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Ether Jellyfishのメンバーはすぐにステージを離れて準備室に向かう。演奏が終わっても、人々はまだ去らず、何かを期待しているようだ。その時、サファイアは昨夜のアガサを見つけて、人ごみから抜け出し、話しかけていく。
「アガサさん」
「あれ?あたし、自分の名前言ったっけ?」
「これ、昨夜落としたものです」
「あはは、あたしって本当にうっかりさんだね。これを忘れるなんて…あっ!どうだった?さっきのライブ」
「素敵なお返しです」
「うん!そういえば、君たちもうここの店員だよね。ところで、君と友達の名前を教えてくれるかな?」
「私はサファイア。昨夜一緒だったのは魔王リリスです」
「ええ、そうなんだ。え!?魔王?」
アガサの背中に楽器があるのを見て、遠くで見ていたリリスが興味を持つ。
「あの、その背中にある楽器は何ですか?」
「ベースだけど、あまり上手くないさ…アハハ」
サファイアは周りを見渡し、アガサの友達も楽器を持っていることに気づいた。
「バンドやっていますか?」
「周りに楽器を弾く人が多いから、自分もできるかもしれないと思って参加したんだ」
「そうなんですか」
その後、アガサの友達が彼女の名前を呼び、アガサはサファイアに別れを告げた。Royal Academyの新人たちの演奏が終わり、その時点で人々は半分以上去っていた。
「私たちも行こう、サファイア」
「リリス様!?うん」
ここに来たほとんどの客は、Royal Academyの新人を見に来ただけなので、今は店に残っている客は少なく、初日と同じように少し寂しげだ。
ミアにゆかを拭くよう命じられたが、リリスは全くやる気が起きず、のんびりとした動作だった。彼女も少し暇を感じていたのか、突然あくびをして、ミアの前でリラックスして座る。
「ああ…疲れた…ここで休憩しよう」
「仕事しろ」
怠けるリリスをミアは皿で軽く叩こうとしたが、リリスは巧みに避けた!
「ミア、ちょっと待って!」
「待たない」
「ところで、Royal Academyのこと知ってるよね!情報教えろ!」
ミアは驚いた顔をして、からかうようにリリスに話し始めた。
「ええ〜、そんなこと考えてたの?でも、それは無理だよ。君にとっては、夢の中だけの方がいい」
「えっと、何も言ってないけど…」
「でも、あたしが思ってたことと大差ないでしょ。あそこは、君が入りたいと思っても入れる場所じゃないから」
「まあ、確かにそうだけど、簡単に考えてるわけじゃないし…でも、入るのは厳しい?」
ミアはカフェカウンターを整理していたが、しばらく考えた後、口を開いた。
「そうだね、だから諦めた方がいい。入ってもいいことなんてないさ…」
「なんて?なんだかイライラしてるみたいだけど、Royal Academyって何か問題あるの?」
ミアはリリスをにらみつけ、袖をまくり上げて拳で脅する。
「働け…」
「はい、わかりました」
魔王であっても、もう一度全身の骨が砕ける感覚を味わいたくないだろう。リリスは意気揚々と床を拭き始め、すぐにピカピカになった。以前よりもずっと効率的だ!それを見てミアは微笑んだ。
「うん、いい従業員だね」
「くそ…力が戻ったらお前なんて…覚えとけ!」
「ええ〜待っていますよ、魔王様〜」
やがて夕暮れが訪れ、仕事が終わった!リリスのエネルギーも尽きて、液体になってしまう。サファイアはそれを見て急いでコーラを取り出した。
「どうぞ、リリス様!」
リリスは急いでコーラを飲み干し、一瞬で復活した。その後、威勢よく空き缶をつぶしてゆかに投げ捨てた。
「ふふん、体の中で力が湧いてくる!」
そして、彼女はスカートをたたき、客用のソファに座って足を組む。
「サファイア、今は魔王軍の会議の時間だぞ。今日の成果を報告しろ」
サファイアはすぐに真剣な態度で立ち、リリスと遊んでいるようには見えないが。
「はい、リリス様。今日の仕事はとても順調で、ミアからもらったお菓子も食べました。あ!それと今日はとても楽しかったです」
「サファイア…それが重要じゃないでしょ。ゾンビの女の子を拷問するように言ったんじゃないか…」
「あっ、そうでしたね。アガサちゃんの情報が欲しいんでしょ」
「そう、早く理解してくれてありがとうな。え?アガサちゃん?」
リリスは『ええ、もうそんなに仲良くなったの?』という驚きの表情を浮かべる。
「覚えてる限りでは、彼女は近くの大学に通っていて、友達も多いみたい。そして一番好きなのは猫で…後はこの店のお菓子も好きみたいだし」
「それってあまり役に立つ情報じゃないみたいね…でも、近くの大学に通ってるなら、見つけるのは簡単だろうね。やっぱり明日自ら拷問した方がいいかも」
「わかった!リリス様は彼女と遊びたいでしょう」
「そんなわけないだろ!真剣な仕事なの!」
「はいはい」
一日中忙しかったミアがキッチンから出てきて、二人を見ながらこっそり笑っている。それにリリスは少し不機嫌になった。
「ええ、何々。魔王軍の会議だなんて、可愛すぎるだろ」
「たかが人間のくせに、生意気だ!」
「ん!?」
ミアは、くしゃくしゃになったコーラ缶がきれいな床に投げ捨てられたのを見て、元々リラックスしていた表情が一変して怒った。
「生意気な奴は貴様だろ!」
ミアは座っているリリスを高く持ち上げ、彼女に原爆固定をかけた!無人の喫茶店で脊椎が折れるような清らかな音が聞こえる…
「リリス様…」
サファイアは怒り狂った店長に怯えて、リリスを助けることができずにいた。
その時、ドアベルが鳴り、新しい客が来たようだった。
彼女は慎重にドアを開けて中にじっと見ている。その子は黒いショートヘアで、眼鏡をかけてとても賢そうに見える。
サファイアは急いでその客に声をかけていく。
「ここはレスリング場じゃないですよね…すみません、邪魔をしてしまったようです」
「あはは…すみません、このお客様…恥ずかしいところを見せてしまいました。ちょうど閉店時間なので、明日また来てください」
「そうですか…今日も食べられなかったか…あ!レスリングを続けてください」
その女の子はそう言って店を出て行った。ミアはようやくリリスを放した。
「あの子、昨夜も見かけたな」
「知り合いか…」
「違うよ」
「じゃあ、早く私の上からどいてよ!」
その後、リリスとミアはそれぞれ服のほこりを払い、服を整えた。そしてミアはサファイアにも声をかける。
「明日はちょっと用事があるから、来なくていいよ」
「ええ!?ミア!私たちのことはもう要らないの?もしかしてクビになったの!?」
「サファイア…落ち着いて。ただ友達の家に行くだけだ。お前たちも大変だったから、明日はゆっくり休んで」
「そうなんですか…」
サファイアはようやく安心した。でもリリスは聞いて喜び、中二病のようなポーズをする。
「ふんふん、明日は魔王軍が出動する日だ、楽しみだな」
しかし、ミアに頭を叩かれた。
「帰るなら、ゴミを捨ててきて。あと、空き缶も忘れずに」
「はい…」