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カミラ VS レイ

バトルシーンがありますので、一部残酷というか、えげつないというか、そんなシーンがあります。

 見つけた!

 血臭をたどって追いかけてくると、カミラが四肢ししをもがれたアルセクトの側に立っているのを見つけた。

「クックク」

 笑いが込み上げてくる。俺はアルセクトを挟んでカミラとは反対側に立った。身体をむしばむ熱が俺を笑顔にさせる。

「レ、レイ、お前」

 アルセクトが無様ぶざまに転がっている。まあ、アルセクトも吸血鬼だ、1時間もすれば再生するだろう。

「そう、あの娘の血を飲んだのね。でも、私を追うのは少し早かったのでないかしら?」

 まだ余裕を見せるカミラに、腹の底からの笑いがれる。ここに来るまでの間に身体能力が格段かくだんに上がっているのは、確認済みだ。負ける気はしない。

「クックックッ、くはッははは。カミラ、闇に帰れ!」

 明るい満月の月明かり。だが今宵の月はあかかった、血に染まったような紅。これから始まる死闘を暗示しているかのように。




 先に動いたのはレイだった。カミラの懐に飛び込んで、足を払うように下段への回し蹴り、カミラはひょいと飛んで避けるが、レイは回し蹴りの勢いを利用してそのまま一回転、中段へ 回し蹴りを叩き込む。

 避けられないと判断したカミラが、右腕でガードするが骨を粉々に砕かれる。が、折れた腕が、みるみるうちに再生する。

「ふん、満月の晩でなければ厄介だったわね」

 カミラが右腕を振りながら、余裕の笑みを浮かべる。

 レイもカミラも武器は持っていない。いや、必要ないのだ。その怪力自体が武器になる。不死性ふしせい、変身能力、身体能力、反射神経、etcetc。しかし、最も恐るべき能力は純然じゅんぜんたる暴力、『力』だ。何しろ人間の手足を人形のように引きちぎることもできるのだ。

 今度は、同時に地を蹴った。互いのこぶしが、ぶつかり合い骨が砕ける。全くの互角に見えた。だが、カミラは余裕のある顔を崩さない。

 カミラは再生したばかりの右手の平を上に向けて、おいでと手招きする。

 レイはカミラに向かって突進する。捕まえてしまえばいいのだ。先に捕まえさえすれば勝負はつく。

 接触の直前、カミラはゆらりと後ろに飛びながらレイの右手首を左手で掴み、くるりとコマのように回った。目の前に無防備になったレイの首筋が見えた。

 頚動脈けいどうみゃく。カミラは下品なほど大きく口を開けレイの首筋に噛み付いた。鋭い牙に皮膚が簡単に破れ、血液が噴き出す。その血液をカミラは貪欲どんよくに飲み込む。だが、それがすきを生んだ。

 レイはカミラの両目に指を突っ込む。柔らかいモノがつぶれる感触がつたわる。たまらず、悲鳴を上げて牙を離し、のけぞるカミラ。

 そのカミラの顔に、レイは横殴りに拳をぶち込んだ。

 頬の辺りの柔らかい肉のつぶれる感触。カミラの身体が4、5mほど飛ばされ地面に叩きつけられ地面に転がる。

 その姿、手に残る感触に、レイの顔がうれしそうにゆがむ。

「立てよ。まだ終わりな訳が無いだろう? まさか、不死の一族の力とはそんなものなのか?」

「がっ、あっ、ああっ」

 カミラは立ち上がり、人間ではありえない角度に曲がった首を己の手で無理やりに元に戻す。カミラの口からは苦痛のうめきが漏れ、痛みの為か、味わった屈辱の為か、身体が小刻みに震えている。

 レイは、口元を押さえ、くっくっと笑った。

「殺す。今度こそ、徹底的に完膚なきまで殺す」

 カミラが再生した目でレイをにらみながら宣誓する。それに対し余裕の笑みで返すレイ。

「やってみろ」

 レイの言葉が終わらないうちに、カミラの身体がすべるように動いた。

 レイは目を見張った。先ほどとは打って変わった無駄の無い動きで、レイに近づき攻撃を加える。反撃しようにも、絶妙なタイミングで牽制けんせいの蹴りや拳が飛んでくる。

 なぜだ? 絶え間なく動き回り、身をひねり、攻撃を避けながら、疑問が頭を駆け巡るが、カミラの鋭い一撃に思考しこうを中断させられる。自ら身体を後ろに倒し避けるが、避けきれず右手の肘から先を持っていかれる。

 右肘を抑えて立ち上がるレイに、カミラがうれしそうに笑う。

「形勢逆転かしら? なぜだか教えてあげてもいいわよ」

 カミラは、右手についたレイの血液をおいしそうに舐めとった。


今回の更新これで終了。

続きはまた来週の水曜日です。


カミラもレイも絶好調ですねぇ。レイなんか秋穂のこと忘れているみたいなはしゃぎっぷりですよ。


秋穂どうしよう。

えーと、来週からタイトルが『吸血鬼狩り』になります(ウソです)

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