋ちゃんが先月、協会に提出した論文にもそういう事が書いてあったわね。どこからの情報なの?」
そう言って舞奈さんが私のほうを見た。
「前回倒したヴァンパイアからです」
心苦しくは思ったが、私は舞奈さんにウソを付いた。まさかレイがヴァンパイアで彼から情報を得たとは言えない。
「別に新しい考えではないよ。昔から言われていることだ。まあ今回の事件がそうだとしたら、その仮説が証明されることになるって話だ」
男性ハンターがそう言って、方針してヴァンパイアの可能性を捨てないで捜査するということになった。担当刑事達は意外な方針に騒然となる。
彼らの常識からすると昼間のヴァンパイア事件は無いというのが常識だからだ。まあ、私以外のハンター達も正直なところ半信半疑といったところだろう。
「秋穂、秋穂」
食い入るように写真を見ていたレイが、小声で私を呼ぶ。
「どうしたの? 顔色悪いけど大丈夫?」
「大丈夫だ。独自で動きたいのだがいいか?」
「いいけど。どうしたの? 本当に」
「少し気になることがあるだけだ。今日は、戻らないかもしれない」
どうも言いたくないらしい。無理に聞くわけにもいかず、私はため息を吐いた。
「いいわ、何も聞かないであげる。でも携帯はちゃんと繋がるようにしておいてよ」
そう言って現場から離れるレイを見送る。その時はまだ、写真の女性がレイの過去に深く関係するとは思いもしなかった。
きれいなお姉さん好きですか?
私は好きです(笑
元々師匠は出演予定は無かったのですが、複数のハンターを出すということでその中の1人に設定してしまいました。(出演させるとしたら、外伝でと思っていました)
やたら明るいお姉さんです。活躍できるかどうかは神のみぞ知るといったところですか。
たぶん次の次からあたりから話が動き出す予定です。(退屈でごめんなさい)