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異世界なんて嫌いだ  作者: うどんずるずるしたい
第一章 研究所編

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31  出発

 ―――車両格納庫…そこは文字通り車の沢山ある場所だった。

 広大な地下空間に軍用トラックがずらりと並び、エンジンを吹かしたトラックの排気と機械油の匂いが鼻を突く。

 この場所に来た俺達は、三列に横並びで整列させられていた。俺の後ろにはユウが立っている。


 「83名!これで全員だな!いいか、よく聞け!!」


 メガホンを通していない、軍服の男の怒声が反響する。


 「戦線という言葉で勘づいた者もいるかもしれないが、すでに、現在デーニアとグラトアニアの間で戦争が始まっている」


 軍服の男の一言にざわめきが広がった。後ろをちらりと見ると、ユウも少し怯えた表情をしているのがわかった。

 …俺はすでに知っていたのでなんともなかったが。


 「そして様々な情報を鑑み、戦闘には向かないタイプの魔法使い(ソーサラー)であるお前達はこれからトラックで戦線から離れた後方都市へ移送され、そこで各自の能力に応じて戦争支援に回ってもらうことになった。詳しい説明に関しては都市に着いた際行われるだろう」


 混乱の広がる中、軍服の男は粛々と説明を続けている。


 「俺からは以上だ。では、各自トラックに―――」


 「待ってください!!」


 遠く、俺から見て右の方で誰かが叫んだ。

 軍服の男はそちらへと目線を移す。


 「それって安全なんですか…?移送されている最中に、グラトアニアの魔法使い(ソーサラー)襲われたりしないんですか!?」


 「様々な事情を鑑みたと言っただろう。心配するな」


 「答えになっていません!!あいつらここを襲撃したんですよ!?完全に俺達魔法使い(ソーサラー)を殺す気じゃないですか!!その状態でここから外に出るって、自殺行為じゃないんですか!?」


 「自分達の強さを甘く見すぎだ。確かにグラトアニアはこちらの魔法使い(ソーサラー)を潰したいだろうが、それには相応のコストがかかる。グラトアニアが魔法資源に乏しい国だと知っているだろう?前線に多数の人員を裂いている今、お前たちをわざわざ襲撃する理由がグラトアニアには無い」


 「……そうかも…しれませんけど」


 「事態は急を要する。納得できないのならお前だけここに残ればいい。…では、各自トラックに乗り込め!」


 その言葉を合図にどこからともなく軍服の人間が数人現れ、そのうちの一人が俺達の列の前に立った。


 「お前達は二番車両だ。案内する、指示に従ってくれ」


 優しい物言いだが、有無を言わさぬ口調。


 どこからどこまでという指定とか無いのかよ。俺はこの二番車両に乗る…ということでいいんだよな?


 混乱している俺を待つことも無く軍服の人間はトラックへと動き出し、それに呼応して俺の前に並んでいた人間も前へと歩き出す。

 置いていかれると不味い気がして、俺も前の人についていった。

 なぜか無性に不安になって後ろに振り向く。


 「…メイ?…どうしたの?」


 「…あぁ、いや、なんでもない」


 そこにはちゃんとユウがいて、少しだけ安心した。

 前を向き直して歩く。


 しばらくして武骨な軍用トラックの前に到着した。近くで見ると思っていた以上に大きい。

 軍服の人間に誘導されてトラックの後ろ側に移動する。


 「では、一人ずつ荷台に乗り込め。詰めて座れよ?」 


 指示に従い、一人ずつ荷台の中へと入っていく。

 前にいた人が次々とそこへ吸い込まれていき、いつのまにか俺の番が来たのでふちに手をかけて荷台へよじ登る。

 中は意外と広々としていて、このトラックに入る人間全員が座れそうなスペースがあった。だが、確かに余裕があるとは言えない。軍服の人間の言う通り、全員が座るには詰めて座る必要がありそうだ。

 なので、俺もちゃんと詰めて座った。今のところは荷台の中の全員がそうしていた。


 「隣だね。よかったぁ…」


 そう言いながら、左隣にユウが座る。俺のすぐ後に荷台に乗り込んだみたいだ。

 

 「俺もほっとしてる。見知ったやつが隣でよかったよ、本当に」


 「…やっぱり、メイも怖い?」


 「この状況がってこと?」


 「うん」


 「そりゃ怖いよ…いや、怖いってより不安だ」


 「…不安なの?」


 「…そう、不安。事態が…なにか大きく動いてるっていうのはわかるんだけど、それが実感できないっていうか…。ちょっと、急に色々起こりすぎてよくわからないっていうか…」

 

 「…そっか」


 「もう…とりあえず寝たい」


 その時、荷台の扉が閉まった。全員がこのトラックに乗り込んだらしい。

 明かりが完全にシャットアウトされ、視界から微かな光さえ消える。近くにいるユウの顔さえ見えないほど真っ暗だ。


 「暗いな。明かりとかないんだ」


 「そうだね~。でも、暗い方が僕はいいな」


 「そう?暗いとちょっと怖くない?」


 「パジャマ姿見られるの恥ずかしいもん」


 「あぁ、確かにそうか」


 ユウはずっと白いパジャマ姿だしな。


 「メイはいいよね、普通の服着てるから。一番最初、僕に会う前に着替えたの?」

 

 「いや、いつも寝るときは外に出る用の服着て寝てるから」


 「そうなの?なんか…汚い」


 「…!?いや、汚くないでしょ!…汚くないでしょ」


 「汚いよ~。寝る時ぐらいパジャマ着なよ~」


 「えぇ~…?」


 洗濯物増えて面倒だろうが…それに外出るときも着替えなくていいから楽だし。甘いなこいつは…。


 …そういえば、ジャベリーとかロゼも普段の服装だったな。二人も寝るとき普段着なんだ。

 いや、もしかしたら残業でもしてたのか?…それは…無いと信じたいけど…。


 「では、出発する!全員掴める場所に掴まれ!」


 荷台の前方から聞こえたその声と共に、あらかじめ吹かされていたエンジンが唸りを上げる。


 「メイ!掴める場所ってどこ!?」


 「後ろ適当に触れば見つかるよ。見つかんなかったら俺の腕にしばらく掴まってな」


 そう言いながら、荷台の側面に走っている金属パイプに手を伸ばす。ここに入る時にあらかじめ確認していたので迷うことはなかった。


 「あ、本当にあった!」


 「よかったよかった」


 すると車体がガタガタと揺れ、体が慣性の力に引っ張られ始める。どうやら出発したみたいだ。

 

 目的地は後方の都市…だったか。

 研究所から外に出るのはこれが初めてだ。


 自分でも驚くことに、意外と胸が高鳴っている。戦争が始まっているにも関わらず…不謹慎極まりないな。

 だがそれと同時に、本当に…もう戻れないんだなと思った。

 あの日々には…もう―――

 

 


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