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 サファイアはリリスの頭を撫でて、なぐさめている。

「あの、リリス様、何かショックを受けたんですか?」

「そうだよ、生活という名のショックだ。ねぇ、いくら言っても私は魔王だろ、でも魔王という肩書きだけじゃ足りないんだよ」

「うん、そうですね。でも私たちはどうやって復興するんですか?ひょっとして世界中に戦争を仕掛けて征服するんですか?」

「ふん!そりゃ当然だもん、暴力はいいことではないけど、一番直接的な方法だよ。だから世界中に私の恐怖と権威を知らしめて、世界を私の足元にひれ伏させる!」

「はいはい、じゃあ片付けを続けますね、リリス様も部屋をきちんと片付けてくださいね、私はあとで仕事がありますから」

「えー、やりたくないなぁ……」


 サファイアは興味がなさそうに、皿洗いと部屋の片付けを続けてくる。一方リリスは床に寝転がって、ギターの楽譜を見たりハミングしたりしてする。

 そのとき彼女は何かを思い出したように座り直す。


「信者と強力な部下が十分にいれば、魔王軍を拡大できるし、それによって実力を増して世界を支配できる!」

「リリス様はいいことを言っていますね、でも信者と部下はそう簡単に見つかりませんわよ」

「まあまあ、何とかなるさ」

「リリス様!部屋を掃除するように言ったじゃないですか!何をしているんですか?」

「あはは……」


 サファイアが言い終わると、リリスはようやく本気で掃除を始めた。

 でも彼女が部屋のゴミ袋を持ち上げたとき、漆黒に近い茶色のものが現れた。

 毛の生えた六本の足と長い二本の触手と油っぽい光沢のある翼を持つ、モザイクで覆われた生き物だ!リリスは驚いて飛び上がった。


「わあ!これは!」

「ん?どうしましたか?いやあっー⁉」


 その気持ち悪い生き物には冷静で大人なサファイアも悲鳴を上げてしまった。

 その生き物はとても速くリリスの足元に向かって走ってきて影に従って安全を求めているようだ。

 リリスは本や手元のものをその真っ黒な姿に向かって投げたが、相手は隙を見せずとても速く避けた。


「いや!リリス様早く何とかして!」

「おい!落ち着けサファイア、つーか物を適当に投げないでよ、私に当たるじゃないか!」


 そいつは安全じゃないと思ってキッチンに走っていった。それはサファイアの方だ。

 サファイアは仕方なくキッチンのテーブルに飛び乗って、物を投げ続ける。


「やだやだやだ、リリス様早く殺して!何でもいいから!」

「くっ!落ち着けって言ってただろ……くそ!本当はこいつに魔力を使いたくないな」


 あいつはサファイアに当たって、またリリスの方に戻ってくる。でも彼女はもう準備ができていた。

 今のリリスは右の頬を左手で触って、全身に魔力が流れる。

 彼女は腕を振って、厳粛にその生き物に話しかける。


「魔王リリスがここで命じる。貴様は死ね!」


 突然黒い生物が理解したかのように止まってじっとしてる。後は触手でリリスに敬礼して前足で自分の首をねじ切った。

 でも体はまだ動いているけど……

 リリスが靴でとどめを刺すと、やっと騒動は終わった。


「はあ、やっと……」

「うわぁ、床があいつの血と残骸でいっぱい……ねえ、サファイアお前は魔族でしょ、未熟すぎるんだ。取るに足らない生物なんて恐れるに値しねえよ。それにあいつに対して上級幻術absolute orderと私の高貴な魔力を使ったなんて、あいつは豪華に死んだね……」

「本当にすみません、こいう生物に全く抵抗力がありませんでした……」

「ふふ~、いいよ、寛大だから、お前の罪を許してあげる」

「うん、本当にありがとうございます、リリス様」


 そのときドアベルが鳴り始めていてしかも頻繁に押されてチリンチリンという音が心を落ち着かせない。

 二人も異変に気づいて、顔を見合わせる。


「リリス様、もしかして怪しい宗教の勧誘の奴らかもしれませんね、追い払ってくれませんか?罪滅ぼしに、ゴキブリの死体は私が処理しますから」

「ええ、めんどくさいな」

「じゃああなたがゴキブリの死体を処理しますか?」

「はい!今来ます!」


 リリスは仕方なく頭をかいてどこの野郎が魔王の復興計画を邪魔しに来たのか見に行く。


「なんか変なサービスを売り込みに来た奴みたいな気がするな」 しかしリリスがドアスコープを覗いたとたん、びっくりして飛び上がった。足がふらついて立っていられなくなって、慌てて後退する。

 サファイアは急いでリリスを支えてきた。彼女の顔は恐ろしい光景を見たかのように言葉にならなかった。


「あの?リリス様。なんでそんなに怖がってるの……」

「サファイア、今日は何の日か知ってるか……」

「え?」


 そのときドアベルが止まった。サファイアは唾を飲み込んで、立ち上がってドアスコープを覗いたけど、外には何もなかった。


「リリス様、さっきあなたは……何を見ました……」

「黒い服の太った女……」

「え!大家さん!」


 ドアが開かれると、大家さんが入ってきた。彼女はサングラスを直して、黒いバッグを持っていて黒いハイヒールで木の板に音を立てながら歩いた。

 二人は恐怖に顔でゆっくりと後退する。

 サファイアは何かを悟ったように、大家さんが口を開く前に、床にひざまずいて懇願した。しかもリリスも一緒に引っ張った。


「大家さん!どうかお手柔らかにお願いします、給料はもうすぐ振り込まれますから、必ずお金を返します!だから、どうか……」

「私もお願いします!私たちを許してください!」


 大家さんは何も言わずに、バッグから手紙を取り出して床に投げた。二人は顔を見合わせて、少し驚いた。


「これはあなたたち二人に紹介した仕事。もちろんこの仕事は断る権利はない。もし行って働いたら、二ヶ月分の家賃は払わなくて大丈夫。じゃあ」


 そう言って彼女は部屋の中のギターを一瞥してリリスは急いで謝った。


「ああ!大家さん、次は絶対に近所に迷惑をかけませんから、安心して……」

「……」


 でも返事はなく、その後さっと古びた部屋を出て行った。

 前の教訓から、リリスは本で手紙に触る。

 まるで爆弾のように扱って顔の汗を拭いても、心は落ち着かない。


「やっぱりあの大家さんがくれたものだから、油断できないよ、サファイア」

「はい!」

「だからさ、その手紙を開いてよ~」

「え⁉ずるい!」

「ずるい?これは魔王の命令だぞ!わかるか?王が動いたら、部下はもう負けたということだ!」

「わかりました……」


 サファイアは慎重に近づいて、試しに触ってみた。中身は普通の手紙のようだけど。


「何が書いてあるの?」

「リリス様、遠すぎて聞こえないでしょう」

「すまん、念のために距離を置いてるだけだ。で、その内容は?」

「どうやらあるライブハウスでバイトすることについてらしい……住所もありますよ」

「はぁ?」

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