鮮血の夜
残酷シーンというか、血の描写が今回含まれています。
苦手な方は自己判断でお願いします。
出来る限りソフトな描写にしたつもりでが、あくまで『つもり』ですので(笑
私はカミラに襟首をつかまれている。
「あまり動かない事ね、簡単に折れるわよ。ほら来たわよ」
屋上に黒い影が舞い降りる。ひとつは、もう見慣れたレイの姿いつもと違うのはすでに瞳が金色に輝いているそして髪の色が茶髪から銀色になっていることだ。
もうひとつは、赤い瞳のロマンスグレーのおじ様。そして、黒のタキシードに裏地が赤いマントでいかにも吸血鬼という格好。多分、彼がアルセクトという吸血鬼だろう。
「遅かったわね。思い出話もあきたし、この娘いじめようかと思ったじゃない」
『カミラ!』
レイとアルセクトの声が重なる。
「おっと、動かないでよ。あなたたちが距離をつめるより、首をへし折る方が早いと思わない」
カミラは楽しそうだ。
「何か考えがあって我々を呼び寄せたのだろう? なに用だ」
私でも感じ取れるほどの殺気を放出させているレイに比べて、アルセクトは冷静のようだ。ただカミラをにらむ目からすると、どのような葛藤が内心で渦巻いているのか容易に予想できた。
「アルセクトさんは、せっかちね。それじゃ、2人には殺し合いをしてもらおうかしら。賞品はこの娘と、私への挑戦権どうかしら」
「レイ君、駄目! ぐっ」
カミラが片手で私を吊り上げる。
「賞品は大人しく黙って見ていればいいのよ。どうするの? ふたりとも、この娘200年前の娘にそっくりよね。もう一度目の前で死ぬところを見る?」
「だ、だめ、レイ…ぐっ」
カミラが首を掴んでいる手に力をこめると一時的に息が出来なくなる。
「おだまりと言っているのよ」
「やめろ! やるよ」
カミラが力を込めるのをやめる。レイがアルセクトと向き合う。
「すまないな、アルセクト。俺は、秋穂が死ぬ所は見たくないんだ」
「私も、仇をみすみす逃がすわけにはいかない」
2人の間に殺気がみなぎる。
駄目、2人を止めないと。私でも分かるカミラはレイとアルセクトよりも強い。1人では勝てない。だが、カミラはレイとアルセクトを自分よりも弱いと侮っている、2人の連携次第では勝ち目もあるのに……
幸いカミラの武装解除が甘いせいで手持ちの武器はまだある。ブーツに隠してあったレイのナイフと…… 気づかれないように左手でナイフを抜く。
「さあ、楽しませて頂戴。勝ったほうにご褒美をあげるからね。あはは」
「アルセクト、本気で来いよ」
「バカ言え、こっちのセリフだ」
レイが先手を取る。アルセクトの首に蹴りを叩きこもうとするのを、アルセクトが右手で受け止める。次の瞬間アルセクトの両手に銀色に光るメスがあらわれた。それを首の動脈めがけて振るう。レイは寸でのところで避けるが、服が切り裂かれる。
「だめぇぇぇ」
叫ぶと同時に、私の襟首を掴んでいるカミラの左腕にナイフを突き立てた。銀のナイフをつきたてられては、カミラの左手から力が抜けた。だが、すかさずカミラの右手が喉元に当てられる。
「あなた、いらないわ。バイバイ」
喉に当てられていたカミラの右手が、すっと横に引かれた。
喉から熱いものが込み上げてきて、視界が赤く染まる。
反射的に左手で喉を押さえる。暖かい液体が左手を濡らし、ぼたぼたと滴り落ちるのが分かる。
痛みはなく、ただ熱い。切り裂かれた喉もそれを抑える左手も……
死という言葉が脳裏に浮かんだ。
私、死ぬの?
だが、言葉はでなかった。
レイの姿が視界に写る。
レイ…… ごめん……
背中をポンと押された。それに逆らえずに、私は倒れていった。
やっちまった。
どうすんだこれ。
多分、今日か明日中にもう1話更新。