重荷
レイ…… ごめん……
背中をポンと押された。それに逆らえずに、私は倒れていく。
ガキンと音が鳴って、右腕のギミックが勝手に作動する。右手の中には鋼の感触。
その存在に気が付き、私は身体をひねった。
「がは…… あふ……」
肺に残った空気が押し出され、口から血が溢れた。けれど、そんな事気にしてはいられない。
カミラの顔が見えた。
渾身の力で、右手をカミラに向ける。そして指先に力を込めた。
『人間をなめるな!』声は出なかったが、私の唇ははっきりと血を溢れさせながら動いた。
落下が止まった。したたか地面に打ち付けたはずだが、もう痛みすら感じない。
視界がぼやける。端の方から暗く、白く、世界が色を少しずつ失っていく……
レイの金色の瞳が見えた。私は、冷たい地面に横たわっているわけではなく、レイに抱きとめられたらしい。
駄目だよ…… 服が汚れちゃうよ。
レイが、何か言っているが、はるか遠くに聞こえはっきりと聞き取れない。
ごめんね……
とぎれかける意識を集中して唇を動かす。
最悪だ。美月さんのことを、いいえ、レイと出会ったときから、私はこんな死に方をしてはいけなかったのだと思う。
レイは、自分を責めてしまうから。
レイの責任じゃないと言っても、重荷を背負ってしまうから。
だからこんな死に方をしてはいけなかった。これ以上の重荷を背負わせてはいけなかった。
ごめん…… レイ……
でも、私はレイに重荷を背負わせなければいけなかった。更なる重荷を……
ごめんね。残酷だよね…… でも、あなたにしかできないことなんだ。
もう目が見えなくなっていた。レイの顔を見なくて済むのは救いかもしれないが、少し寂しかった。
……吸って。
もう一度、ゆっくりと唇を動かす。
私の、血を…… 吸って。
レイの姿を見ることはできないのに、なぜか、レイが首を振っているような気がした。
だ・め。
だめなの。レイが止めてくれないと誰が止めるの?
私の…血を…吸い…なさい…レイ……ブラッド……あなたが…止め…る…の…もう…こんな事…二度と……お…お願い……レイ……
残った力で想いを伝えるために唇を動かす。
ごめんね、レイ。
リーフでの何気ない、いつもの風景が脳裏に浮かんだ。マスターがいて、秋保さんがいて、レイがいて、私がいる。何気ない、穏やかなやさしい時間。
ごめん。
私が壊したんだ。
ごめん。もう戻れないよね?
でも、レイと会えてよかったよ。
たのしかった。
ありがとう。
レイ……
今日はいけるところまで行こうか。といってもあと1話か2話ぐらいだけどね。
で、本当にどうするよこの展開……
タイトル変更?




