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 人間界の暗い隅にある古びたアパートがある。屋根の鉄板は錆びているし、古いアンテナもあるし、フェンスも風で飛ばされそうだ。

 あんなボロボロのアパートが誰かに貸しているとは思えない。

 その古びたアパートの中で、204と書かれた一人部屋から騒ぎ声が聞こえる。


 美しい白髪の女の子が低い食卓の近くに座って隣にご飯を運んできたピンク髪の巨乳の女の子に驚いている。まあ、白髪の女の子の胸も小さくないけど。

 二人の頭にはとても可愛い角が生えていて、白髪の女の子は上に曲がった細い角を持ち、淡い赤髪の女の子は前に曲がった角を持つ。

 淡い赤髪の女の子は白髪の女の子に騎士礼をする。


「リリス様、お食事の時間です」

「わあ!今日のご飯はすごく豪華だね、こんなにいいもの食べたの久しぶりだよ」

「給料出たら、もっといいもの食べられますし」

「ふふ、楽しみだね」


 低い食卓には大きなボウルに入ったご飯が置いてある。そう、ただご飯だけだ。

 それだけで食べるのはちょっと貧乏くさい?リリスもおかずの問題に気づいたようだ。


「サファイア、見て!これ忘れるなよ」

「ああ、まさか残ってるんですね。でもこれってちょっと贅沢ではない?リリス様」

「え?そう思わないけど。さあ、一緒に食べよう」


 言って、リリスは残り少ない歯磨き粉を絞り出していい香りのイチゴ味が出てきた!

 歯磨き粉はすんなりとご飯に落ちた。そうだ!これはイチゴ味のご飯だぞ!

 こんなに贅沢な日が来るとは思わなかったのだろう、リリスの手は少し震えている。


「やばいよ…絞りすぎたかな…もったいない気がするし…」

「いやいやいや、多分大丈夫だと思いますよ。あ!思い出しました、リリス様。あの歯磨き粉はそろそろ賞味期限が切れるんですから」

「あー、そうだったか…」


 リリスはこの子にこすりつけて顔には惜しみが溢れている。

 だって…だってこれはとても大切なおかずだから…

 コンビニで安売りされていた賞味期限間近の歯磨き粉だけど、一ヶ月も一緒に過ごしたもんね…

 だからこそ愛着と惜しみを生まれてしまう。

 リリスはご飯を食べるのをやめて、歯磨き粉に最後の別れを告げて。


「リリス様、なぜお箸を動かさないのですか、ご飯が冷めますわよ」

「ああ、ごめんね…ちょっと惜しんでいただけだ。やっぱりこれは一ヶ月も一緒にいたから、食卓で起こったことを思い出してしまう。ここに来たばかりの時はこの子に頼むしかないからさ」

「リリス様…」

「さあー、一緒にさよならしよう」


 二人は静かに歯磨き粉の管を見つめて手を合わせて黙祷して歯磨き粉に最後の別れを告げる。

 その時リリスは立ち上がって二つのコップを持ってきた。

 サファイアはコップの中に葉っぱのようなものが混ざっているのに気づいた。


「サファイア、どうぞ。これはレモンの葉を浸した水だよ。レモンの葉にはビタミンがたくさん入ってるから、魔族の私たちでも体にいいんだよ。あ!それにレモンの葉を浸した水もおいしいし」

「リリス様⁉どこでレモンの葉を摘んだのですか?私の知る限り、隣人にしかレモンの木がないのですが…」

「ああ、それは夜中にこっそり隣人の庭に忍び込んで摘んだの。へへ~今回はたくさん摘んだから、しばらく飲めるよ」

「隣人がレモンの木の栄養不足に文句を言っているのも無理ないな……リリス様、次回は気をつけてくださいね、隣人に見つからないように」

「大丈夫、魔王だぞ!物資を合理的に徴収するだけだ。レモンの木は樹皮が傷まなければ死なないし、葉っぱはいずれ落ちるものだから、たまたま落ちるときに摘んだだけだよ」

「リリス様は正しいことを言っていますね……でも!リリス様、ちょっとずるいんじゃないですか!あなたの半分のご飯にはちょっと多めに歯磨き粉をかけたんじゃないですか!」

「サファイア、食べ過ぎると太っちゃうよ、それにお前の胸が栄養過剰だ!」

「リリス様に言われる筋合いはないでしょう!」


 二人は立ち上がってイチゴ味のご飯を奪い合っている。

 普段は一杯のご飯を二人で半分こにしているのに、今日はリリスがいつもより多く歯磨き粉を自分のご飯に絞り出した。これは部下をいじめる行為だぞ!サファイアは部下として彼女の不良行為を指摘しなければならない。

 しかしリリス様はかなり頑固でサファイアは涙を飲んで諦めた。

 でも彼女は何かを思いついたようで、ぼろぼろのバッグから小さい箱を取り出す。

 その後サファイアはリリスにハンバーガーの箱を差し出した。


「リリス様、ちょうど一つの貢物をお捧げしますわ」

「おお~、楽しみだぞ、サファイア」


 サファイアは箱を開けて中には少し残ったポテトが入ってる。


「サファイア!貴様!私の背中を向いてこんなにいいものを食べていたのか。許せない!」

「これは私が食べ残したものではありません。通りかかったときに、女子高生が遊んでいる隙に借りたものです。次回は返すかもしれませんけど……」

「いいよ、もう許してあげる、サファイア。これは大功だ!魔王リリスの名において、今ここにお前を魔王軍大将軍に任命する!」

「感謝しております、リリス様」


 言い終わるとリリスは本当に定規を取り出してサファイアの肩に軽く置いて、めちゃ威厳と厳粛さを持つ。

 こんなに複雑な儀式を行った後、二人は手を合わせてご飯を食べる準備をした。


「リリス様、ご飯を食べるときはちゃんといただきますと言ってくださいね」

「はいはい」


 二人はそれぞれの箸でポテトをつまんでイチゴ味の歯磨き粉につけて、美味しくご飯を食べた後、幸せと平穏な表情を浮かべている。

 二人にとってはこの月で一番素晴らしい日だと思ってるかもしれない。

 そしてレモンの葉で淹れたお茶を一気に飲み干す。

 二人の表情はさわやかで満足して、レモンの酸味に溶け込んだように身体が溶けちゃうそうだ。


「本当に美味しいわね、レモンの葉のお茶。リリス様も頑張りましたね」

「そうだよ、この葉っぱを手に入れるのはすごく大変だったよ。特にあの庭に入るときには怖い犬がいたし……」

「リリス様……あとは私が片付けますから、じっくり休んでください」

「言わなくてもお前に片付けさせるつもりよ」


 リリスは心から満足してゆかに横になってる。

 周りにはギターとスピーカーとノートパソコン以外にほとんど何もないし、でも彼女は突然何かを思い出したように飛び起きて大声で叫んだ!洗い物をしているサファイアを驚かせる。


「ど、どうしましたか、リリス様?なんで急に大声で?」

「サファイア……私たちは忘れていたことがあるんだ……とても大事なことだ!」

「え?ああ、もしかして昨日の黒いやつをまた見ました?」

「えっ、それも大問題だけど、今の問題とは比べ物にならないくらいだよ……」


 サファイアは首を傾げて不思議に思って仕方なく洗い物をやめてリリス様に尋ねる。

 まあ、洗うものは一つの皿と二膳の箸だけだけどね。

 彼女は真剣な顔でサファイアを見つめて、指をさした。


「私!魔王としての地位を取り戻すんだ!」

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