活動室
無人の活動室から鍵の回る音が聞こえてきた。部室の中には色んな楽器や雑多な音響ケーブルがあり、机の上には空き缶やお菓子も置いてある。
「中にいるのはあたしだけか、ちょっと早すぎたかな」
アガサが活動室に入ってカーテンを開けて陽光を取り込む。待っている間、退屈なのでドラムセットを叩き始めた。
「おお、なんか新鮮な感じだね」 次にボーカルの位置に立ってマイクを手に取り、軽く咳をした。
「みんなー、こんにちは!新曲——『僕の正体は実はゾンビ!Yeah!なんちゃって』」
(もしみんなにあたしが人間じゃないって知られたら、また前みたいになっちゃうもんね...)
その時、足音が聞こえてきて、いいアイデアが浮かんだので急いでロッカーに飛び込んで、外をこっそり見ながら笑う。
(きっと驚くよね)
案の定、二人の女の子がどんどん近づいてきて、ロッカーの中でも会話がはっきり聞こえてきた。
「活動室のドア開いてるけど、中に誰もいないよ」
「もしかしてアガサちゃん先に来てた?買い物にでも行ったのかな」
(今出て驚かせちゃおうかな)
アガサが出ようとした時、女の子の一人が座り込んでため息をついた。
「ねえ、聞いてよ、昨日の合コンうまくいかなかったんだよね...」
「アガサが来なかったからでしょ?だって文化研究部の先輩がどうしてもアガサを誘いたがってたもんね」
「あのさ...アガサちゃんって自分のこと可愛いって思ってたんじゃない?なんかいつも偉そうな感じだし。ああ...超ムカつく」
「だよね」
(.......)
出ようとしていたアガサはすぐに動きを止めてしまった。今出たら友情が壊れちゃうかもしれないから...
「やっぱりアガサちゃんのこと好きだよね?あの先輩」
「絶対そうだよ!だってあの先輩、私たちと話してる時、いつも下品な目でアガサをじっと見てたもん。然もあの時、私、超ミニスカート履いてたのよ!」
「ほーんと最悪だよね...バンドやってたら男子たちにモテると思ってたのに、結局、毎日君たちと遊んでるだけで、前と全然変わらじゃん...ああー!カッコイイ男が欲しい!」
「誰だってあのカッコイイ先輩と付き合いたいしね」
「ああー!全部アガサちゃんのせいだよ、彼女が来なかったせいでさ」
「それよりなんか喉渇いてきたよ、一緒に飲み物買いに行かない?」
「うん、行こう」
そう言って二人は出て行き、ドアも閉められた。アガサは静かにロッカーのドアを開けて出てきた。
「彼女たち、あたしのことをそんな風に思ってたんだ...」
アガサはすごく落ち込んでいるが、どうしたらいいのかわからない。ただ、その場に立ち尽くしているだけだ。
(今練習する気分は全然ないね...帰ろう)
そう思ってアガサが出て行くと、さっき自分を議論していた友達にばったり会ってしまった!疑われないように一生懸命に笑顔を作った。
「ヤホ!」
「アガサちゃん!ああ...いたんだね...」
「あはは、実はあたしも今来たばかりで、驚かそうとしたんだけどバレちゃったみたいだね...」
「あはは...そうなんだ......ええと、午後の三時限目終わったらどこか行かない?海なんてどう?」
「あれ?今日は練習するって言ってなかったっけ?」
「ああ、今日は本当に練習する気分じゃないんだ、色々あってさ」
「そうなんだ...でもごめんね、他の子と午後は約束があるから行けないんだ」
「誰と?」
「秘密〜」