終わらない世紀末 - 第十四章:終わらない戦争の謎
春が近づき、卒業の足音が聞こえ始めた頃、吉田先生は相変わらず、自分の思想を熱く語っていた。
「資本主義が諸悪の根源だ! 米帝のせいで今日も世界の何処かで戦争が起きている!」
吉田先生の声は、教室中に響き渡る。彼の言葉は、常に「資本主義」と「アメリカ」を悪の元凶とし、世界で起きるあらゆる悲劇の責任を彼らに押し付けていた。ケンタは、吉田先生の言葉を聞きながら、またしても戦争による世紀末を夢想した。それは、これまで見てきた映画のように、爆撃機が飛び交い、戦車が街を破壊し、人々が銃を手に戦う、壮大なスペクタクルだった。
(まるで映画みたいだ…)
しかし、ケンタの心には、一つの疑問が湧いてきた。
(どうしてそんなに強いアメリカが、すべての戦争に勝って、戦争の終わりが来ないのだろう?)
吉田先生は、アメリカが世界の悪だと糾弾する。だが、もしアメリカが本当にそんなに強大な力を持っているのなら、なぜ世界から戦争がなくならないのだろう? なぜ、彼らが起こしているはずの戦争が、いつまでも終わらないのだろう?
そして、ふと、ケンタは別の紛争を思い出した。テレビのニュースで見た、遠い国の戦争だ。
(アフガニスタン紛争は、ソ連が起こしたんじゃなかったっけ…?)
吉田先生はアメリカばかりを悪者にするが、ソ連もまた、世界中で紛争の火種を撒いているように見えた。吉田先生の語る「悪」の構図は、ケンタが知る世界の現実とは、どこか食い違っているように感じられた。
そんなケンタの疑問を察したのか、あるいは吉田先生のあまりに偏った思想に我慢できなくなったのか、担任の斎藤先生が、ポツリと小さな声で言った。
「吉田先生…資本主義がなくても、戦争は起こりますよ」
斎藤先生の言葉は、吉田先生の熱弁とは対照的に、静かで、しかし確かな重みを持っていた。その言葉は、ケンタの心に、新たな波紋を広げた。もし、資本主義がなくても戦争が起こるのなら、戦争の原因は、もっと根深いところにあるのかもしれない。それは、特定のイデオロギーや国家のせいではなく、もっと人間そのものに宿る、避けられないものなのだろうか。
ケンタの「世紀末」への夢は、これまで以上に複雑な様相を呈し始めた。映画のような壮大な戦争の終焉を夢見ながらも、その戦争がなぜ終わらないのか、誰がその真の引き金なのか、ケンタは答えを見つけられずにいた。




