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十八話 ツーリングに行こう4


 十八話 ツーリングに行こう4



 睦美たちとわいわい話していた月夜の耳に、何やら物騒な会話が入ってきた。


・・・チーフ ・・・


 忍も気付いたようだが、睦美、寅之助、トビも気付いたようで声の聞こえる辺りを見ていたかと思うと、ダッと走り出した。カトリーヌも遅れず付いて行く。すると、家族連れに絡んでいる、ガラの悪そうな男の姿が見えた。小さな子供が殴り倒され泣き出した。


「とら どうするの? 」


「決まってる ぶっ飛ばす あのパパさんの方にいる奴がリーダーっぽいからそっちからだ 」


「じゃあ、僕とカトリーヌは子供とママさんの方に行きます 」


 へっと睦美と寅之助が振り向くと、カトリーヌもシュタタタとつぶらな瞳で走っていた。ひぃーっ。睦美と寅之助は恐怖でカトリーヌから逃げるように走る速度を上げ、金田を脅している男の前に立ち塞がった。


「ちょっと あんたたち何やってんの 」


 睦美が腰に手を当て男を睨み付ける。


「これは綺麗な姉ちゃんだ おい、こいつもさらってやっちまおうぜ 」


「はぁ あんたたち、ばかぁ あんたたちみたいな糞とやるくらいならパンダとやった方がましだわ 」


「威勢のいい姉ちゃんだ まあこれから後悔して泣く事になるがな 」


 男がナイフを睦美に向け下品な笑いをする。その睦美の前に寅之助が両手の指をバキバキ鳴らしながら出てきた。


「おっさん そんなものを持ってるって事は万が一殺されても文句は言えないよな 」


「また威勢のいい馬鹿が出てきやがった てめえみたいな若造に用はねえ さっさと殺してやるよ おいっ 」


 男が声をかけると白いミニバンのスライドドアが開き、中からぞろぞろと5人の男が出てきた。まだこんなにいたのかよと、さすがに寅之助が怯んだ時、月夜と忍が出てきた男たちの前に立ち塞がり、寅之助に心配するなと手を上げる。何故か寅之助も月夜たちなら、あんな男くらい問題ないと本能で感じていた。


「おっ、また可愛い女が一人 お前ら、その女さらって車に積んどけ、多少痛めつけるのはいいが手は出すなよ 俺が一番にやる 」


 が、男の命令に出てきた男たちは反応しない。それどころか5人全員へなへなと腰を落とし座り込んでしまい、さらには失禁してしまっていた。男たちの股間が濡れ道路に染みが広がっていく。

 5人の男は月夜と忍の目を見た瞬間、心臓を鷲掴みにされたような圧倒的な恐怖感に捕らわれ声も出せなくなっていた。目の前にいるのは人間のようで人間ではない、死神か悪魔にしか見えなかった。眉一つ動かさず人の命を簡単に奪う。もはや自分たちの命は、この男女二人の死神に握られている。男たちは涙を流し許しを乞うように頭を抱え震えて丸くなっていた。その男たちに忍がゆっくりと近付いていき一人の男の前で足を上げる。そして、軽く男の顔面を蹴ると、男は泡を吹いて気絶してしまった。そして、今度は月夜が一人の男の額に指を軽くトンッと当てる。すると、その男は白目を剥いて失神してしまった。残りの三人も次々と泡を吹いたり白目を剥いたりして道路に横たわっていく。


「なんだ、てめえら何をした 」


 何が起こったか分からず男はぶるぶる震えながらも、ナイフは放さずに持っている。


「おやおや 君の相手は僕たちではなく、そちらに居るでしょう 気を付けた方がいいですよ、彼は僕たちと違って凶暴ですからね 君がどんな風に残酷に殺されてしまうのか楽しみです 」


「私なら、すぐに土下座して謝ってしまいますけどね 」


 月夜に続いて、忍がグフグフと不気味に笑いながら言う。男は、子供と明子の前にいる仲間に目を向けた。その男はカトリーヌと睨み合っている。


「おいっ そっちはいいから、こっちに来い 」


 ナイフを持った男が呼ぶが、この男も動かない。いや、全身が恐怖でぶるぶると細かく震えて動く事が出来なかった。


「もう この人は動けませんわ ほら、もう一匹 」


 カトリーヌが手を振ると男の体に何かが飛び付いた。よく見ると男の体を、もぞもぞと動き回っているものが多数目に入る。


「カバキコマチグモ 日本最強の毒蜘蛛です 何匹に噛まれたら死にますかね ふふっ 」


 カトリーヌが笑い、トビもヒヒヒッと不気味な笑いを浮かべていた。男は自分の体を這い回る無数の毒蜘蛛の恐怖で、涙を流し引き攣った顔で震えている。


「動いたら噛まれますよ でも最初に一回噛まれていますからね そろそろ激痛が体を襲う時間です この蜘蛛の神経毒は強力ですから、どこまで耐えられますかね 楽しみです ふふふっ 」


 カトリーヌは残酷に笑うと、倒れている正一に手を伸ばす。


「君は勇敢だね でもこの場合はお母さんの手を取って人の多い方へ逃げるのが正解 立ち向かうだけが勇気じゃないからね 」


「うん ありがとう お姉さん、名前は? 僕は正一 」


「私はカトリーヌ よろしく、正一くん 」


 カトリーヌは再び男の方に目を向けると、男は涙を流し必死に激痛に耐えていた。


「ふふふっ よく我慢しますね でもせっかくの楽しい家族旅行を台無しにされた正一くんの気持ちはこんなものでは治まりませんよ 」


 カトリーヌは、ふふふっと冷酷に笑うと男をトンッと押した。男はふらついて二三歩歩いてしまい一斉に毒蜘蛛が噛みつく。毒蜘蛛に噛み付かれた男は、どうっと道路に倒れた。


「うわーっ、痛いっ 噛まれた 助けてくれぇ死にたくねえ 」


 男が絶叫する様をカトリーヌは笑って見ている。トビも楽しそうにヒヒヒッと笑っていた。そして、更にカトリーヌは涙を流す男の顔面を足でグリグリと踏み付け、ふふふっと楽しそうに笑った。


・・・トビ君、残酷で素晴らしいですね それに傀儡師(くぐつし)であると同時に(むし)使いなんて…… ・・・


 忍が、見直したというようにトビとカトリーヌを見ている。


・・・いや、忍くん あれはトビくんじゃなく、トビくんが創り出したトビくんとは別のカトリーヌの人格だと思うぞ ・・・


 忍が、えっと驚くが月夜はあれは間違いなくトビが考えだしたトビとは別人格のカトリーヌの性格だと確信していた。さすがトビくん、忍くんと並ぶ立派な変態だと月夜は微笑んでいた。


「おいっ残るはあんた一人だけど、どうする? 」


「あんたたち、何者なんだ…… 」


 寅之助がナイフを持ったままブルブル震える男に詰め寄り、月夜や忍、カトリーヌとトビも近付いてくると、男はあっさりとナイフを投げ捨て頭を下げる。


「すいませんでした 許して下さい 」


「謝るのは俺にじゃない こちらのご家族の方にだ 」


 寅之助が男を一喝し、男は金田たちに頭を下げ謝罪する。そこへ睦美が出て来て、頭を下げる男の前にバッと足を突き出す。


「頭を下げるだけで許されると思ったら甘いわ 私の靴を舐めなさい 」


 男が目を丸くし、月夜たちも思わず耳を疑った。全員から冷たい視線を浴びた睦美は狼狽えて、両手を体の前で振って、違う違うとアピールする。


「一回言ってみたかっただけですよ 冗談です 」


 しかし、男は睦美の前に跪くと震えながら睦美の靴を舐め始めた。


「ひぃぃーーっ 」


 睦美は慌てて飛び退くが、みんなからの冷たい視線がさらに鋭く睦美に突き刺さる。唯一人カトリーヌだけが親指を出し、グッジョブと睦美につぶらな瞳で笑顔を向けていた。


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