表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

銀髪金眼の少女

「くそったれ」

 アルセクトは悪態をつく。いつもより傷の再生が遅く感じる。主人クラスのヴァンパイアでは、レイやカミラのように失った四肢を、瞬時に再生するという芸当は出来ない。

「……」

 月明かりをさえぎり、少女が金色の瞳で、アルセクトを覗き込んでいた。アルセクトの瞳が驚愕に開かれる。

 バカな。気配どころか、足音一つしなかった。ヴァンパイアの感覚をもってしても感知できなかったというのか。

「ハンターの葉月秋穂か?」

 金色の瞳に腰まで届く銀髪、外見はだいぶ変わったが面影は残っている。輪廻転生を信じたくなるほど、自分の娘と瓜二つの少女。

 少女はコクンと頷いたが、その瞳に感情の波は反映されていない。何も考えていないかのように無表情のまま、アルセクトを見つめている。

「ヴァンパイア化したのか?」

 主人クラスのヴァンパイアではない。レイやカミラと同じだとすると、自然発生したヴァンパイア。

 ピクン。少女の身体が振るえ。手にした刀をギュッと握り締める。そして、アルセクトの背筋を凍らすほどの邪悪な笑みを浮かべた。

「血の臭い。でも貴方じゃない…… あっちね。見つけた」

 少女はアルセクトに背を向け歩き出した。



「ぐはっ」

 強烈な蹴りを受けて、俺は瓦礫の中に倒れる。

 両腕をもがれ、再生にすべてのエネルギーをまわすが、なかなか再生しない。

 血を流しすぎた。再生にエネルギーをまわそうにも、エネルギー自体が尽きかけている。だが、カミラもそれは同じだ、右肩から引きちぎられた腕は、まだ再生していない。

「ふん、ここまで苦戦するとはね。そろそろ貴方を倒して、エネルギー補給しないとね」

 ゆっくりと近づいてくるカミラ。

 秋穂、ごめんな。俺もここまでらしい…… 約束…… 守れなかったな。

 もう一人、弓道着を着た少女の姿が脳裏に浮ぶ。

 美月…… 君が救ってくれた命だが、もういいよな? 何の当てもなく、復讐だけを目的に生き続けるのも疲れた……

 目も前までカミラが来て、歩みを止めた。

「何か、言い残す事はあるかしら?」

「やれよ。偽善者ぶるのは似合わないぜ。お・ば・さ・ん!」

 カミラが憤慨ふんがいしてなにか喚くが、俺は聞いていなかった。静かに目を閉じる。

 死ぬのは、いや、元々滅びるべきなのは、俺だったのだろう。秋穂や美月を巻き込んでしまったのが悔いといえる。

「この、覚悟なさいよ」

 カミラの声。俺は、死神の鎌が振り下ろされるのを待つ。

 だが、いつまでたっても、死神の鎌は振り下ろされない。代わりに暖かい液体が顔にかかる。そして、生臭い鉄の臭い。

 目を開いた俺に飛び込んできたのは、上半身と下半身に両断されたカミラの姿と、返り血を頭から被り壮絶な笑みを浮かべた。金眼、銀髪の少女の姿だった。

「あはっ、あははははは、そうよ、この臭い。この血の臭い」

 カミラの下半身が、灰となり崩れ落ちる。

「あ、秋穂なのか…」

 俺の呟きは少女に無視される。少女は、上半身だけになったカミラの上に乗ると、笑みを浮かべたまま言った。

「私、喉が渇いているの。もう我慢できない。貴女の血、いいえ、命をもらうわよ」

 その声は、喜びに満ち溢れていた。


秋穂の乱入であのカミラが、ずんばらりんと真っ二つ(笑

いや笑い事でないし、最後にとんでもないこと口走ってるし。

というわけで、今夜にでも続きを更新します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ