合流 そして
「レイ、舞奈さん」
レイが舞奈さんを抱えて歩いてくるのを見て、私は2人に駆け寄ろうと走り出した。あとから考えると、軽率な行動だったと思う。
「止まりなさい!」
舞奈さんの一喝で、私は足を止めた。舞奈さんはレイから離れ、私より5メートルほど間合いを取って立つ。
「葉月さん。我は魔を打ち破りし?」
あ、舞奈さんの所でアルバイトしていた時の合言葉だ。もちろん一人一人違う合言葉になっている。
「銀の弾丸」
私は答える。すると、いつものように微笑んでくれた。
「怪我はしてないようね、秋ちゃん」
「舞奈さん!」
私は前のめりに倒れ込む舞奈さんを抱きとめた。
「あはは、ごめんね。秋ちゃんの顔見たら、力が抜けちゃった」
「大丈夫ですか?」
「レイ君が、応急処置してくれなかったら、危なかったわ」
「レイ」
レイの名を呼び、姿を探すが…… レイの姿は無かった。あのバカ。なに考えているか分からないけど、どうして何も言わずにいなくなるのよ。携帯で呼び出すが電源を切ってあるようだ。
レイのバカ。
「行きなさい」
唐突な舞奈さんの声。
「えっ?」
「私達に構わずに、追いかけなさい。秋ちゃん、レイ君の事好きなの?」
私はレイの事をどう思っているのだろう? 自分自身に、問い掛けてみる。
「わかりません……」
「それじゃ、彼がこのままいなくなるのは?」
「嫌です」
私は即答した。
「なら、追いかけなさいな。彼みたいのは、捕まえておかないと、どこかに行っちゃうわよ」
舞奈さんだけではなかった、周囲の警戒をしていた田坂さんがタバコをふかしながら近づいてきた。
「お嬢ちゃん行きな。レイといったか。彼、訳ありだろ?」
「舞奈さん、田坂さん……」
私は少しだけ躊躇したが、決断した。レイの行動はどこかおかしい。私の勘だが、レイは今回の容疑者の女性を知っている。
「ごめんなさい。ありがとう」
私は装備を抱えなおすと非統制区の中心部に向かって走り出した。これも只の勘だ。けれどもレイがそこに向かっていると、私は確信していた。
「こっちは、どうする? 月島さんよ」
秋ちゃん担当の年配の捜査官、田坂という人が訪ねてくる。私のコンディションが万全なら他のハンターたちを探しても良いのだけど、今の私では、4人を庇いながら非統制地区を移動するのは不可能だ。
「本部で朝まで持ちこたえましょう」
「本部は全滅したよ」
その情報はレイ君から聞いている。でもバリケードを築いて持ちこたえることは可能だろう。
「知っているわ、レイ君から聞いたもの。大丈夫よ。夜明けまで後2時間、どうにかなるわ」
私は体中の痛みを表情に出さないように微笑んだ。
やっと秋穂の足枷が外れ単独行動です。
ストーリーが加速度的に進むかどうかは、私にも分からなかったりするのですが(笑
次回は来週の水曜日ではなく、今晩にもUPしようかと思っています。
あとは、聖魔戦記のUPも予定してます。