求めるもの
とくん…… とくん…… とくん、とくん。
うるさいなぁ。
もう少し、寝かせてよ。
とくん、とくん。
何の音だろう?
途切れ途切れだったと音が、だんだんと一定のリズムを刻みだす
う〜ん。喉が渇いたなぁ。
水? 濃い目のブックコーヒー? 気分的にはアイスティーが欲しいかな?
……血…… そうね、紅い、紅い血液…… 血、血、血、血、血、血、血、血、紅い血が、ほ・し・い。
飛び起きて、喉を抑える。
「血、血、血、血…… ち、ちがう、ちがう」
額を地面に何度も叩きつける。
痛みで、思考力が少しだけ戻ってきた。
「行かないと……」
私はまだ力の入らない身体に鞭を入れて、よろよろと、立ち上がる。足元がふらつく。
「早く、行かないと」
でも、どこに?
私の中の何かが訴えるが、具体的に何をやればいいのか判らない。
どこに行くの?
「あなたは、自分の能力に振り回されているのよ」
「なんだと?」
会話の間にも俺は破壊された右手の再構築に全ての力をかたむける。
「あなたの身体の動きは、あなたが思っている以上に早い。その意識との差が隙を生む。さあ、いいかしら? 右手も再生したようだしね」
俺は再生したばかりの右手を握ったり開いたりする。
「いいのか? そんなことを教えて」
「頭でわかっても、修正がきくものじゃないからね。さあ、第2ラウンド開始」
カミラの右手の爪が、20センチ程伸びた。
「そんなこともできるのか?」
俺は変身と同じように、自分の爪が伸びるのをイメージした。確信してやったわけではなくなんとなくでやってみたが、成功したようだ。
ちゃんと右手の爪が伸びた。その爪をコンクリートの壁に向かい一振りすると、コンクリートの壁がスパッと切断される。
「では、始めようか。カミラ」
どこに行ったの?
私の意識が何かを探す。でも何を探しているのか私自身わからない。
こつんと、足元にあった何かを蹴っ飛ばした。
棒状の細長い物。端のほうを持って拾い上げる。黒塗りの鞘が地面に転がり、銀色の刃が現われた。
日本刀…… 私の? 見覚えがある気がする。
わからない……
上手く考えがまとまらない。でも、行かないといけないと、私の意志が命令する。
行く? 行ってどうするの? 止める?
どこに? だれを? 何を止めるの?
鞘を拾い、刀を納めると、抱きしめるようにして持つ。なんだか安心する。
それでも、私の心の声は治まらない。
でも、どこに行けばいいの?
思考がまとまらない私を、微かな血臭が混じった夜風が包み込んだ。
「あはは、血の臭い」
何故か、その鉄臭い生臭さに笑みが漏れる。
私は血臭に誘われるようにしてフラフラと歩きだす。
「血よ。血の臭い。美味しそうな血の臭い」
歩きながら、ぶつぶつとつぶやく。
『紅い血』。私の思考はそのキーワードに塗りつぶされた。
なにやら、怖いことになっている(笑
どうも、この間からイメージカラーが『紅』になってしまっています。
そこで問題です。今回『血』という文字をいくつ使ったでしょう?
答えは22回です。意外と少ない(笑
前回の更新のように何話もというわけには行きませんが、今日中に1話、できたら2話更新したいですね。