手掛かり
「あらあら、筑紫と鈴木がやられたのね」
カミラが妖艶な笑みを浮かべる。
「田中もやられたか。レイ君もやるじゃない。柴田も時間の問題ね…… アルさん相手だと役不足だったかしらねぇ」
自分の下僕が倒されたというのに、カミラは上機嫌だった。長く生きていると刺激がなくなる。だから200年前にわざと逃がしたのだ。
1人は真の不死の一族たる資格を持った若いヴァンパイア。もう1人は自分に対し憎悪をたぎらせる復讐者。ヴァンパイになってまで自分を追っているのだ。
そして今回の新しい収穫…… 黄金律の娘。200年前と同じ状況を再現してあげたら、どんな反応を示すだろう。すでに死人である体に耐え難いほどの高鳴りを感じる。
「今回は楽しめそうね」
カミラは舌なめずりした。
「くそ! どこに居る…」
レイは廃墟の中でカミラを捜す。下僕クラスのヴァンパイアを倒したが、カミラの居場所はわからない。
そのレイに金色の影が襲い掛かる。レイは反射的にその影に蹴りを叩き込んだ。影は瓦礫に叩きつけられ止まった。
「ワーウルフごときが、ヴァンパイアにかなうと思っているのか?」
怒気を含んだレイの声が廃墟に響く。
「ウマク、スキヲツイタツモリダッタガ、カナワヌカ」
ワーウルフがレイに丸めた紙を投げてよこす。開いてみるとこの辺りの地図だった。非統制地区のほぼ中心部に印がつけられている。
「カミラサマカラノデンゴンダ。ソノバショデマツ。アルセクトトイッショニコイ。ダソウダ」
「何のつもりだ? 何を考えている?」
レイの独白にワーウルフが答える。
「オレゴトキガ、アノカタノカンガエヲ、リカイデキルワケナカロウ」
「夜明けまで時間もない。従うしかないな」
立ち去ろうとしたレイにワーウルフが訪ねた。
「トドメヲ、ササナイノカ?」
「次に俺の前に立ち塞がるようなら、容赦しないさ」
レイは面倒くさそうに答えると、一気にビルの上まで飛び上がった。
カミラは、ビルの上から車道を見下ろす。ハンターの1人が非統制区の中心に向かって走り出すのが見えた。
「あらあら、自分から単独行動に出ちゃたわねぇ。手間は省けたけど……」
カミラはビルの屋上から身を翻しハンターの後ろに着地する。
その気配にハンターが反応した。
「誰?」
素早く銃口を向ける。
いい反応ね。少し楽しみたい気もするけど……
カミラは引金を引く隙も与えず距離をつめ、鳩尾に一撃入れると、ハンターは崩れ落ちた。
「演出の為、協力してもらうわ」
カミラは、ハンターの身体を抱えると、一瞬にして姿を消した。
今回はどちらかというと、カミラさんの話でした。
……今回の話、ちょっとあとがきの書きようが……(笑
というわけで、また来週の水曜日にお会いしましょう(笑