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カミラ VS アルセクト


 紅い液体のどろりとした感触が、舌に、喉に、そして食道を通り、胃袋に落ちていく。腹のそこから激しい熱が湧き上がる。

 その身を焦がす熱に触れたのかのように、両頬を伝う透明な液体が枯れる。

 その代りに沸き起こるのは、血への渇望…… 吸血、どこまでも卑しい、浅ましく、忌まわしい行為。

 身体を焦がすような熱に、うなされるように血を啜る。

 どれくらいそうしていただろうか、レイは秋穂から牙を外した。

 そこに残るのは、すでに命の鼓動を止めた青白い顔の女性。

「秋穂……」

 レイは呟く、だがその感傷もあっという間に消え失せ、胸が高鳴った。顔が自然に緩むのがわかる。身体の中で何かがはじけた。レイは屋上から身をひるがえした。




「しつこいわね」

 カミラは、いまいましげに吐き捨てる。腹の痛みさえ引けば逃げることもないのだが、銀でつけられた傷は自然回復しない。

 カミラは足を止めると、追跡者に向き直る。

「しつこい男は、もてないわよ。ミスターアルセクト」

「こんなチャンスは、なかなかないのでな。美月の仇を討たせてもらう」

 アルセクトは、両手に数本のメスをかまえる。

「あら、このぐらいの傷で、あなたとの能力差が埋まったとでも?」

「さあな、だが無傷のお前とやりあうほどバカじゃない」

「そうお考えなら試してみたら?」

 カミラはアルセクトに向かい歩き出す。間合いも何もあったものじゃない、そのへんのコンビニにでも行くような足取りで近寄っていく。アルセクトが構えたメスの先が動揺に揺れた。

 アルセクトは、地を蹴って距離をとりながら左手に構えた3本のメスを投擲とうてきする。

「甘い!」

 カミラは、いとも簡単にメスを払い落とす。

「あなたと同じ主人クラスや下僕クラスなら遠距離戦でもかまわないけど、私達クラス相手なら近距離戦の方が可能性はあるわよ。物理的な強度は、下僕も私も変わらないのだから」

 カミラが一気に距離をつめ、アルセクトの右手首を捕まえると、握りつぶした。アルセクトの右手がメスを握ったまま地面に転がり、灰になる。

「がっ」

 苦痛に顔を歪めなら、アルセクトが蹴りを放つが、カミラが左手で止め掴んだ足首を握りつぶす。

「あははは。わかった? このくらいの傷、レイ君くらいだとハンデになっても、主人クラス相手ならハンデにもならないのよ」

 カミラは、圧倒的な力でアルセクトの両手両足を引きちぎる。周囲に紅い血液が撒き散らされるが、引きちぎられた四肢は灰となり崩れ去る。

「簡単には殺さない。吸血鬼といえ、四肢の再生には時間がかかる。あなたにはレイ君の最後を見てもらおうかしら」

 カミラは、アルセクトを一瞥して言い放つと、自分の手で腹部の傷を抉り取る。

「ぐっ! がはぁ!」

 傷口が大きく広がったが、遅々として再生しなかった傷が、みるみる塞がっていく。

「ふふふ、いいわね。痛みがないというのは…… 久し振りよ、こんなに痛い目にあったのは。しかも、人間ごときに…… 来たわね」

 アルセクトの側に、レイが姿を現す。その顔には笑みが張り付いている。

「レ、レイ、お前」

「そう、あの娘の血を飲んだのね。でも、私を追うのは少し早かったのでないかしら?」

 カミラの問いに、レイは歓喜の笑いで答えた。

「クックックッ、くはッははは。カミラ、闇に帰れ!」


ヴァンパイア同士のバトルに突入。

でもアルセクトさんはあっという間に敗北。

真祖と主人じゃレベル差ありすぎですね。

本文中であった物理的強度というは、肉体の頑丈さですね。これはどのクラスのヴァンパイアでも人間とあまり変わりません。


そして、レイ君が怪しげなクスリをきめたみたいになっています…… 正気に戻るだろうか?


多分日付は変わるでしょうが、もう一本更新して、また来週ということになりそうです。

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