装備
「田坂さん、佐藤さん、受け取って」
私は、二人にP90を差し出した。
「お、おい、嬢ちゃん。これは一体……」
いきなりのことに田坂さんも佐藤さんも困惑気味だ。
「田坂さんがそのニューナンブ1丁で、非統制区に入りたいなら止めないですけど、少しでも身の安全を計りたいのなら、私の権限で貸与します。使い方は…… 店長、教えてあげて」
普通なら警官といえこんな強力な装備を持つことが出来ない。モンスターが跳梁跋扈するこんな時代でさえ銃刀法で銃の携帯は規制されている。しかし、その例外がモンスターを狩るハンターであり、その権限の中にはハンター以外の人間に対しての銃の貸与も含まれている。
私は自分のP90に弾倉を差し込み、ポケットに入りきらなかった予備弾倉をガムテープで身体に固定する。
「それから、これを持っていって銀の弾丸が装填されているから」
グロッグ26を2丁差し出す。グロッグシリーズの中で最もコンパクトなモデルで、樹脂製フレームの圧倒的な軽量さ、手のひらに収まるほどの大きさで、足首に巻いて隠すことも可能だ。弾薬も9mmパラベラムを使用、装弾数も10+1発とこのサイズでは最大だ。
コンシールドキャリーピストル(隠し持つ銃)と呼ばれるとおり、携帯性を優先して選択した。
「最低限、自分の身は自分で守ってください。皆、容疑者が昼間行動している事から吸血鬼という可能性を捨てているみたいですから……」
「秋穂さんは、捨ててないのですか?」
佐藤さんが聞き返してきた。
「依頼を持ってくる時に、私の事を調べませんでした?ハンター協会に提出したレポートの通りです。それに吸血鬼でないにしても、10メートルもある非統制地区外壁を飛び越える相手ですよ」
少なくとも、吸血鬼並みの身体能力だ。これを相手にするなら対ヴァンパイア戦を想定した準備が必要だろう。それに非統制地区の中での作戦なのだから、他のヴァンパイアとはちあわせという可能性もある。その辺に可能性は他の人たちもしているようだが。
「秋穂さんは、原種と言うヤツの仕業だと?」
「信じるも信じないも勝手ですけど、私はそうだと確信しています」
田坂さんと佐藤さんは顔を見合わせた。
「なあ、佐藤。どう思う?」
「田坂さんは?」
「ん、俺か?」
田坂さんは煙草に火をつけて、思い切り吸い込んだ紫煙を吐き出した。
「嬢ちゃんを信じるさ。仕事を依頼した以上、それが大前提だ」
2人はそそくさとP90を手にとって使い方を教えてもらっている。
それを横目に見ながら、私はシグP239にハンターショップ『斬』特製の対ヴァンパイア用試作弾丸を込める。本当なら愛用のCZ75を使いたいが今は分解中だ。
「開始時間まで後5分。田坂さん佐藤さん、準備はいいかしら?」
二人に声をかけた私の姿は、異様なものに映っただろう。両手にP90を持ち、体中にP90やP239の予備弾倉を貼り付け、刀まで装備している。
「……秋穂さん、戦争でもするつもりですか?」
「戦争で済まないかもよ…… さあ、行きましょうか?」
長い夜が始まった。
今回もどうにか水曜日中に更新できました(笑
来週は無事更新できるだろうか。
今回の秋穂のメインウェポンはFN P90とSIG P239をチョイス。
気が付いた方いましたでしょうか?
GUNSLINGER GIRLのヘンリエッタの装備です。まあ、特に深い意味は無いのですが(笑
それではまた次回の更新で。