26 渦中
◆◆メイ◆◆
―――メイ、ずっと様子がおかしいよ。何があったの?」
「…別に何もないよ」
「なにもないわけないよ!」
簡易テントの中で隣に座るユウに詰められながら、意味もなくテントの布地を見つめる。
…あれから地下シェルターの広場へと連れていかれ、そこに敷き詰められた簡易テントのうち一つに俺達は押し込まれた。
道中のことはあまり覚えていない。
「…ユウはさ、ロゼのこと、多分あんまり知らないよね」
「え?…なんでロゼさんの名前が出てくるの?」
「…別に」
「またそれじゃん!ねぇ~!はぐらかさないでよ!」
「…だって説明すんのが難しいんだよ。…本当に」
「え~?」
「…うん」
ユウとの会話にも身が入らない。ずっと、思考がぐるぐると回って止まってくれない。
*****
ロゼの額に当たる直前で槍の切っ先が止まっている。そして微動だにしない細身の人間へと、ロゼは手をかざしていた。
すると、ゆっくりと槍の切っ先が地面に向けられる。そして、ロゼと何やら少し話をした後、細身の人間はどこかへ走り去っていった。
*****
このとき何が起こった?
てっきり俺はロゼが魔法を使ったんだと思っていた。だがジャベリーは、まだロゼは魔法を使えないはずだと言っていた。
…考えられるパターンは、正直いくらでもある。情報量が少なすぎるからだ。
だが
最悪かつ、最も現実的なものは一つだけ。
魔法を封印されているはずのロゼが、実は魔法が使―――
「メイ君、ちょっとこっちに来てくれるかい?」
テントの入り口から、俺達をここまで連れてきたあの爽やかな青年が顔を出す。
「はい。なんですか?」
「今から大事な話があるんだ。ついてきて欲しい」
「…わかりました」
言われるがままに立ち上がり、青年のもとへと向かう。
「僕も行く!」
「いや、ユウは多分来ちゃいけないよ」
「そ、そうだね。すぐに帰ってくるから、しばらく待てるかな?」
「…う~。わかった…」
ついて来ようとするユウを抑えて、俺はテントの外に出てどこかへと向かう青年の後ろに続いた。―――
―――さて、到着だ。僕はここで待っているから、メイ君はこの扉の中に入って」
地下シェルターの広場を抜け、廊下を進んだ先、両開きの大きな扉の前で立ちすくむ。
入れと言われても…全く気乗りはしない。
…大事な話ってなんだよ。大勢の人がいる広場からこんなに離れた場所でしないといけないことなのか?もしそうだとしても、なんで俺にそんな話をするんだ?
扉を開くだけなのに、まるで奈落の底へと足を踏み入れるような感覚に襲われる。
足が動かない。
…勿論、わかってはいる。
意外とこういうものは最初が怖いだけで、一歩踏み出せば案外呆気なかったりするものだ。…あの時と同じ。
だから、深呼吸をしてからゆっくりと、だが力強く扉を開けた。
「お、メイく~ん!遅かったね?」
扉を開けた先に待っていたのは、ジャベリーと、そして…
ロゼだった。




