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第8話 ギルドでの歓待?

 日を改めて翌日。


 探索が連続だったこともあり、色々なことを整理するためにも、無神原のアトリエでちょっとした休養をとっていたのだが、ようやく準備が終わったらしい。だいたい、チャンネルの準備だったりなんだったりってところだ。僕を映していたという探索者の方々の連絡先を知らないので、それこそ名刺代わりに活用できるように色々と準備をしていたのだ。


 本当なら家に帰ったほうがいいんだろうけど、今のまま家に帰るのは少し怖い。妹の反応も今までの僕基準で考えていたが、実は違うかもしれないと思うと末恐ろしい。


 ということで、現実逃避も兼ねてダンジョン探索だ。そのために、無神原から発明品についての情報を引き出した。

 聞き出せたのは、戦闘方面で活躍した魔法生成AIとやらについて。これは僕の人より多いという魔力をAIに学習させた魔法に変換して発動できる優れものらしい。要はコピー系のスキルと似たようなはたらきをするらしいのだが、厳密には違うと無神原に怒られてしまった。そのときは熱をもって色々と話してくれたが、僕はその辺理解していない。無神原いわく、もっと便利らしいが、どう違うのだろうか?

 まあでも、有名な探索者にも手伝ってもらったらしいからすごいものではあるのだろう。正常に動作すれば、だが。


 そんな魔法生成AIだが、今はスカーフのような形をしている。以前より小さくなっている気がするけども、蹴飛ばされてすぐに装備できなかったことを思えば今のほうがいいのかもしれない。


「さて、気合十分」


 場所は当然東京第49ダンジョンだ。

 未だに初日に探索した内容を報告していないので、探索者としては変わらず最低ランクのGランク。探索者としてやっていくならランクも地道に上げていきたいところだ。


「失礼しまー」


「うおおおお! キラースクリーマーがやってきたゾォ!」

「やっぱりこのダンジョンだったのかよ! ランク上がってなくてよかったぜ」

「ねぇねぇねぇ、一緒にパーティ組んで探索しない?」

「今どんな気持ち? 一夜にして有名になって今どんな気持ち?」

「待て、話をするのは俺が先だ」


「え。あ、え?」


 意味がわからないくらいの歓待に僕は思わずフリーズしてしまった。


 ギルドに入っただけなのに、どういうわけか背中をバシバシ叩かれて、あれやあれやとギルドの中央に連れられている。

 探索者の知り合いなんていないなりたて底辺探索者なので誰も知らない。笑顔で何やら話しかけてくる人が多いけどもどうして……?

 もしかして、ネットだけじゃなく、リアルでも知れてるのか……? しかも、キラースクリーマーとして……。


「さあ、キラースクリーマー。今日の獲物は誰と狙う?」

「私よね?」

「俺だよな?」

「僕でしょう?」


 方々から色々な探索者の人たちが我先にと手を突き出してくる。

 気持ちはありがたいけど、乗っかるわけにはいかないよな。


「あの。僕は一人で探索するつもりなので、すいません」


「そんな! 私なんてもうすぐFランクに上がれるのに!」

「そうそう。絶対力になれるよ」

「話題に乗っかろうとしているだけでしょ?」

「優しさで言ってるの。ね? どうかしら」


「別にランク上げを急いでるわけじゃないので、すいません」


 だが、一人二人と断っていても人の波が止む様子は見えない。押し合いへし合い、僕のほうへと探索者が目指しているのだ。あっちこっちでスキルを使用しているのが見えて、ギルド内なのに本気のケンカみたいになってきている。


「やめてくださいやめてください!」

「ちょ、あんた何すん」

「おい待て。受付嬢の明尾さんだぞ。止めろ止めろ」


 大声を張り上げながら人垣を割ってきたのは受付嬢の明尾さんだった。


「みなさん探索者ですよね? でしたらこんなことやめてください。人の活躍に乗っかろうとしないでください」

「そんなんじゃ」

「いいからどいてください。私の仕事ができませんから」

「明尾さん厳しい」

「なんですか?」

「なんでもないです……」


 そこいらのGランク探索者よりも強いらしい明尾さんは、屈強そうな男たちさえ吹き飛ばしながら僕のもとまでやってくると、にらみ一つで探索者の群れを散り散りにしてしまった。

 それでも息一つ、髪型一つ乱すことなく、涼しい顔をしている。

 さすがはギルドの受付をしているだけはある。普段から変質的な探索者に絡まれるからと最近は人手不足とも聞いていたけど、明尾さんみたいな優秀な人がやっているなら安心だな。


「丸木さん、失礼しました」

「いえ、こちらこそどうもすみません」

「丸木さんが謝ることではありません。しかし、本当にキラースクリーマーと呼ばれている方は丸木さんで間違いないんですね?」

「ええ。そうみたいです」

「なるほど」


 額に手を当て、こめかみとほほをひくつかせているところを見ると、どうやらかなり思うところがあるようだ。

 地道にがんばろうと思ったけど、これはダンジョンの管理をしているギルドに目をつけられて、ランクを上げることは困難かもしれない。

 まあ、それならそれでダンジョンに詳しそうな無神原の知恵でも借りるかな。僕実験台になってるし、ウィンウィンだろう。


「ひとまず、ご活躍については耳に挟んでいます。が、事態が事態ですので、ギルドから丸木さんに対する報酬の支払いや、正当な評価を決定するまでには少しお時間をいただきたいです」


 報酬、と言ったか。それに僕が迷惑をかけている側のはずが、評価を下すと。罰金の間違いでは?


「それはつまりどういうことですか?」

「はい。私の立場からでは詳しいことは言えませんが、それでも近日中に報告できたらと思います。少なくとも、悪い結果にはならないだろうということだけは言わせてください」

「わかりました……?」

「キラーアイアンはその希少性から倒した探索者に対して高い評価が下されることが通例です。それに、後々名を残す方の多くがキラーアイアンを倒しています。ですので、ギルドからの評価もきっとよいものでしょう。私も丸木さんには期待していますよ」

「ありがとうございます。ただ、僕はそこまですごくないですよ」

「またまたご謙遜を。ですが、そのような姿勢が探索者としては重要なんでしょうね」

「いえ、本当に違うんです。謙遜とかじゃないんです」

「自信をもってください。丸木さんのやったことは誇っていいことですよ」

「ありがとうございます」


 めちゃくちゃ気を遣われてしまった。

 明尾さんは受付のお姉さんだから、僕のことを悪く言えないのだろう。

 しかし、真面目そうな表情で真っ直ぐ言われるとお世辞にしても照れてしまう。 歳をとると褒められる機会って少なくなるから嬉しいけど恥ずかしいね。

 ギルドに入って探索者の人たちに絡まれたときはどうなるかと思ったけど、今日の探索は問題なくできそうだ。

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


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