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『ごめんなさい、リリスさま。今日は怪異退治隊の仕事があるから、アガサちゃんを一緒に探しに行けません。頑張ってね』
「サファイアが仕事に行くなんて。しょうがないね…一人で行くしかないか」
リリスはGalaxy Clipperに一番近い大学の門の前に立っていたが、中に入るかどうか確信が持てない。
美しい顔立ちの魔族の少女は目立ちすぎて、周りの人が時々立ち止まって彼女を見ってしまう。
「でも、ここは本当に広いし、人も多い。こんな時は潜行が適してるけど、まずは偵察兵を送り出そう」
その頃、大学の一階の廊下でアガサは友達に背中を叩かれた。
「アガサちゃん!今日の午後は空いてる?どこか遊びに行かない?」
「いいよ、どこに行く?」
遊びに行くと聞いてアガサは少し興奮し、目がキラキラしている。
「ふふん、カラオケだよ。君が来ると思ってたよ。ねえ、聞いて聞いて。隣の文化研究部のかっこいい先輩も来るって!彼のイケメンの友達も見られるかも。どうかな?」
「えっ!?合コンか…それも文化研究部とはな…ごめんね、あたしが行ったらみんなの気を悪くするかも」
アガサは文化研究部を聞いて少し抵抗があって、元々興奮していた表情も一気に落ち着いた。
「そんなことないよ!アガサちゃんがこんなに可愛いのに、行こうよ」
「あはは…」
アガサは明らかに抵抗していたが、友達は彼女の腕を組んで一緒に行くように言った。
その時、二人は足元を黒く光る小さなものが走り抜けるのに気づいた。
「「何々!?」」
「もういやだ!!」
アガサの友達はそれがゴキブリだと気づいてすぐに跳び上がり、タップダンスのように動いた。
「わあー!なんでここにゴキブリがいるの?」
アガサはそのゴキブリを踏みつけようとしているが、相手は非常に敏捷で彼女の靴の下何度も逃げ続ける。
「このゴキブリ、何かおかしい?普段見るのとちょっと違う気がするけど」
怪異退治隊の隊員として、彼女はすぐに何かがおかしいと感じた。
「これはどういうこと!?このゴキブリには魔力の気配がある。手伝って…」
アガサが話し終わる前に、その友達はもう逃げてしまった…
「あっ!」
ゴキブリはすぐに廊下の外に逃げ出し、そこは葉っぱだらけで、すぐに葉っぱの中に消えた。
「あれれ、どこに行ったの?ん?誰!?」
「ふふふ、この私の気配に気づくなんて、褒めてあげる」
「えーと、何をしてるの…」
見上げると、リリスが木に逆さまにぶら下がって降りられず、少し恥ずかしそうだ。
「まずは降ろしてくれない?それにさっき魔力を使いすぎて喉が少し渇いた…ついでに飲み物を一本買ってくれたらいいんだけど、そうだ!黒い炭酸飲料がいいよ」
「要求多いね…」
その後、二人は大学内の公園のベンチに座り、アガサはリリスが飲み物をゴクゴク飲むのを仕方なく見ている。
「あのさ、リリスちゃん、だよね?何か用?」
「わあ、コーラ万歳…もちろん、用があって探してた。ズバリ言うけど、Royal Academyってどうやって入るの?」
「うんー…Royal Academyに入るのはそう簡単じゃないよ。応募して予選を通過して、面接も受けないといけないし。これらは全部公式サイトで見つけられるけど…」
「そうか…」
リリスはコーラの缶をつぶしてゴミ箱に投げたが、少し外れて入らなかった。
「リリスちゃん…何してるのよ。ゴミを捨てちゃダメだよ」
そう言ってゴミを拾いに行ったが、リリスはタイミングが来たと感じた。
「実は、私のバンドを組むつもりなんだ。お前って、ベース弾けるだろ、一緒にバンドを組んで世界を征服しよう」
「それが本当の目的か…でもごめん、もう友達のバンドに入ってるし」
アガサは手を振ってさよならを言った後、振り返って歩き始めた。しかし、リリスが彼女の手首を掴んだ! 振り返ると、リリスは苦しそうな顔をしてお腹を押さえていた。
「ああ…お腹が…この前、お前を救い出すため、人喰い花と戦った時に、あいつのツタに打たれた。もしかしたら毒があったかもしれないぞ…急に全身が辛くて…もう死にそう」
「だ、大丈夫か!リリスちゃん、今すぐ救急車を!」
しかし、リリスは彼女を止まった。
「私のバンドに入れば、もしかしたら楽になるかも…」
「……」
そしてアガサは冷たい目で彼女を見た。
「ごめん、そんなことされると本当に困る。あなたのバンドには入れないから、じゃあ」
去ろうとするアガサに向かって、リリスは突然大声を上げ始めてきた。すぐに周りの人々の注目を集めてしまう。
「ゾンビちゃん!頼むよ!私のバンドに入ってくれ。劣等人間なんて信じられないから、魔物としてお前だけが信頼できるんだ!だから頼む、ゾン…」
周りの人々が足を止めて集まり始めた。慌てたアガサは直接走ってきて、リリスの口を塞ぐ。
「わかった、入ればいいんだろ」
リリスは口を塞がれていたけど、彼女がこっそり笑っているのがはっきり見える。その後、彼女はアガサの手を振り払い、中二病っぽいポーズをする。
「ふふん、それじゃあ、明日の午後五時に魔王城Galaxy Clipperで会おう。遅れるなよ」
「はい……」
―ミアのところで―
ミアはバス停で降りて、緑豊かな小道を歩きながら、すぐにスペイン風の美しい別荘を見つけた。
「本当にきれいだな、この家…」
別荘には手入れの行き届いた庭と、太陽の下でキラキラと輝くプールがある。朝顔が木製のフェンスに沿って伸びていた。
ミアは木製の門を押して中に入り、ドアベルを押した。すると、おしゃれで上品な女性がミアの前に現れた。
「はいはい、あっ、来たのね」
「シェリー、新居に引っ越しておめでとう。差し入れも持ってきたよ」
「そんな、遠慮しないで。私たち、どんな関係だと思ってるの?さあ、入って」
ミアはリビングの椅子に座り、目の前には大きな透明なガラスがあり、外の庭とプールが見える。
「何か飲む?」
「何でもいい」
「またそういうこと言って…」
その後、彼女は紅茶を持ってきて、二人で座る。
「これ、美味しい…」
「そう?良かったわね」
「ところでさ、Royal Academyでの仕事はどう?」
「まあまあかな。あの子たちの初演、どう思う?」
「うん…動画で見たけど、さすがシェリーが担当した子たち、とても優秀」
「そう」
「でも、あの子たちの初演をGalaxy Clipperでやるなんて…あたしをからかってるの?」
「そんなことないわよ。ただ、Galaxy Clipperの知名度を上げたかっただけ」
「一番嫌いなのは、他人の同情で生きることさ」
「昔と相変わらずね…」
しかし、ミアは顔をそむけて、声を小さくした。
「まあ、ひとまず、ありがとう…」
「え?何か言った?」
「別に、お茶を飲もう」
その後、二人はのんびりとした午後の時間を楽しんでいる。しかし、その時、咳の音が聞こえてきて、二人は立ち上がってしまった。
黒い服を着た太った女性が、黒いサングラスと帽子をかぶって、突然リビングのソファに座っていた。
「ああ、ごめんなさい、邪魔した?」
「あなただったのね、お茶を入れましょうか」
その黒い服の女性はシェリーにそれは必要ないと合図する。
「シェリー、今日はミアに用があって来た。先にいって」
シェリーは少し心配そうにして、お茶とお菓子を片付けてキッチンに持って行った。その後、ミアは彼女の向かいに座る。
「ミア、Galaxy Clipperの運営はどう?」
「予想以上に順調。まず、あたしたちの店の知名度が上がっていて、有名なナビゲーション旅行アプリLet’s goの好評率は92%以上。それに、収益面では、会計と話し合って、この数日の収益も予想以上だったし」
「うん、よくやった。それで、二人の魔族少女はどう思う?」
「んー…サファイアなら完璧ね、どんな仕事でもこなせるし。リリスについては…正直、クビにしたい」
「そうか…でも、あの子は怪異現象調査局の重要な観察対象なんだね。これから用事があるから先に行くわよ。Galaxy Clipperの代理店長として、引き続き頑張ってくださいね」
「もちろん、ボス」
その後、シェリーが二人の様子を見に来た。
「ところで、二人とも夕食に食べてくれない?」
「シェリー、結構です。わあ!また消えた…」
気がつくと、その黒い服の女性はもういなかった。