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世紀末が来ないじゃないか、馬鹿野郎 昭和少年伝説  作者: バッシー0822


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終わらない世紀末 - 第十一章:清めの嵐、守るべき命

雨風が強さを増し、台風がケンタの住む町に近づいていた。普段と違う薄暗い空の下、登校中の景色は異様だった。見渡す限りの田んぼは濁流に浸かり、普段は穏やかな川が、轟々と音を立てて茶色く濁った水を押し流している。ケンタは、自然の猛威を目の当たりにし、また新たな「世紀末」のイメージを膨らませていた。巨大な高波が街を飲み込み、強風が建物を吹き飛ばし、世界は水と泥に覆われる。その中で、彼はたった一人、生き残るのだ。


学校に着くと、教室はいつもよりざわついていた。台風の接近により、急遽、集団下校をすることになったのだ。先生たちは、安全な帰り道を確認したり、下校時の注意を生徒たちに伝えていた。そんな中、吉田先生は、いつものように不機嫌そうな顔で、窓の外の荒れた景色を眺めていた。


「ふん、いい気味だ。この汚れた大地が、この嵐で洗い流されるのだ。文明の汚れも、人間の業も、すべて清められるのだ!」


吉田先生は、独り言のように、しかしはっきりと聞こえる声で言い始めた。彼の言葉には、どこか異常な興奮が感じられた。汚れた大地、清められる…それは、彼の理想とする世界の終焉の形なのだろうか。


その時、意外な人物が吉田先生の言葉を遮った。担任の斎藤先生だった。普段は生徒たちにナメられ、頼りない印象の斎藤先生が、珍しく強い口調で言った。


「吉田先生、そんなことを言うべきではありません! 今、一番大切なのは、皆さんひとりひとりの命です! 危ないですから、決して川や用水路には近づかず、寄り道をせずに、まっすぐお家へ帰りましょう!」


斎藤先生の言葉は、体育館中に響き渡った。その表情は真剣で、生徒たちの安全を心から心配していることが伝わってきた。吉田先生は、何か言いたそうな顔をしたが、斎藤先生の普段とは違う強い気迫に、言葉を飲み込んだようだった。


ケンタは、斎藤先生の言葉に、少し驚いていた。いつも頼りない先生が、今日に限って、こんなにも力強い一面を見せるなんて。そして、「ひとりひとりの命が大切」という、当たり前の言葉が、今のケンタの心には、ひどく新鮮に響いた。


(命が大切…世紀末になったら、そんなこと言っていられないんじゃないのか…?)


ケンタが夢見る世紀末は、生き残るための厳しい戦いの世界だ。そこで「命の大切さ」などという言葉は、無力なものに思えた。しかし、斎藤先生の真剣な眼差しを見ていると、そんな世界が本当に来ることを、どこか恐れている自分に気づいた。


台風はさらに勢いを増し、雨風が窓ガラスを叩きつける。集団下校の列に並びながら、ケンタは空を見上げた。灰色に覆われた空は、まるで世界の終わりを告げているかのようだった。しかし、その時、ケンタの心に去来したのは、世界の終焉への期待ではなく、少しばかりの不安と、斎藤先生の温かい言葉だった。


挿絵(By みてみん)

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