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駅の近く、公園では鳥がさえずっている。日差しが明るく、雲一つないいい天気。
運動服を着た白髪の女の子とおしゃれなピンク色の髪の女の子が一緒に歩道を歩く。
あちこち見回しながら、駅の近くの店を探しているけど、あのライブハウスは一体どこにあるんだろうな。
「リリス様、手紙によってあのライブハウスはこの辺りにあるはずですよね?」
「うん、近くに探してみよう」
「見て!あれがあの店じゃないですか?」
サファイアが指さしたその店は、外観にエスエフな要素があって、暗い色が主題のサイバーパンクなスタイルで一目で忘れられない感じがする。
でもまだ開店していないから、電気もついていないし、玄関にはお祝いの花輪がいろいろ置いている。
二人は店の外でしばらくうろうろしてみたけど、ドアは開いていない。
「リリス様、ドアに鍵がかかっていますね。もしかして誰もいないかしら」
「大家のやつ、ふざけてんの。昼に来るように言ったのに…」
「もしかしたら時間を間違えたのかもしれませんよ?」
「待って、もう準備してたんだ。見ろ!この鍵をこじ開ければ入れるじゃん。アパートの鍵を忘れたときはいつもヘアピンで開けてる」
「いいアイデアですね!さすがリリス様!」
「へへ~まあね、私が本気を出せばこんな程度の鍵なんて問題なし」
リリスは言って本当に鍵をこじ開け始めた。
サファイアは隣で熱心に鍵をこじ開けるリリス様を見ていて、汗をかいた彼女に時々両手で扇いで涼しくしてあげる。
気づかないうちに人だかりができていて、みんなこの二人の女の子を見ている。中には携帯で写真を撮ったり、話し合ったりしている人もいるし。
「リリス様…みんななんで私たちを見てるんですか?本当に失礼だわね」
「あの下賎なやつらは鍵がなくて入れない苦しみなんてわからないんだよ。くそ、もう!この鍵は意外と手強いな…」
そのとき、青白い服を着た人が二人の後ろに現れる。
彼はリリスの肩を叩いたが、彼女はとてもイライラしていて、力いっぱい男の手を振り払って、怒って彼に向かって叫んだ。
「ああ!バカかお前!私が忙しいって見えねえのかよ!」
「うん、忙しそうだね、でもやっぱりあなたたち二人と一緒に来てもらおうか」
「ああ、貴様何者だ、魔王である私にそんな口をきくとは。痛い!何をするんだ!」
警察官は関節技でリリスをしっかりと捕まえて、彼女は全く抵抗できない。一方、サファイアは様子を見てすぐに戦闘態勢に入った。
「失礼な奴め!早くリリス様を放して!」
しかし、そのとき、サファイアは後ろから頭を強く叩かれてその場に倒れた。
黒髪でかっこいい冷たい感じの大人のお姉さんがリリスと警察官の前に現れていた。彼女は髪を結んでいて、耳には金属のピアスがいっぱいついていて、腕には黒いタトゥーがある。
「すみません、この二人のバカは私の店員なんですが…どうかお手柔らかにお願いします」
「え?これがあなたの店員?あなたはこの店の店長なの?」
「ええ、そうなんです、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません、これからは私が対処しますから」
「ああ、そうなんだ」
ところがリリスはまだもがいているけど、なんと警察官の拘束を振り切って逃げ出してしまった。
「くそっ!これでお前たち二人に見せてやる、死ね…うわあー!」
リリスはお姉さんに首を絞められて息ができなくなり、サファイアと同じように倒れてしまった。
どれくらい経ったかわからないが、リリスはソファーの上で目を覚ました。ふかふかのソファーは彼女に起き上がる気がなくさせた。
「誰⁉誰がいる!」
「お前ら本当に面倒を起こすね」
冷たくてかっこいいお姉さんは足を組んで、冷ややかに彼女を見ている。
「リリス様…気をつけて!あれ⁉ここは?」
「目が覚めたなら始められるね。あたしこの店の店長、ミア。そしてこの新しくできたライブハウスはGalaxy Clipperという名前だ。ちゃんと覚えとけ」
「「ああ…」」
二人は大家の手紙にはこの店の名前が書いてあると思い出した。
ここが彼らの目的地だったのだ!サファイアは周りを見回してしばらく考えていた。
「あれ?でもここはカフェみたいですね?」
「そうだ、最近のライブハウスはみんなこんな感じだ。そしてお前たちはここで働く奴らだろ?」
サファイアはきちんと座って素直になったが、リリスはミアにつられて足を組んだ。
「ああ、喉が渇いた、お酒があればいいよな」
「それはね、リリス様、ここは一応カフェなんですけど…」
「どうしてカフェにお酒がないの?カッコ悪い……わああー!」
リリスはミアに頭を掴まれて、頭蓋骨がパキパキと音を立てて砕けるのが聞こえてきて、人のないカフェではその音が特に大きく響いた。
ミアはサファイアをじっと見つめて、彼女を動けなくさせた。
「お前たち二人、よく聞いておきな。ここではあたしがボス。あたしの命令と指示に絶対に従わなければならない。わかったか?」
「あ、はい…」
「よし…」
リリスは下ろされたが、彼女自身はもうダメで目を覚まさなかった。サファイアはその光景を見て足が震えて、泣きそうな顔をしている。
「お前たちの名前は知ったけど、一応自己紹介をしようか」
「私はサファイアと申しますが、魔王様のお名前はリリスです」
「じゃあ、ついてこい、魔族の女の子たち」
「え?」
「何をぼんやりしてるの?一緒に制服を取りに行こう。それに制服をもらったら、この店を見て回せてあげる」
「あ、はい!リリス様、早く起きて!」
最後に二人ともおしゃれでかわいいメイド服を着た。身につけている機械のような小物はメイド服とここの雰囲気が合わないのを防ぐ。
「あー、本当に可愛いよ、店長さん!」
サファイアはスカートの裾をつまんで一回転して可愛いスカートがひらひらと舞った。
「うん、いいぞ、二人ともめちゃいいよ。サイズはどう?ピッタリ? 」
「ピッタリよ」
「そりゃ良かった。じゃあ、あっちの厨二病ガキは?サイズはどう」
リリスはやっと我に返った。今の彼女は自分もメイド服を着ていることに気づいた。
「わあ、これは何?魔王としての私が……こんな服を着るなんて、ところでスカートが短すぎるだろ!めちゃ恥ずかしいけど…」
「リリス様、本当に可愛いですね!早く撮らなきゃ!」
「サファイア…やめろ!」
その時ミアが黒板を強く叩いて、彼女たちに注意を向けさせた。
「今夜五時から営業するから、まだ時間はあるし。さっきライブハウスの中を案内したでしょ、その後は最短でお客さんの接客の仕方を覚えて、メニューも覚えてね」
「え?何の案内?」
店長はリリスに返事をせず黒板に書かれた挨拶の言葉を指差す。
でもミアは二人を見回して、何か考えているようだ。
「ところで、お前たちはバイトや接客の経験がある?」
サファイアは大人しく手を挙げる。
「私はバイトの経験があります。家計があるから」
「へえええ、じゃあお前は?」
「ふんふん~もちろん一度もない!」
「一度もないのになんでそんなに自信があるかよ…」
その時カフェの中にお腹が空いた音が聞こえてきて二人は顔を赤くして同時に目を合わせた。
ミアはため息をついて、二人を一緒にキッチンに連れて行った。中は熱気が立っていて、スタッフが食材を準備していた。
その後ミアは冷めたパンを温めてテーブルに置く。
「お腹が空いていたら仕事もできないでしょ、残っていたパンと牛乳を食べな」
「ありがとうございます、店長さん!食べ物をくれて」
「あなた様は本当にいい人です!魔王としてこの恩は忘れません!」
彼女は苦笑しながら二人が嬉しそうに食べるのを見ている。
「この店はどう思う?」
「「すごい!かっこいい!!」」
「へぇー,そうか。この店は飲食店だけじゃなくて、夢がいっぱいの店だよ。ここに来るお客さんの心も体も癒されるようにしたいんだ、お前たちはあたしと一緒に頑張ってくれる?」
「「やります!」」
「いいね、じゃあ食べ終わったら出ようか」
みんながキッチンから出ると、店の中の照明が一瞬で全部ついた。黄色やピンクや青や白の色が素敵な景色を作った。
「おお、見て!リリス様。かっこいいね!」
「うん」
ちょうどドアのベルも鳴って、この店の最初のお客さんが来たみたいだ。
ミアは黒板を取って隠していた。
「よし、これからは実践だ。楽しみにしてるよ」