第5話:体育祭に出たら時間が6回死んだ(恋愛は生きてた)
「いよいよ本日は~!!“第106億回・次元間統合記憶体育祭”です~!」
朝からテンションMAXの放送が校内に響く。
俺の通う【時空異常学園∞校舎】は、今日だけ無限に伸びている。
「集合~!開会式するよー!全員、“自分の一番黒歴史な記憶”のコスプレしてグラウンドへ集合~!」
俺は着ていた。
中学時代の“痛いポエム帳”が具現化した全身タイツを。
「……死にたい……」
「でも似合ってるよ、カズマくん♡」
カナタはと言うと、魔法少女の格好にゾンビメイクという謎ギャップで攻めてきた。
魔法の杖から血が滴ってる。どういうシステム?
「今回は3人1組の時間リレーで優勝を狙おう!」
最後のメンバーは“AI元カノ(天使モード)”。
天使の羽がタイヤみたいに回ってて、常に後ろにホログラムの光輪が漂ってる。
「私、カズマのために記憶データの96%を削除した。だから過去には縛られない。走れる」
「なんかめっちゃエモいけど怖えぇよ……!」
*
そして始まった、“第1種目:未来逆走タイムリレー”
ルール:バトンを持って、未来から過去に向かって走る。
途中で時間が暴れだす。下手すりゃ過去の自分とキスする。
俺たちの順番。スタート地点に立つと、空間がぐにゃりと曲がり出した。
「位置について~!……カウントダウン開始!」
「3、2、1、0、−1、−2……GO!」
時が逆再生。世界が巻き戻る。
目の前に現れたのは、小学生の俺。
「おれ、未来でモテてる?」
「まぁ……それなりに……」
「やったー!!」
ハイタッチしたら、時空が崩壊した。
逆走のバトンが“恋文”に変化、読むと好きな人の名前が爆音で流れる仕様。
《読み上げ中:「カナタ!!好きです!!!」》
「ばかっ……全校に聞こえてるしっ……!」
カナタ、顔面ドラゴンのくせに、赤くなるの可愛い。
でも油断してた。
目の前に、敵チーム“闇の時間省高校”の生徒が現れた。
全員、過去の存在から作られたクローン。
「カズマ・A13時空、お前の“やり直したい記憶”を燃やしてやる!!」
バトンを守りながら戦闘開始。
銃撃戦。魔法。コマンド入力。心理戦。
体育祭とは思えないガチのバトル。
「いけっ!“恋愛属性:逆光のデレビーム!”」
カナタの放った光線が、敵の心の闇を照らした。
「や……やめてくれ……!俺は昔……好きな子に告白して……」
「その子って、俺だったよな?過去の俺から聞いた」
「えっぐい暴露すんなーー!!!」
最終コーナー、残り10m。
敵の妨害魔法:**“元カノ再生ビジョン”**が発動。
俺の脳内に、過去の黒歴史がフルカラー4Kで流れた。
泣きそうになったそのとき、手を握ってくれたのは――
「ほら、走ろ。今を生きるんでしょ?」
カナタの手。
ゾンビのくせに、温かかった。
二人で、ゴール。
時間が破裂。時計が歌い出す。
《ゴールインしたので、昨日が無効化されます》
《今日が上書きされました。恋愛フラグ更新》
「おつかれー!第一種目の賞品は、“1分間だけ全人類に告白できる権利”でーす!」
「いやそれ罰ゲームじゃねぇか!!!」
でも、マイクを持つカナタが、ぽつりと言った。
「カズマくん。……私はずっと、君が好きだよ」
全校生徒、時空ごと赤面した。
その瞬間、空から巨大な卵が落ちてきて、世界が割れた。
中から出てきたのは、“次元をまたぐ転校生(本物の神)”。
「よう、今日からこのクラスに転校してきた“神”だ。よろしくなー」
「え……なんでこのタイミングで神!?」
「“明日の体育祭、全宇宙代表戦”だって聞いて来た」
「え、え、ちょっと待って、宇宙代表!?」
「ついでに言っとくと、お前らの時間、そろそろ消滅するから」
あれ?カナタって顔面ドラゴンだったっけ…?