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内職をするのに教科書はいいカモフラージュになりました

 [内職をするのに教科書はいいカモフラージュになりました]



 俺は花屋のバイトに行っていた。


「菜乃介君、これを黒粒珈琲まで持って行ってくれないかな? それが終わったら今日はそのまま帰っていいから」


花世(はなよ)店長、分かりました。お疲れ様です!」


 俺は花束を持って黒粒珈琲に向かう。


 カランコロンと扉の音を立て、黒粒珈琲に入る。


「いらっしゃいませ、って菜乃介じゃない」

 深雪さんが店員をしている。

 ウェイターの制服が格好良くきまっている。


「お花をお持ちしました」


「わぁ綺麗な花ね、菜乃介君いつもありがとうね」

 この黒粒珈琲の店長、黒粒モカさんが微笑む。


「いえ、お得意様ですから」

 俺は慣れた手つきで花束を分解して、各テーブルに花をセッティングしていく。


「ありがとう。珈琲飲んでいくわよね?」

「いつもすみません。いただきます」


 ーー今日もぷりんのせいで疲れたけど、この美味しい珈琲とこのリラックスさせる空間が俺を癒してくれる。


 俺が淹れてもらったコーヒーに口をつけた瞬間、勢いよく店の扉が開き聞き慣れた声を発する物体が飛び込んでくる。


「モカさん! コーヒー一丁!!」


「……また、お前か」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 少し前に遡る。


「はぁ、五梨先の反省文大変だった……テッテレー、ぷりんの文章力が上がった! うむこれなら小説家になれるかもしれない」

 そうなことを考えていると私は歩いていると、どこともなくいい匂いがする。


「む! この匂いは」


 心よりも身体が先に匂いの元である調理室に向かっていた。


「この匂いは何でこざいまするか!」

 勢いよく調理室扉を開ける。


「ぷ、ぷりんちゃん⁉」

 家庭科部の無知子がクッキーを焼き上がったクッキーを持っている。


「ほうほう、美味しそうなことこの上なし」

「じゃ、じゃあどうぞ」


 私は一つクッキーをいただく、プリンをこよなく愛する私だが、基本甘い物全般は大好物である。

 そして無知子ちゃんが作ったクッキーはとても美味しい。


 チョコチップやアーモンドスライスなど、こじゃれた物の入っていない素朴なクッキーだが、だからこそ作り手の腕の差が大きく現れる。

 はっきり言って最高だ。


「うむ、美味い(うまい)。これを頂ける彼氏は幸せなこと確定ですね!」

「か、彼氏なんていないよぉ~」


「な、なんと!! こんな良物件が手付かずとは、男子は何をやっているのだ! なら私が貰います!」

「え⁉ それは困るよぉ~」


「あはは、残念♪」

「ならば、この私がフリーなぷりんちゃんをいただきますな!」


 突然ぬるっと、ガス子が現れる。

「……こいつはなんでいるんだ?」

 ぷりんは真顔でガス子を指さす。


「え、えっと化学部の方々にもお手伝いいただいたんです」

「てめぇ、何かヤバイ物入れてないだろうな、あぁん!」

 ぷりんは勢いよくガス子の胸倉を掴む。


「ぶひぃ!! 何も入れてないですぞ!!」

「よろしい。ならばもう貴様に用はない帰れ」


「そんなご無体な!」


「何を言っているんだい? お前は私のクッキーのためにここまで働いた、そうだね?」

 ぷりんはガス子の顔を見つめて、洗脳するように話しかける。


「は、はい、そうです」

 ガス子の目を虚ろになる。

「ならば、もう役目は終わりだ。分かるね?」


「はい、プリン様のおっしゃる通りです。よしお前たち帰るぞ」

「え⁉ 部長⁉」

 ガス子は化学部たちを連れて調理室を去って行く。


「これでゆっくりできるね」

「そ、そうかな? とりあえずコーヒーを淹れるね」


「無知子ちゃん! コーヒーが切れてるよ!」

 家庭科部の部員がコーヒーを確認すると全て飲みつくされた後だった。


「え⁉ じゃあ紅茶は?」

「紅茶もないよ! 全部化学部の皆さんが飲んじゃったよ!」


「……化学部、潰すか」

 ぷりんは真顔で席を立つ。


「ちょ、ちょっと、それは可哀そうだよ!」

 化学部の元に向かおうとする。ぷりんの後ろから抱き着いて止める。

 抱き着いた際、ぷりんの背中には柔らかい感触が。


「おほっ! し、仕方ないなぁ、じゃあどうするか……そうだ! モカさんの所に行こう!!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 こうして現在に至る。


「……また、お前か」

 菜乃介は嫌な顔をする。


「お! 菜乃介じゃん!」

「今日はもう会いたくなかったよ……」


「はっはっは! 家に帰ったらまた会うじゃん、何言ってんの?」

 そう言うと、ぷりんは菜乃介の肩をバンバン叩く。


「はぁ、そうだった家に帰ってもこいつがいるんだった」

 菜乃介は頭を抱える。


「でも、今日はありがとう。カバンを持って来てくれて。おかげで助かったわ」

「どうせ、授業中寝てたんだろ?」


「ううん、今日は寝なかったよ」

「そ、そうか」

 菜乃介はプリンに見えないように微笑む。



「反省文を書いてた」


「真面目に授業をする先生に謝れ!」



「内職をするのに教科書はいいカモフラージュになりました」

「そうですか!! 俺の苦労は日の目を見て良かったですね!!!」

 俺はキレた口調で言い放ちそっぽを向く。


「えい!」

「痛っ、ってこれクッキーか?」

 菜乃介のほっぺをクッキーでつつくプリン。


「うん。今日のお礼にどうぞ。あーん!」

「⁉ し、仕方ないな」

 菜乃介は差し出されたクッキーを食べる。


「……美味しい。幼い頃、植物しか食べて来なかったけど、何だか懐かしい味がする」

「へーだってさ、良かったね無知子ちゃん」


「は?」

「え、えっとありがとうございます」

 無知子は照れた様子で頭を下げる。


「これを作ったの無知子ちゃんだよ」

「お前じゃないのかよ!!」


「ご、ごめんなさい」

 無知子ちゃんは涙目になる。


「あぁ、君は悪くないよ、悪いのはこいつなんだから。それより、こいつが普段から迷惑をかけてないか?」

「い、いえ、いつもプリンちゃんといると楽しくて」


「菜乃介は私の母ちゃんですか~」

「いつもお前の後始末をするのは誰だと思っているんだよ!」


「アハハ! じゃあ今日から菜乃介は私のお母さんだね、菜乃介ママ~」

「よせ! お前の母さんになると余計に世話が増えちまう!!」



「なんだ? 今日はやけに騒がしいな」

「あぁ、麗しい方々の匂いが染みついた布の波動を感じる」

 マッスルと曇引変態が店に入ってくる。


「いらっしゃいマッスル、あと曇引は刑務所に帰れ」

 深雪さんは笑顔で対応する。



「ねえねえ、みゆっち、菜乃介がママになってくれるって」

「へーそうなんだ、良かったね(残念ね、菜乃介、プリンにとってあなたは母親よ)」

 深雪さんは優しい顔で二人を見守る。


「おい! 言いふらすな! 俺は絶対嫌だからな!!!」


 こうして彼女たちの日常はゆっくりと流れる。

読んでいただきありがとうございます!

とりあえずブックマーク、評価などよろしくお願いします!

また他の投稿作品もよろしくお願いします!

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