本部
新年早々。こんなことを書くとは思わなかったのですが、今回残虐なシーンが含まれています。
かなりソフトな描写にしたつもりですが、苦手な方は回れ右することをお勧めします。
「大丈夫? 怪我は無い?」
私は苦しそうに喘いで、地面にへたり込んでいる2人に近づいた。田坂さんと佐藤さんは私の指示で距離を取っている。外見は同じでも中身まで同じとは限らないからだ。
「たしか月村さんと一緒にいた人達ね?」
私はわざと名前を間違えて訪ねた。
「いや、月島だ。月島舞奈…… あんたの師匠だろ?」
どうやら本物のようだ。
「舞奈さんはどうしたの?」
「すまない。俺たちを逃がすために囮になった」
「そう…… 舞奈さんなら大丈夫よ」
私は2丁あるP90を1丁男たちに渡たした。
「さあ、本部に行くわよ」
私は田坂さん達に声を掛け、周囲を警戒しながら先頭を歩く。
「舞奈さん…… 大丈夫よね?」
私は皆に聞こえないよう小さな声で呟いた。
「最悪ね」
本部は、いや本部があった場所と言った方がいいだろう。壊滅していた。
地面にはほんの数時間前まで人間だったものがバラバラになって転がっている。一面血の海だ。その血の海の中央部、広場の中心付近には長テーブルがおいてあり、生首が綺麗に並べられていた。あきらかに殺人を楽しんでいる。
並べられた生首の中にはあの嫌味な警視の首もあり、私たちのほうを恨めしそうに見つめていた。
私の知らないところで幸せになって欲しかったのだけど、世の中そう甘くなかったようだ。 彼自身も送り出した部下より先に逝くなんて考えてもいなかっただろう。私は心の中で手を合わせる。(-人-)ナムー。
「もうだめだ! 俺たちも死ぬんだ!」
後ろで叫び声がした。先ほど合流した刑事の1人だ。バラバラになった同僚を見て、先ほどまで吐いていたはずだが、この光景に悲観して叫ぶほどには落ち着いたらしい。
私は近づいて行って頬を張り飛ばした。もちろんハンタースーツを着ているので十分に手加減している。パワーアシスト機能が入ったまま本気で殴ったら、そのまま天国に逝ってしまいかねない。
「軟弱者!」
古い某アニメのセリフを言った。
「お嬢ちゃん…… よく知っているな……」
田坂さんがあきれたように呟いた……
やめて、自分でも後悔している。ノリだけでやるものじゃないわね。(ノリでなくていつできる? という疑問もあるけどさ)
まあ、でも効果はあったようだ。彼は頬を押さえて私の方をおとなしく見ている。
「ええっと、無いよりはあるほうが生存率上がるから、2人1組で武器弾薬をかき集めて頂戴。1人が探して、1人が周囲を警戒、大丈夫?」
「大丈夫だ。だが、お嬢ちゃんは?」
私は田坂さんに後ろにそびえる大きな扉を指さして見せた。
「この状態では望み薄だけどね。扉を開けてもらえるよう交渉してみる。でも、過大な期待はしないで。それから水を探しておいて、出発前に警視さんがクーラーボックスから取り出しているのを見たからあると思う」
田坂さんは片手を上げて答えてくれた。
あけましておめでとうございます。
新年更新第1弾は本作となりました。今年もよろしくお願いします。
すいません。今回は調子に乗りました。
(-人-)ナムーと『軟弱者!』です。
(-人-)ナムーは顔文字なので、本来使うべきではないのは承知しています。(-人-)ナムナムの方がよかったかしら?
『軟弱者!』は『機動戦士ガンダム』でセイラさんがカイを引っ叩いたときのセリフです。知っている人も多いのでは?
では来週の水曜日にまた会いましょう。