2 チュートリアル開始
瞼の向こうに感じる光に、反射的を目を見開く。白い天井と明かりのついていない蛍光灯が視界に入るのと同時に、自分が意識を取り戻したことを自覚した。
「え?………は?」
あっけに取られて何秒が経過したのだろうか。自分自身が、どうやら病室のベッドに寝かされているようだ、と理解するには十分な時間だったことには違いない。
「なんで………」
混乱する。からっとした空気と布団越しに感じる朗らかな陽光が数分前までの光景とあまりに真逆で、まるで現実じゃないみたいだった。天国なのかもしれないし単に病院に運ばれただけなのかもしれない。だが正直どうでもいい。起き上がって周囲を確認する気も起きない。気分が最悪だからだ。頭が沸騰しているかのようなあの時の感覚がまだ鮮明に体に染みついて離れない。それに、この状況に少し安心している自分にも反吐が出そうだった。
「………」
ただ天井を見つめる。何も考えないようにすれば、多少気分もましになった。
しばらく天井見つめた後目尻についたゴミか何かを払おうとして左手を動かす。その時、ようやく違和感に気づく。
匂いがおかしい。なにか、埃っぽい匂いがする。この空間はかなり清潔だと思うのだが。
体に異常がない。腕、足は自由に動かせるし、脳みそも正常に動いている実感がある。これも多分、おかしい。…あそこまでいったのなら、何か、後遺症が残りはしないのだろうか。首筋に触れても何も跡のようなものもない。これは…いったい…。
その時、ガチャリとドアの開く音が聞こえた。
とっさに布団を上げて顔を隠す。徐々に息が乱れて心拍数が増加していく。家族以外の人間とは二年は会ってない、しゃべったのもいつが最後かわからない。会話なんてしたくない。顔も見られたくない。歯も磨いてないし風呂にも入ってないし髪も切ってないしなんで俺はこんなところにいるんだよふざけんなよ。
近づいてきた複数人分の足音は気づけばもうすぐ横で止まっていた。布のこすれる音が聞こえて、布団がゆっくりとめくられていく。頭の部分が完全に露出し、首を横に倒した俺の目に白衣を着た2人の人間の足が写る。観念して首を捻って目線を上げると、こちらをじっと見つめる一人の医師らしき人間と目が合った。彼は少しの間をおいて口を開き、こう言葉を発した。
「wyurt dt gh kere howe?」
……えぇ?