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異世界なんて嫌いだ  作者: うどんずるずるしたい
第一章 研究所編

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27 崩壊

 扉を開けた先に待っていたのは、ジャベリーと、そして…ロゼだった。


 「あ、うん。さっきぶり」


 ロゼは部屋の中央にある長机の向かい側でパイプ椅子に座っており、その隣にジャベリーが立っている。


 「ロゼも…その、えっと、無事で…良かったよ…」


 「ありがとう、私もメイが無事で良かった。とりあえず椅子に座っていいよ。立ちっぱなしも疲れるでしょう?」


 …俺はこんなにぎこちないのに、ロゼの口調はいつも通りだ。

 促されるままパイプ椅子に座る。蛍光灯の白い光が、視界の端でチカチカと明滅していた。

 どことなく空気が重い。真正面に座るロゼとの距離が、少し遠く感じた。

 

 「…メイは、これから何をするか聞いてる?」


 「え…、大事な話があるって言われて…来たけど…」


 「そっか…そうだね。なら改めて言うけど、今から大事な話をするよ」


 「だ、大事な話って…その、人に聞かれたらダメなくらい大事なの?…だって、わざわざこんなに人気の無いところで…」


 「うん。今からする話は絶対に誰かに話してはいけないよ。よっぽど信頼できる人なら別だけど」


 …え?なんでそんな話なんて…急に…。


 混乱する俺をよそに、ロゼは一呼吸を置いてから静かに口を開いた。


 「今、あなたには国からの要請が来ています。内容は、”ギルグレイズの宝剣”という古代遺物(アーティファクト)を使ってグラトアニアとの戦争に加勢して欲しいというもの」


 …は?


 理解が追い付かない。


 「え…と、その言い方だと…もう、戦争は…起きているの?」


 「うん。すでにグラトアニアの魔法使い(ソーサラー)達が国境を越えて私たちの国に侵攻しているみたい」


 「…わかった」


 そっか…いや、そりゃそうだよな。あんな隕石落としたんだし…。

 

 「状況は、わかったけど…なんで…なんで俺なの?…だって俺、魔法とか…使えないし」


 「ギルグレイズの宝剣は、マナを持つ人間が触れて使おうとすれば必ず命を落としてしまうような古代遺物(アーティファクト)なの。でも、この世界で唯一マナを持たないあなたなら、扱えるかもしれない」


 「え、いや、かもしれない…って、何…?それは、俺だって死ぬかもしれないってことじゃ…ないの?」


 「そのリスクを許容できるくらい、ギルグレイズの宝剣が持つ力は強大なんだよ。もし扱うことができれば、この世界に敵がいなくなるほどに」


 「……あ、そう…」




 …許容ってなに。



 「強制はしない。嫌だというのなら断ってもいい。でも、私からも一言だけ」







 俺の命の心配とかは、ないの?







 「どうか、私達と一緒に戦って欲しい」


 「………」


 


 即答はできなかった。

 ただ、こみ上げる吐き気のような何かを抑えるのに必死だった。

 


 その気持ち悪さも治まって、生唾を飲み込んだ後にようやく、口を開くことができた。


 「聞きたいことが…あるんだ。…ロゼに」


 「なに?」


 「あの時…ロゼが、槍持ってたやつに…襲われたときにさ。ロゼは…魔法を使ったの?」


 


 数秒の、重い沈黙。


 「…そういえば、ジャベリーにも似たようなこと言われたな。メイも見てたんだっけ…そっか」


 「………」


 「使ったよ」


 その瞬間、時間が止まったような気がした。

 頭が真っ白になって、自分の体がまるで抜け殻にでもなったように動かなくなった。

 呼吸も忘れて震える視界でロゼを見つめる。もう、輪郭もよくわからない。


 「どう…して?」


 辛うじて動く口で必死に言葉を吐く。


 「どうして…魔法が使えるの…?」


 「私は瞳だけじゃなくて…掌からも魔法が使えるから」


 「…掌って……え?」


 「このチョーカーで封じられるのは瞳だけ。だから私は掌からならずっと魔法が使えたんだ」


 「…え…え、でも、そのチョーカーを着けてれば…ロゼは魔法が使えない…って…」


 「あれは嘘だよ」


 「……う、嘘…?…僕のこと…だ、騙してたの…?」


 「…そう。でも、私もやりたくてやった訳じゃないけどね」


 なんだよ…それ…


 でも…どうでもいいんだ…そんなこと。




 ロゼが魔法を使えることも、俺のこと騙してたのも、どうでもいい…!!


 「…じゃあ…ロゼは、僕が…初めて会った時からずっと…魔法が使えたの…?」


 「うん」


 「なら…!一つだけ教えてよ…ロゼは…」


 「…」


 「僕に………魔法を使ったことはあるの…?」















 「あると言ったら、あなたはどうするの?」


 「ッ…!!」


 それはもう…答えを言っているのと変わらないじゃないか……。




 なんで…



 …なんで…。



 「…………戦争に加勢してほしいって…言ってたよね。ごめん、僕には無理だ」


 「…わかった」


 「力になれなくて、ごめん」


 「いや、大丈夫だよ。自分を責めなくていい。でも…」


 ロゼが小さく息を吸い込む。


 「残念だな」


 そして、淡々とその言葉を告げた。






 あ”?


 「お前…!!!どの口が言ってんだよ…!!!」


 突然、自分の中のなにかが決壊した。


 「俺のことなんだと思ってるんだ…!!!人間として見てないのか…!?」


 息を吸い込む。


 「心を操られて、無理やり生かされてた可能性だってあるのに…!!挙句の果てにはよく知りもしない国の人間助けろって…!!ふざけるな!!!」


 「メ、メイ君落ち着いて。何もロゼはそこまで――


 「黙れよ!!!ロゼに操られてるかもしれないお前の言うことなんか…!!聞くわけないだろ…!!!」


 「…ごめんなさい、メイ。話が終わったのなら退室してくれない?あまり時間がないの」


 「…!!お前…!!…死ねよ!!お前ら全員戦争で死んじゃえばいいんだ…!!!」


 直後、場が静まり返った。


 その空気に、熱くなっていた俺も我に返る。


 「…ごめん、言い過ぎた。帰るよ」


 そして椅子から立ち上がり、逃げるように部屋から出た。


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