終わらない世紀末 - 第十章:燃える列島、消える夢
冬休みが明け、新たな年が始まった。ストーブの燃える音だけが響く静かなリビングで、ケンタはテレビに釘付けになっていた。画面には、遠い国の**火山噴火**のニュースが流れていた。噴煙を上げる巨大な火山、赤々と流れる溶岩、そして逃げ惑う人々の姿。ケンタの心は、一瞬でその光景に引き込まれた。
(そうだ、これだ!)
ケンタの脳裏に、彼が夢想する究極の世紀末の光景が広がった。世界中の火山が一斉に噴火し、大地は揺れ、空は火山灰で覆い尽くされる。逃げ惑う人々は、迫りくる溶岩の濁流に飲み込まれ、降り注ぐ岩石が、文明の象徴である高層ビルを押し潰していく。アスファルトの道は溶岩に覆われ、森は炎に包まれる。すべてが破壊され尽くし、地球は灼熱の星へと姿を変える。これこそが、ケンタが待ち望んだ、真の**世紀末**だ!
熱い想像に身を任せていると、ふと、視界の隅に、見慣れた幻影がちらついた。いつの間にか、吉田先生が、まるでテレビ画面から抜け出してきたかのように、ケンタの妄想の中に現れていた。しかし、その姿は、これまでよりも一層、不気味さを増していた。悪役がよく着るような、黒いマントを羽織っているようにも見える。吉田先生は、歪んだ笑みを浮かべ、燃え盛る火山を指差しながら、高らかに言い放った。
「見ろ! これこそが、この国の宿命だ! 日本は**火山列島**だ! 生まれながらにして、滅びの運命を背負っているのだ! こんなくだらん国は、滅んでしまえばいいのだ!」
吉田先生の声は、まるで地獄の底から響いてくるように、ケンタの脳内にこだました。いつの間にか、吉田先生は、ケンタの個人的な妄想の世界にまで侵食し、まるで**ヒーローものの悪役**のように、その滅びのビジョンを煽る存在となっていた。
しかし、その瞬間、ケンタは妙な違和感を覚えた。吉田先生の言葉は、まるで日本という国への個人的な恨みが渦巻いているかのようだった。ケンタが望む世紀末は、もっと普遍的な、人類全体の、避けられない運命として訪れるものだったはずだ。特定の誰かの憎悪によって引き起こされる「滅び」は、彼の夢とはどこか違う。
(この人は、やっぱり、僕の世紀末とは違うんだ…)
燃え盛る火山の光景は、ケンタの心を激しく揺さぶる一方で、吉田先生の存在は、その純粋な終末への憧れに、またしても水を差すものだった。ケンタは、吉田先生が、もはや自分の夢の邪魔者にしか見えなくなっていた。彼は、自分の世紀末を、誰にも邪魔されずに、自分だけのものとして、見届けたいと強く願った。




