第3話:地獄巡り体験(実技)で初デート
「では皆さん、今から“地獄巡り体験(実技)”に入ります~」
担任(外見:サボテン/種族:概念)が、宇宙空間に響く声でアナウンスした。
俺はというと、ドラゴンゾンビ宇宙刑事彼女のカナタ(長いからそう呼ぶことにした)と手をつないでいた。
場所は地獄。マグマの上を浮かぶ“怨念製ジェットコースター”の先頭座席。
デートだこれ。シチュエーションが地獄なだけで、実質デートだこれ。
「はいっ、地獄一周コース~♪ スプラッタ級でーす♡」
受付嬢(頭が二つある謎のアイドル)が、笑顔で血のチケットをくれた。
俺の名前がチケットに“焼き文字”で刻まれてる。怖っ。
「ちょっと緊張してる? カズマくん」
カナタがそう聞いてきた。表情は半分ドクロ、でも目がやさしい。
背景で、怨霊がシャウトしながらバンジージャンプしてるのに、なんだこの恋愛ムーブ。
「……うん、まぁ、初めてのデートが地獄なのは……普通にトラウマになりそう」
「でも、嬉しいでしょ?」
「うん、まぁ……(くっそ、悔しいけど可愛い)」
そんなやりとりをしてたら、急にジェットコースターが発進。
重力が一瞬逆転して、上下左右の概念がバグった。
車両の外では、魂の断末魔がアカペラ合唱してる。
「次は、元・人間で構成された“自己否定の迷宮”に突入しまーす!」
中に入った瞬間、声が響いた。
「お前ってマジ、空気読めないよな」
「どうせまた途中で投げ出すんでしょ」
「人のことばっか気にして、自分ないじゃん」
「存在価値って何?」
それはすべて――“俺の声”だった。過去の、心の奥の、自分の声。
声がどんどん増えて、重くなって、視界が暗くなっていく。
「……やば、これ……ホラー系だ……精神にくるタイプ……」
でも、そのとき。
「カズマくん」
カナタが、俺の手をギュッと握った。
「うるさい声なんて、私が吹き飛ばすよ」
そう言って、カナタの背中から炎の羽が広がった。
ゾンビなのに、火を操る。しかも火が“優しい”。
その火が俺の心に触れた瞬間、ノイズが全部――燃えた。
「……ありがとな」
「ううん。好きだから当然だよ」
ジェットコースターが再加速した。
次のエリアは“未来予知ドーム”。全員、自分の“死ぬ瞬間”を3Dで見せられるらしい。
「次、カズマくんですねー♪」
スタッフ(全身が目玉の生き物)がスイッチを押すと、ホログラムが浮かび上がった。
映っていたのは、俺がカナタの胸で泣きながら――笑ってる姿だった。
「……え、これ……死ぬ瞬間か?」
「うん、心臓が止まる1秒前。でも、すっごく幸せそう」
「……めっちゃ泣けるじゃねぇかそれ」
「私はね、最期にカズマくんを守って死ねたら、それでいいの」
「やめろや!!死亡フラグ立てんなよ!!!」
そんなやりとりをしてると、急に地響きがした。
ジェットコースターが停止。警報が鳴る。
『【緊急事態発生】現在、時空の狭間から“存在しないはずの先生”が侵入中です』
え、何それ。ホラーの予感しかしない。
気づけば周囲の乗客は、全員“ぬいぐるみ”になっていた。
さっきまで喋ってたやつが、全部、ぬいぐるみ。動かない。目だけ、こっち見てる。
「来る……!」
カナタがレーザー銃を構えた瞬間、空間が裂けた。
そこから出てきたのは――“先生”だった。
顔は人間。体は触手。背中から教科書。手には出席簿。
黒板のチョークが勝手に動いて、文字を書いた。
【欠席:カズマ】
【罰:永遠の無】
「うっわーーー!!ホラーとバトルの融合きたこれ!!!」
叫ぶ俺の前に、“未来の俺(女体化ver)”が再び登場。
後ろからは、AI元カノ(天使モード)と、謎の新キャラ“超次元スライム兼カフェマスター”まで来た。
全員が叫んだ。
「最終テスト、開戦だ!!」