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お肉が転がっていた

 気を失っていたのは短い間だったみたい。

 目を覚ますと、ジオラルドが心配そうに私を見ていた。

 苦笑いになったけど、とりあえず心配顔に見えるジオラルドに笑って見せる。

 

「ごめん。ちょっと驚いた……。私、お肉はお肉になった姿しか見たことなくて……。アハハハ~」


「くぅ~ん……」


「うん。大丈夫。お腹が減ってはなんとやらってね。うん。頑張る。私は、ウサギっぽい魔物をお肉にする。私は、やればできる子。頑張れ私! そして、お腹を満たそう!!」


 自分を鼓舞するようにそう言った私だったけど、動物をお肉にするのに、解体? って、どうしたらいいのか分からなくて、頑張ろうとした気持ちがしぼみそうになる。

 それに、道具もないし……。

 うん、詰んだ。

 でも、ジオラルドが体を張って獲ってきたものだ。

 無駄にしては可哀相だ。

 そう思った私は、恐る恐るウサギっぽい魔物の元に向かう。

 でも、血の匂いと、モザイクが必要そうな絵面に吐き気がしてくる。

 片目を瞑って、手で鼻もつまむ。

 空いている方の手で、とりあえずウサギっぽい魔物にちょんって指先で触れてみる。

 何度かつんつんって、突いてみる。

 うん。何やってるんだろう私……。

 でも、掴むことも出来ない私は、指先で突くのが精いっぱいだった。

 心の中で、私頑張れーって、自分を励ますことをしながら、何度目かのツンツンをしたときに、指先にさっきまでとは違う感触が伝わったのよね。

 もうね。怖くて、途中から目も瞑っていたから、指先に伝わる感触が変わったことで、全身に冷や汗が噴き出していた。

 何なの? どうなってるの? って、心は焦るばかりで。

 でも、確かめないことにはどうしようもなくて……。

 怖いけど、頑張って指先のウサギっぽい魔物に視線を向ける。

 だけど、私が見た指先にあったのは、ウサギっぽい魔物じゃなかった。

 

「あ……あれ? どうなってるの? ジオラルド……あなたが?」


 私がジオラルドにそう聞くと、ジオラルドはプルプルと横に頭を振っていた。

 そして、再び指先を見る。

 そこには、不思議なことにお肉が転がっていたのだ……。

 なんで?

 これ、夢なの?

 そんなことを考えつつ、ほっぺたをつねるけど、確かに痛みがあった。

 

「夢じゃない……。なんで? お肉になってるの?」


 私が混乱していると、ジオラルドが地面の文字をタシタシと叩いていた。

 

「えっと……。す・う・か・い・つ・つ・く・に・く・か・わ・つ・た……。数回突く、肉変わった……。えっ? えーーーー?!」


 どういうこと?

 あっ、そうか、分かったわ!!

 

「ジオラルド! 私、理解したわ。ここはダンジョンの中! きっと、倒した魔物は、突くとアイテムになるのよ!! ゲームあるある~。まぁ、ゲームだと、倒した瞬間にアイテムドロップが基本だけど、ここでは、突くことでアイテムに変えるってことなのよ。うん、きっとそうよ!!」


 私がそう言うと、ジオラルドは、コテンと首を傾げていた。

 うん。子狼のそういう仕草、可愛いわね。

 

 今起こった不思議な出来事をゲームあるあるで片づけた私だけど、再び詰むことに。

 

「おーのー……。火がないから、折角ドロップしたお肉が焼けないよぉ……」



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