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四話 謎の自動販売機


 四話 謎の自動販売機



 三階の食堂兼会議室で昼食をとっている月夜のところに、忍がやって来て隣の席に腰を下ろす。そして、月夜の食事をチラリと見るとテーブルに自分が持ってきたお弁当を広げた。


「忍くん 席たくさん空いてるじゃないか なんで、わざわざここに? 」


「一年後にチーフを殺す為に、チーフの癖や弱点を探る為ですよ 」


 恐ろしい事をさらっと言ってのける忍だったが、その広げたお弁当は可愛いものだった。


「その、タコさんウインナ、一つくれないか 」


 つい月夜は、了解をもらう前に摘まんでしまっていた。そして、タコさんウインナを口に放り込んだ時、凄まじい殺気に気付く。


「一年後じゃなく 今この場で殺していいですか 」


 バックに、ゴゴゴゴッという効果音が聞こえそうな雰囲気で忍が呟く。


「あっ いや、ごめん お詫びに僕のこれあげるから 」


 月夜は自分の弁当箱から、小さなお団子のようなものを忍に渡した。


「今時、兵糧丸ですか 私も小さい頃は食べていましたが 」


「何を言うんだ、忍くん 忍者にはこれが一番だ 」


 そう言いながら月夜は兵糧丸をポンポンと口に入れる。


「確かに”忍者めし”としては効果効能、知名度としても一番ですが、現代の食文化を考えるとナンセンスです 何事も時代とともに変わっていかなければなりません 」


「うーん…… 忍くん、君と話していると色々と勉強になるな でも、変わってはいけないもの、変わらずにいるものもあるとは思わないか 」


「うっ…… それは、変わらずにいてほしいものはありますね 私の希望ですが 」


 忍は、残ったタコさんウインナを月夜に奪われる前にパクパクと口に入れてしまう。それを月夜は悲しげに眺めていた。もう一つくらい食べたかったのに……。



 * * *



 月夜が忍と一緒に二階の自分のデスクに戻ると、二人で何やら話していた睦美と寅之助が寄ってきた。


「チーフ、ちょっといいですか 」


 なぜか声を潜めて睦美が月夜に話しかける。


「な、なんだい? 」


 思わず月夜の声も小さくなった。隣で忍も耳を澄ませている。


「私の帰り道に突然、不気味な自動販売機が設置されたんですよぉ 」


「不気味な自販機? 」


「そうなんです 家への近道で自転車も通れない細い山道を歩くんですが…… 」


 さらに睦美は声を潜める。睦美、寅之助、月夜、忍が頭を突き合わせて事務所の中で会話している光景を目撃した他の社員は、見てはいけないものを見てしまったかのように目を伏せ、何も見なかったというように通り過ぎた。


「その山道、街灯もなくて夜は誰も通らない怖い道なんですよ 」


 そんな道を近道とはいえ君はなぜ通るんだ、と突っ込みたい月夜と忍だったが何も言わず聞くことに専念する。


「その山道の途中にポツンと自販機が設置されたんです 真っ黒で赤い線と黄色い線が入った自販機で売っていたのは…… 」


 睦美はそこで言葉を区切り、三人の顔を見回す。続きを待つ三人の顔を見ながら睦美は何も言わず何かを待っているようだ。あーっ、何を売ってたか当ててほしいんだ。睦美の気持ちを察した三人は心得てるとばかりに口を開く。


「なんか、へんてこなジュースなんじゃないの 」


「ブーッ 」


 睦美が嬉しそうにダメ出しをする。


「いや、案外売ってるものは極普通のものなんじゃないか 例えば納豆や豆腐とか 」


 それが普通のものなのか疑問ではあるが外れだった為、睦美は力強く”ブーッ”と言った。


「まったく そんなところで販売するものは決まっているじゃないですか 大人のお〇ちゃですよ バイ〇とか…… 」


「し、忍くん 君は昼間から何言ってるんだ わきまえなさい 」


「ぶぅぅーっ 」


 月夜と睦美が同時に口を開き、寅之助は目を丸くして唖然と忍を見つめていた。


「みなさん、外れです 」


 睦美はしてやったりという顔で三人を見回す。


「答えは今夜、私と一緒に見に来て下さい 」


「えーっ だるいじゃないか 別に今ここで言えばいいだろ 」


 寅之助が不満を述べる。


「だーめ 現地で見た方がインパクトあるから 」


「僕は別に行っても構わないよ 」


「私も良いですよ 」


 二人が賛成した為、寅之助も不承不承了解した。


「じゃあ 今日はみなさん、さっさと帰りましょうね 」


「さっさはいいけど、仕事はきっちりな 」


 一応上司である月夜が釘を刺す。


 五時に終業のチャイムが鳴る頃には、睦美以外の三人はすっかりその事を忘れていた。睦美に、行きますよと急かされようやく思い出した三人は慌てて仕事を片付け会社をあとにしたのは六時前だった。


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