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第6話:恋は時間を超えるが、物理的には超えられなかった

「……じゃ、君たちには“明日の存在消滅”に向けた最終恋愛試練を受けてもらうよ」

神(※転校生)は、ポテチを食べながら言った。

「は?恋愛試練って何だよ?」

「簡単さ。“好きな相手を、**自分で人間にする”こと”。失敗したら、時間ごとお前が消える」

「人間にする……?まさか……カナタを……!?」

視線の先で、彼女――ゾンビで宇宙刑事でドラゴンのカナタが、

体育館の片隅で静かにファンタジー炊飯器に自分の尻尾を突っ込んでた。

「人間になるためには、“恋する相手の気持ち”を熱で蒸留しなきゃいけないの」

「おまえ、その方法……マジでやる気か?」

「うん。だって……“人間として、カズマくんに会いたい”から」

涙じゃない。ドラゴンの目から時間が流れてた。

過去も未来も溶けるくらい、やさしくて、かなしい光。

神の出した試練は、想像以上にエグかった。

第1段階:「恋愛記憶迷宮」

→ カズマ、自分が恋してきた記憶の中にダイブ。

小学生の初恋、中学の黒歴史、高校の失恋全部ぶり返し。

「はっはっは、おまえあのとき“好きな人は酸素です”って言ってたぞー!」

「うるせええええええ!!」

第2段階:「存在否定バトル」

→ 神が作った“ネガティブ人格の自分”とバトル。

「お前みたいなやつ、彼女が人間になっても捨てられるだけだぜ?」

「でも、俺は!俺は!それでも好きだって言いたいんだよ!!!!」

ぶん殴った瞬間、空間がパリーンと割れた。

その頃、カナタは――

最後の工程、“変身の扉”の前にいた。

「この扉を開けたら、私はもうドラゴンでもゾンビでも宇宙刑事でもなくなる。

ただの、1人の……人間の女の子になるの」

でも、扉の向こうには何もなかった。

「え……?なにこれ……空っぽ……?」

そこに神が現れた。

「“恋する側”が来ないと、変身は成立しない。人間になるのって、1人じゃダメなんだよ」

「……来てくれるかな、カズマくん……」

一方そのころカズマは、

最終試練、“愛の重力逆転シュート”を受けていた。

空中に吊るされた巨大ハート型惑星から、好きの気持ちをぶつけないと爆発する。

「いくぞ……!これが……俺の……!」

「好きだああああああああああああ!!!!」

その声は時空を貫いた。

物理も、倫理も、文法すらねじ切って、まっすぐ彼女に届いた。

扉の前で待っていたカナタの前に、カズマが降ってきた。

マジで空から降ってきた。好きの勢いがヤバすぎた。

「遅いよ、カズマくん」

「ごめん。でも、言いたいことがある」

カズマは手を握った。

ゾンビの皮膚も、ドラゴンのうろこも、宇宙刑事のバッジも全部透けて――

その奥にいたのは、ただの「カナタ」。

「おまえが人間かどうかなんて、どうでもいい。

人間だろうが、ゾンビだろうが、火を吹こうが、ベーコン焼こうが、

俺はお前が好きだ」

「……っ……ばか……」

ふたりが見つめ合った瞬間、空間が金色に光った。

扉が開く。

炊飯器から蒸気が溢れ、

カナタの体が光に包まれ――

「やっと……カズマくんと、同じ人間になれた……!」

ドラゴンの尻尾が、ふわっと消えた。

肌はあたたかく、鼓動はやさしく、笑顔はちょっと泣きそうだった。

そのとき――空が割れた。

神「よくやった。

だが、試練をクリアした代償として――この時間は消滅する」

「は?」

「カナタが人間になったことで、“ゾンビドラゴン宇宙刑事”だった過去が矛盾になった。

この時間軸は、あと1話で終了する」

「ちょ、おい、それどういう意味だよ!?」

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