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十二話 追跡


 十二話 追跡



 ハナを先導に月夜と忍は、夜の闇の中を駆け抜けていく。そして、ハナは住宅街の中の一軒の二階家の前で足を止めた。周りに建っている住宅となんら変わりのない普通の住宅に見える。


「木を隠すなら森の中か 」


「まったくですね どうしますか、チーフ 」


「簡単なのは、あの四人を締め上げて口を割らせるのが一番だな 」


「では、それで 」


 月夜と忍は、気配を消し夜の闇の中に紛れる。ハナは自分の役目はもう済んだと、本来の任務であるトビの護衛に戻っていった。



 家の中では、居酒屋に居た四人が缶ビールを開け歓談していた。


「今回はバイト何人くらい雇うか 」


「そんなにいらないだろ 相手は高齢の年寄りだ 」


「バイトが少ない方が俺たちの取り分も増えるしな 」


「まったく楽なもんだ 馬鹿な奴らを使うだけで金が手に入る 」


 四人が下品な笑い声を上げた時、部屋の灯りがパッと消えた。


「なんだ、停電か 」


「おい、ブレーカー見てこい 」


 男の一人が立ち上がり廊下に出た所で、ぐっと声を上げ床に倒れる。


「なんだ、どうした 」


 また一人の男が廊下に出て行き倒れた。残った二人はさすがに異常に気付き、一人が手にナイフを持ちスマートフォンのライトを点け辺りを照らすが、怪しいものは見つからなかった。


「嫌な予感がする サイレンスに一報入れとけ 」


 急ぎ一人の男がスマートフォンを耳に当て連絡をとる。


「あっ…… 俺です 今、何かおかしな事が起きてます 何人か送って貰えますか はい、頼みます 」


 もう一人の男が隠れるようにして窓から外を覗く。


「ここ以外、電気は点いてる やはり、おかしいぞ 」


 二人は慎重に周囲に注意を払いながら廊下に出ると、倒れている筈の男の姿がなかった。


「気を付けろ 忍び込んでる奴がいるようだ 」


 その時、部屋の中でカタッと音がする。二人は目を合わせるとライトを消し、ゆっくりと室内に戻り息を潜めて辺りを伺う。すると、またカタッと小さな音がする。男は音のした方にそろそろと近付いていくと、機械式デジタル時計の文字盤が落ちる音だった。


「脅かしやがる 」


 男がふっと息を抜いた時、背後から男の首に刃物のような物が当てられた。もう一人の男も後ろから首に刃物を突き付けられている。


「静かに…… こちらの質問に答えてもらおうか 」


 刃物は首に当てられている。少しでも動けば首が切れそうだった。男の顔を冷汗が流れる。


「君たちを動かしている者は誰だ? 」


 耳元で感情の無い抑制された声が聞こえた。この声では、男なのか女なのか、若いのか年を取っているのかさえ分らなかった。


「し、知らない…… メールと電話で指示されているだけだ 」


 男は震える声で答えた。自分の首に刃物を当てている人物から、答えなければ容赦なく首を切るという冷酷な殺気が伝わってくる。


「名前くらいは知っているだろう 」


「”サイレンス”と言っていた それ以外は知らない 」


「どこを襲う気だ 」


「く、詳しくは知らない これから具体的な話があるところだ 」


「そうか 知らないなら用はない 死んでもらおうか 」


 その冷酷な声に男は慌てて許しを乞う。


「他に知ってる事は言うから助けてくれぇ 」


 首に鈍い痛みが走り血が滲む。


「やめろぉ ”サイレンス”は個人ではなくて集団らしい ネットを使って色々な募集をかけてる あとは本当に知らない 」


 男が命惜しさに喋り始めた時、闇に紛れて一本の黒い矢が窓を破り男の頭を狙い飛んできた。男の後ろにいた人物が、男の眉間に矢が突き刺さる寸前で、パシッと受け止める。


「ひぃぃーーッ」


 男は目の前で震える矢を見て悲鳴を上げる。


「どうやら お前たちは裏切り者と思われたようだな 」


「そんな筈はない 俺たちは……」


 続けて二本、三本と続けざまに矢が飛んでくる。男たちを捕らえていた人物は、男から離れ矢を叩き落すが、その隙に捕らえられていた男二人は逃げ出していた。


「ちっ 逃げ足は早いな 」


 男に向けられた矢を止めた人物が悔しそうに呟く。そこへ、もう一人の男を捕らえていた人物がやって来た。


「忍くん、もういいよ これで奴らは次のアジトに逃げ帰るだろう 僕たちは順々に潰していけばいい 最後に辿り着くのが敵の本拠地だ 僕が捕らえていた男の方に特殊な匂い袋を忍ばせてある 」


「はい、チーフ 」


 忍は、それまでの声とはまったく違う何時もの声で答えた。月夜たちは家から出るとスタッと屋根の上に飛び乗る。


「この匂いですね 」


「そうだ あとは少し時間をおいて辿ればいい 」


 その時、隣の屋根に居た黒装束の人物が月夜たちのいる屋根に飛び移ってきた。


「あなたが忍さんね 暗闇に紛れさせた私の黒矢をよく掴めましたね さすがは月夜に聞いている通りの”くノ一”だわ 」


「は、はい ありがとうございます 」


 忍は緊張して答える。今、この目の前にいる忍者が超一流であると、その雰囲気で察することが容易に出来た。


「もし忍くんが掴めなくても、もう一人の方を逃がしたけどね 」


「月夜 お仲間の資質を疑うような発言はいけませんよ 」


「ごめんなさい、母さん 忍くん、すまん 」


「い、いえ 」


 忍は、まだ緊張していたが、やはり月夜の母親だったのかと多少ほっとしていた。


「それと、後からここに来た三人は始末しておいたわ 」


「ありがとう 家の中にも二人いるからよろしく それじゃ忍くん、行くぞ 」


 闇に紛れ消えていく二人を見送り、ようやく月夜も一人前になってきたねと月夜の母親”水無月”は微笑んだ。


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