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第10話 帰らない名前

――――――――



 ギルドの広場に人が集まるのは、だいたい昼前だ。


 依頼の受け付けが朝に始まって、パーティを組んだり解散したり、昨日の依頼の精算をしたり、噂話を仕入れたりする。吟遊詩人にとって最高の狩り場だ。


 セリア・ハーモニアは広場の端の石段に座って、リュートを爪弾いていた。


 本番用の演奏ではなく、指慣らしだった。隣の仲間の吟遊詩人——エイナという、三十代の渋い声の女性——が並んで話の種を仕入れている。


「ねえセリア、聞いた? 協会のあの人が」


「聞いた聞いた。でも証拠がないんでしょ」


「証拠はリアン・フォルテが発見したって話よ」


 リアン、という名前にセリアの指が少し止まった。


 ——また出てきた。


 この一週間で何度その名前を耳にしただろう。魔術師協会に召喚されて、古代魔法陣の謎を即興で解いた。そういう話が流れていた。


 (運命の糸が、また動いている)


 セリアは心の中でそっと物語の続きを紡いだ。


 英雄譚の主人公は、意図せず歴史を動かす。そういうものだ。剣で戦うのではなく、ただ存在するだけで世界を変える——


「セリア」


 エイナの声が変わった。


 普段の軽い声ではなく、低く、慎重な声だった。


 セリアが顔を上げると、エイナが広場の入口の方を見ていた。


 馬車だった。


 高く磨かれた黒塗りの車体。四頭の黒馬。扉の部分に、金の刻印。


 セリアの胸が、一段落ちた。


 ——紋章。


 竪琴を図案化した、金の紋章。ハーモニア伯爵家の家紋。


 頭の中で、急いで言葉を並べた。偶然だ。他の依頼で来た誰かが。あるいは商人の馬車で家紋が似ているだけで。


 馬車の扉が開いた。


 降りてきた男は、グレーの制服を着ていた。ハーモニア家に仕える従者の制服だった。セリアは小さい頃から何度もその色を見ていた。


 男がゆっくりと広場を見渡した。


 吟遊詩人たちの集まり。石段。リュートを持った少女。


 目が合った。


 男が、まっすぐにこちらへ歩いてきた。


――――――――



 リュートが、爪弾かれなくなった。


 男が止まった。セリアの三歩前だった。四十代の、感情のない顔をした男だ。ハーモニア家の公式行事で何度も見た顔だった。名前は確か、テオドール。父の側近の一人。


「お嬢様」


 声が広場に落ちた。周囲のざわめきが少し静まった。


「ハーモニア伯爵閣下より、こちらへの出向を命じられております。お嬢様を、お連れするよう」


 セリアは石段の上に座ったまま、動けなかった。


 体が動かないというより、体中の何かが「これはまずい」と知らせているから、ちゃんと判断してから動こうとしているのに、判断が追いつかない。


 (帰れない)


 そう思った。帰ることがだめなのではなく、今帰ったら終わりだと、体が言っていた。


 グレンデル公爵家との縁談。十六歳からずっと決まっていた。家のためだと、父はそう言った。ハーモニア家の未来だと。


 家を出たのは十五歳の秋だった。


 母が、旅費を渡してくれた。「行きなさい」と言った。あの声が、今も耳の裏に残っている。


 「行きなさい」は、「行っていい」だったのか。それとも、「行かなきゃいけない」だったのか、今でもわからない。


「……」


 セリアは声が出なかった。


 テオドールが一歩前に出た。「お嬢様、閣下はご心配されております。どうかご同行を」


 穏やかな声だった。圧力がないように聞こえた。でもその静けさの中に、「断るという選択肢は存在しない」という前提が乗っていた。


 背筋が冷えた。


 これは物語じゃない、とセリアは思った。


 英雄譚でも、ロマンスでも、帰還劇でもない。ただの現実だ。帰れと言われている。拒否した場合のことを、自分はまだちゃんと考えていない。


 (どうする)


 リュートの弦に、指が触れたままだった。


――――――――



 リアン・フォルテは、この日、ギルドに用があった。


 依頼ではなく、先週の報告書の手続きだった。協会で何かが起きて(よくわからないことになっていた)、その後処理で書類が必要で、ギルド窓口に出す書類を受け取りに来ていた。厄介なことは全部来週にしたかったが、期限があるらしかった。


 広場に出たとき、馬車が止まっていた。


 黒塗りの大きな馬車で、普通じゃない感じがした。リアンはそういうものに関わりたくないので視線をずらしながら歩いていた。


 そのとき、石段の方に目が行った。


 セリアが座っていた。表情が、いつもと違った。


 セリアはいつも笑っている。大声を立てて、走り回って、「これは物語の定番展開!」とか言いながらリアンを困らせてくる。距離感が近くて、常に元気で、リアンにとっては少し苦手な類型だった。


 でも今、石段の上で、固まっていた。


 肩が上がっていた。膝を閉じて、リュートを胸の前に持ってきている。体を小さく畳んでいる。


 目の前に立っている男がいた。制服を着た、感情のない表情の男だった。


 リアンは少し立ち止まった。


 (……何かある)


 関わりたくなかった。この種の「明らかに自分には関係のない何か」に首を突っ込んで大変なことになるのは、もう何度経験したかわからない。


 でも。


 セリアの表情が。


 (……怖がってる)


 リアンは、ふわっと自分の足が動いているのに気づいた。意識した行動ではなかった。気づいたときには、もう歩いていた。


「あの」


 声に出ていた。


 テオドールが振り返った。セリアがリアンを見た。


「えっと」リアンは頭の中で言葉を探した。「本人が……嫌がってるみたいなんですが」


 テオドールが、少し沈黙した。


「……お客様は、この方のご知人で?」


「知り合いです」


「左様で。では、ご事情をご存知なら、お嬢様にご説明を」テオドールは視線をセリアに戻した。「伯爵閣下のご命令です。お嬢様にご選択の余地はございません」


 ご選択の余地はない。


 リアンは、その言葉を頭の中で二回繰り返した。


「……それは」


 また口が動いていた。


「本人の意思と関係なく連れて行く、ってことですか」


 テオドールの目が、少し細くなった。


――――――――



 状況が悪くなった、とリアンは思った。


 テオドールの右手が腰に行った。剣の柄だった。制服の下に帯剣していた。全部貴族の従者というイメージでいたが、この人は護衛を兼ねているらしい。


「お客様には、ご退出をお願いいたします」


 声は変わらなかった。でも圧力が出た。「退出しないなら剣を抜く」という意味が、声の下に乗っていた。


 リアンの後頭部で、「逃げろ」という声がした。


 いつもの声だった。体がそっちに行こうとした。


 でも——セリアが、まだ石段の上にいた。


「あの」リアンは両手を少し上げた。武器を持っていないことを示す、あの動作だった。「落ち着いて話しましょう。俺は邪魔がしたいわけじゃないんで」


「では、お退きを」


「本人に聞いてからでいいですか」


 テオドールが、今度は柄から手を離さなかった。


 まずい、とリアンは思った。本当にまずい。なぜ自分はいつもこういうことになるのか。書類を取りに来ただけなのに。


「セリアさん」


 振り向かずに、後ろに声をかけた。


「帰りたいですか」


 少し間があった。


「……帰れない」


 声が小さかった。


「帰れないと、嫌ですか」


「……嫌」


 それだけだった。でも、それだけで十分だった。


「俺には詳しい事情はわからないんですが」リアンはテオドールを見た。「少なくとも、本人は今行きたくないと言っています。強制するのはまずいと思います」


「お客様に、ハーモニア家の事情に口を出す権限はございません」


「権限はないですが、目の前で誰かが困っているなら、何か言うのは普通のことだと思います」


 テオドールの目が、一段低くなった。


 剣が、抜かれた。


 リアンの胃が、落ちた。


――――――――


 「リアン!」


 広場の向こうから声がした。


 ミレイユの声だった。


 次の瞬間、別の方向から別の声がした。


「剣を収めろ」


 アリシアだった。


 騎士団の副長候補が、平服で、でもどこからか出てきた短剣を抜きながら、真っ直ぐにこちらに歩いてきていた。目が、全然笑っていなかった。


 「公共の場での帯剣者による威嚇、騎士団が介入する権限がある」アリシアが、テオドールの前に立った。「剣を収めるか、理由を述べろ。どちらでもなければ、騎士団に引き渡す」


 騎士団の声音だった。貴族令嬢の声音ではなく、訓練された騎士の、命令の声だった。


 テオドールが、剣を止めた。


 ミレイユが隣に来ていた。「リアン、怪我は?」と小声で言いながら、セリアの方を見て、馬車の紋章を見て、手帳に何かを書き始めた。


 テオドールが、深く息を吐いた。


「……騎士団の介入を記録します」声が、初めて少しぶれた。「ただし、伯爵閣下のご命令は変わりません。お嬢様、次の機会には、こうはいきません」


 そう言って、剣を収めた。


 馬車に戻って、扉が閉まって、馬車が去った。


 広場に、風が来た。


――――――――



 アリシアが剣をしまった。


 周囲のギルドの人々がざわざわしていたが、馬車が去ったことで少しずつ空気が戻ってきていた。


「セリア」ミレイユが石段に近づいた。「馬車の紋章はハーモニア伯爵家のものだ。あなたの家から?」


 セリアは、しばらく答えなかった。


 立ち上がろうとしたが、足が少し震えていた。リュートをしっかりと胸に抱えている。


「……うん」


 セリアの声が、いつもの色じゃなかった。


 詩と歌と物語の言葉を使う、あの明るい声じゃなかった。ただ、疲れた十八歳の声だった。


「大丈夫か」アリシアが隣に立った。「今すぐ危険はない。でも、次が来るなら対策が必要だ」


「……ありがとう」ぼんやりと言った。「アリシアさん。ミレイユさん」


 二人のことを見た。それから、リアンを見た。


 リアンは少し離れた場所に立っていた。「えっと……落ち着いたなら、よかったです」と言いながら、若干後退っていた。


「リアン」


 セリアが、立ち上がった。


 ふらっとした。ミレイユが反射で腕を取ったが、セリアはゆっくりとリアンの方に歩いた。


「……あなたが、あのとき最初に」


「俺はただ——」


「『本人が嫌がっているならば』って、言ってくれた」


 リアンが止まった。


「本人が嫌がっているならば。それだけで、十分だって。……あなたは、そう言ってくれた」


「あの……そういう意味で……」


「誰も、そう言わなかった」セリアの声が、少し揺れた。「父も、使者も、ハーモニア家の誰も。私が嫌がっているかどうかは、関係なかった。ずっと」


 リアンが、困った顔をした。


 セリアにはそれがわかった。この人は「そんなに重大なことを言ったつもりじゃなかった」と思っている。ただ目の前で誰かが困っていたから、動いただけだと思っている。


 でも、それがいい。


 (それが、いいんだ)


 理屈も計算も役割もなく、ただ「嫌がっているならまずい」と動いた。


 そういう人が世界にいるということを、セリアは今日まで実感できていなかった。


「……ありがとう」


 英雄に言う言葉じゃなかった。


 ただ、一人の人間に言う言葉で、言った。


――――――――



 リアン視点——


 全部収まって、三人がギルドの中へ入っていくのを見送った後、リアンはその場に残った。


 空の石段に、風が吹いていた。


 (……これ、どういうことだったんだろ)


 セリアの家の使者が来て、帰れと言って、剣を抜いて、アリシアが止めて、ミレイユが記録して、セリアが震えながら「ありがとう」と言った。


 順番に整理するとそういうことだった。


 「本人が嫌がってるみたいなんですが」と言ったのは、事実の確認のつもりだった。高度な何かじゃなかった。本人が嫌がっているなら、それを伝えるのは普通のことだと思っていた。


 でもセリアは「誰も言わなかった」と言った。


 「私が嫌がっているかどうかは、関係なかった」と。


 (……そういう環境にいたのか)


 リアンには家族がいた。母が在って、実家がある。父は早く逝ったが、ひどい人間ではなかった。リアンが「嫌だ」と言えば、聞いてもらえた。


 セリアのそれは、そうじゃなかったようだ。


「まあ……」


 リアンは後頭部を掻いた。


「大変だったんだな」


 他に言葉が出なかった。


 それだけで十分かどうかわからないが、それ以上の言葉を自分は持っていない。


 書類を取りに来たのを思い出した。窓口に行かなければならない。


 リアンは広場を横切って、ギルドの正面扉へ向かった。


 (まあ……なんとかなるっしょ)


 セリアのことは、セリア自身が考えることだろう。自分にできることは、目の前で嫌がっている人を見たときに、また普通に声をかけることだ。


 それ以上でも以下でもなかった。


 扉を開けた。受付の列に並んだ。


――――――――




 ギルドの廊下のベンチに、セリアを座らせた。


 ミレイユが水を取りに行っている。アリシアは隣に座って、セリアの様子を確認していた。


「揺り戻しが来る場合がある。今すぐ一人になるな」


「……うん」


「何か必要なら言え。騎士団として動ける部分がある。ハーモニア家の使者が再び接触してくるなら、記録を残しておいた方がいい」


「ありがとう。アリシアさんは……本当に、頼りになる」


 アリシアは少しだけ間を置いた。


「……私も、父からのプレッシャーがどういうものか、知っている」


 それだけ言った。


 セリアが、少し驚いた顔でこちらを見た。


「完璧な令嬢として期待される重さは、誰にでもわかることじゃない」アリシアは続けた。「だから、意地を張るな」


「……うん」


 廊下の奥から、ミレイユが水を持って戻ってきた。


 (リアンも、今日ここにいた)


 アリシアはそれを考えた。偶然だった。彼はいつも偶然の場所に現れる。でも今日は、誰よりも先にセリアの前に立っていた。


 それが戦術かどうかは、もう考えなかった。


 ただ、状況から目を逸らさない人だとわかった。弱くても、怖くても、目を逸らさない。


 (……そういう人が、そばにいる)


 昨夜のことを思い出した。金獅子亭で笑った自分を思い出した。


 今日も同じことを、形を変えて教えてもらった気がした。


――――――――



 アリシアの隣に座りながら、手帳を開いていた。


 ——ハーモニア伯爵家の使者。紋章確認済。帯剣護衛付き。セリアの出自については把握していなかった。追加記録が必要。


 メモを取りながら、隣のセリアを見た。


 いつも元気に話しかけてくるセリアが、コップを両手で持って、水を飲んでいた。それだけの動作が、さっきよりも少し落ち着いて見えた。


 (恐怖は生理反応だ。安全が確認されれば回復は早い)


 理論的に整理したつもりだったが、なぜか胸の内側が少し重かった。


 それがなぜかを計算し始めて——やめた。


 今は計算しなくていい。


「セリア」


「うん?」


「水、全部飲んで」


「……うん」


 セリアが頷いた。


 廊下の奥の方で、リアンが受付の列に並んでいるのが見えた。背中を向けながら、普通に順番を待っていた。


 (あの人は……)


 今日、間に入った理由を、ミレイユは考えた。戦術的配置があったのか。状況を事前に計算していたのか。


 ——「本人が嫌がってるみたいなんですが」


 あの言葉が、計算から出た言葉とは思えなかった。


 あれはただ、目の前のことを見て、口に出した言葉だった。


 (理屈がない)


 理屈がないのに、結果だけある。


 ミレイユは何度目かのその感覚を、今日もうまく分類できなかった。


――――――――



 水を飲んだ。


 喉が乾いていたことに、今さら気づいた。


 アリシアとミレイユが両側にいた。何も言わずに居てくれている。それがありがたかった。


 (私、泣きそうだった)


 馬車を見た瞬間、泣きそうになった。アリシアが来なければ、もしかしたら泣いていたかもしれない。それだけは避けたかった。ハーモニアの人間の前で、泣くのだけは嫌だった。


 でも。


 泣きそうになったのは、馬車の前ではなく、リアンが「本人が嫌がっているならば」と言ったときだった。


 それが、怖くて涙が来た。


 嬉しくて、泣きそうになった。


 「帰れない」と言ったとき、「いや帰れ」と言われると思っていた。「ご事情を」と言われると思っていた。でも彼は「帰りたいですか」と聞いた。


 ——帰りたいか。


 まず、帰りたいかどうかを聞いた。それだけのことを、あの人はした。


 (英雄譚では、そういう場面がある)


 セリアは頭の中で物語の言葉を探した。救済者が気づく、声なき叫び。主人公が見えるもの、普通の人には見えないもの——


 でも今日は、その言葉が来る前に、別のものが来た。


 (英雄じゃなくて、ただの人だった)


 ただの冒険者が、通りかかって、「何かおかしい」と思って、立ち止まった。


 それが全部だった。


 (本当に好きかもしれない)


 考えてから、思った言葉の重さに少し驚いた。


 好きとか嫌いとか、そういうことを物語の外で感じたのは、いつぶりだろう。


 コップを、両手で握った。水が、少し温かくなっていた。


――――――――


 廊下の奥で、リアンが書類を受け取った。手に持って、いつもの感じで広場の方へ歩いていった。


 こちらに気づかなかった。


 (まあ、いいか)


 セリアは、少しだけ笑った。


 気づかれないくらいで、ちょうどいい気がした。


――――――――



 夜、宿の部屋でセリアは便箋を出した。


 母に宛てた手紙だ。


 一年間、書けなかった手紙だった。


 「行きなさい」と言った母。旅費を渡してくれた人。あの日から一度も連絡していなかった。怖かった。「行かせたことを後悔している」という返事が来たら、耐えられないと思っていた。


 ペンを取った。


 何を書くか、まだわからない。今日のことを書くか、この一年のことを書くか、それとも「ただ元気です」だけにするか。


 でも、今夜は書ける気がした。


 リアンが「帰りたいですか」と聞いたから。


 帰りたいかどうかを自分で決めていいと知ったから——ではなくて。


 (自分で決めていいって、ずっと知ってたんだ)


 ただ、誰かに確認してもらいたかっただけだ。


「帰りたいかどうかは、私が決める」


 声に出した。部屋に落ちた。


 ペンが、動いた。


「お母さんへ。元気でいます」


 最初の一文が、書けた。


――――――――


(第10話・終)


――――――――



 依頼票をテーブルに置いたのは、アリシアだった。


「四人で動く。これが今日の依頼だ」


 ミレイユが腕を組んだ。「戦術は私が立案します」


 セリアがリュートを鳴らした。「士気の担当は私ですね!」


 三人分の視線が、リアンに向いた。


「……俺、何すればいい?」


 返ってきたのは、同時に、三つの声だった。


 第11話「四人の依頼」


 ——三つの作戦が、全部おかしい方向を向いている。


第10話、お読みいただきありがとうございます。


今回はセリア回。「帰らない名前」です。

いつもは英雄譚のテンプレで世界を整理してしまうセリアにも、整理しきれないものがある。

その“引っかかり”が、歌や噂の軽さの裏で、じわっと重く残る回になりました。


セリアは噂を広める側でもありますが、彼女自身もまた噂に救われたり、縛られたりする立場です。

リアンの名前が何度も彼女の前に現れるのは運命……と本人は言いますが、実際は周囲の歯車が同時に噛み合っているだけ。

その偶然の連鎖が、次の依頼にもつながっていきます。


次回、第11話「四人の依頼」。

いよいよ四人が“パーティ”として動き始めます。


引き続きお付き合いいただければ幸いです。


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