終わらない世紀末 - 第十三章:こっくりさんの啓示と狐の休息
「ねえ、ケンタ君も一緒にやろうよ!」
ある休み時間、クラスの明美に強引に手を引かれ、ケンタはクラスの女子たちが輪になっているところに連れて行かれた。彼女たちの前には、紙に書かれた「はい」「いいえ」の文字と数字、そしてその上に置かれた10円玉があった。「こっくりさん」というらしい。オカルト趣味はケンタの好みではなかったが、一体何が始まるのか、興味本位で輪に加わった。
「こっくりさん、こっくりさん、もしよろしければ、この10円玉の上においでください」
明美が真剣な表情で呼びかけると、他の女子たちも息をひそめて10円玉を見つめた。ケンタは、そんな彼女たちの様子を、どこか冷めた目で見ていた。本当にこんなもので何かが起こるのだろうか?
しかし、ケンタの頭の中では、既に新たな「世紀末」のシナリオが始まっていた。もし、この「こっくりさん」とやらに、本当に強大な力が宿っているとしたら? その力が暴走し、世界を混乱に陥れるとしたら? 10円玉が意志を持ち、巨大なエネルギーを放出して文明を破壊する。あるいは、こっくりさんが呼び出した悪霊が世界を支配する…。
その時、教室の扉がガラリと開き、いつものように吉田先生が姿を現した。女子たちの輪と、紙の上の10円玉を鋭い目で見つけると、彼は雷のような声で叫んだ。
「何をやっているか! こんなものは迷信だ! 若者はもっと、こんなくだらないものではなく、偉大なマルクスやレーニンの思想に学ぶべきなのだ!」
吉田先生は、有無を言わさず紙と10円玉を没収し、まくし立てた。明美は、せっかく始めたこっくりさんを邪魔された上に、迷信だと否定されたのが悔しかったのか、大粒の涙をこぼしてしまった。
その次の日から、吉田先生はなぜか3日間、学校を休んだ。職員室では、斎藤先生が心配そうな顔で、「どうやら狐に取り憑かれてしまったらしい」と話しているのが聞こえてきた。ケンタは、その言葉に、何とも言えない奇妙な感覚を覚えた。迷信を否定したはずの先生が、狐に取り憑かれるとは…。
(もしかして、こっくりさんの祟りなのか…?)
ケンタの心の中で、こっくりさんの力、吉田先生のマルクス主義、そして狐の存在が、混沌と混ざり合い始めた。インフルエンザによる静かな終末とはまた違う、もっと奇妙で、不可解な世紀末。それは、科学では説明できない、オカルト的な力によってもたらされる、予測不可能な世界の終わりなのかもしれない。




