美月
皆さん、あけましておめでとう。
というわけで、本日は旧正月です。
ごめんなさい。水曜日に更新できませんでした。
旧正月のせいで無茶苦茶忙しかったので。しかも何人か体調不良でぶっ倒れているし。
では、美月編どうぞ。
「レイ君、いいかげん、起きて朝ごはん食べてね」
私は居候のレイの毛布を剥ぎ取った。彼が行き倒れている所をお父さんが拾ってきて1ヶ月になる。
医者のお父さんの診察では過労という事で、しばらく居てもらう事にしたのだ。
レイ君の説明では探し物があって日本中旅しているらしい。らしいというのは、詳しい事は話てくれないからなの。
「美月さん……」
レイの眠そうな声が聞こえてきた。
「レイ君、おはよう。下に朝ごはん用意してあるから食べてちょうだい。ああ、もう時間がない。食器は水につけておいてね」
私はセーラー服の上から着たエプロンを外しながら、階段を下りる。食卓ではお父さんが新聞を読みながら朝食をとっている。
「お父さん、食べながら新聞を読むのは止めてよ」
お父さんが新聞をたたみながら青い目を私に向け、どこか遠くを見るような目をする。
「そういうところ、お母さんに似てきたな」
私のお母さんは3年前に病気で他界した。医者であるお父さんは、病気の発見が遅れたことを今でも悔やんでいる。私も一時期、お父さんを恨んだことがある。でも、完璧な人間なんていない。と今ではそう思っている。
「誰でもそう言うわよ。食べ終わったら食器は水につけておいてよ」
私はカバンを持って家を出る。レイ君がウチに居候を始めてから毎朝こんな感じだ。
「おはよう、美月」
声を掛けてきたのは、クラスメイトの上野 桜だ。同じ弓道部に所属している。
「おはよう、桜」
「ねぇ聞いた。昨日、また襲われたらしいよ」
「吸血鬼? ハンターも動いているのでしょう?」
私の反応に桜は眉をひそめた。
「もしかして、新聞読んでないの? 2人ほど返り討ちにあったって、事件情報は読んだ方がいいよ。危ないからさ」
「うん、でもそんな時間ないよ。手のかかるのが居るもの」
私はため息をつく。そうは言いながらも、その手かかることがキライではない。
「そんな事言ったら、おじさんかわいそうよ」
だが、いまどき珍しい事に家事が全く駄目なのは事実だ。放っておけば、朝昼晩と食パンを焼くどころかジャムもつけずに食べて暮らすだろう。
「でも、事実だからさ」
私は桜に、あはは、と笑ってみせる
「話変わるけど、レイ君は今日来るの?」
「何も言ってなかったけど来ると思う。お父さんに頼まれているみたいだし」
最近このあたりで多発している、吸血鬼による通り魔事件のせいで、何かと物騒だとお父さんがレイ君に私の迎えをお願いしたらしい。
「レイ君かっこいいじゃない。私は美月がうらやましいよ」
私は眉間にしわを寄せる。
「かっこいいけどね。手のかかる弟ができた…… 感じかなぁ」
「レイく〜ん。今日もお迎え?」
学園の敷地に入ると、すっかり顔見知りになった女生徒から声が掛かった。
「そうなんだ。それは置いておいて、今夜、僕と月夜のデートと洒落込まない?」
「やーよ。美月に怒られたくないもの」
女生徒がケラケラ笑ながら答える。どうわけか、僕は美月の所有物と言う事になっているらしい。美月本人が言うわけがないのでソース元は美月の友人、桜の方だろうか?
そうこうしているうちに弓道場についた。この付近は、見学と称した男子生徒がちらほら見える。弓道着をきた女の子の凛とした魅力は物凄くわかるのだけどな。
美月は弓道場の真ん中に居た。弓を引ききった状態で矢を放つタイミングを計っている。射法八節でいう『会』の状態だ。弓道の見せ場と言ってもいい。まるで一枚の絵のようだった。
僕の視線は美月の凛とした美しさに目を奪われていた。そして、『離れ』『残心』矢を放った後の姿勢を維持する。放たれた矢は、パン!と音がして的の真ん中を射抜いていた。美月が目を閉じ姿勢を戻して息を吐くのが見えた、身体から力が抜けるのを待って目を開く。そしてその黒檀のような瞳と目が合う。
「あ、もう来ていたんだ」
美月がテクテクとやってくる。
「おう、事件のせいで、アルセクトさんに頼まれているからな」
何だが胸の辺りがドキドキとする。
「もうすぐ終わりだから、少し待っていて」
美月を見送ると近くにあるイスを引き寄せ座り、ポケットから缶コーヒーを取り出すと口をつける。
今日は、なんだか得したような気分になるのは気のせいだろうか?
美月ちゃん編です。
秋穂と違い外国人の血が入ってますが、純血の日本人である秋穂にそっくりさんです。
きっと母親似なのでしょう(笑
では来週水曜日にお会いしましょう。
来週は多分大丈夫だろうと……