このエロ狼!!
子犬が実は、子狼だと知った私は驚きに声を上げていた。
だって、狼なんて、近くで見ることなんて絶対にないじゃない?
さらに言うと、抱っこなんて考えられないじゃないのよ?
だからこそ、レアな子狼との触れ合いに私は……。
うん。全力でもふるよ!!
顎の下、お腹、尻尾。
全身を余すことなくナデナデ、モフモフ!!
あっ……。
「ジオラルドは、男の子なんだね? まぁ、名前からしてそうか……。でも、可愛いからなんでもオッケイ!」
そんなことを言って、ジオラルドをもふっていたけど、当の本人は嫌がるように私の手を抜け出していた。
そして、前足で地面をタシタシってするのよ。
何が言いたいのか分からずに首を傾げていると、ジオラルドは、地面の文字を力強く叩いて何かを訴えるのだ。
「えっと……。ぼ・く・の・あ・そ・こ・を・ま・じ・ま・じ・と・み・る・な・ん・て・え・つ・ち・な・ひ・と……。僕のあそこをまじまじと見るなんて、エッチな人……。はっ! はあーーー!! なななな、何言ってんのよ!! 子犬、じゃなくて、子狼が何言ってるのよ!!」
ジオラルドの言いたいことを知った私は、慌てるように言い訳の言葉を口にする。
「ななな、何よ! 男の人の局部を見たわけじゃないし! 私が見たのは、子狼のちっちゃいおち―――」
「わんわんわんわん!!!」
「なっ、なんだって言うのよ! 自意識過剰! このエロ狼!!」
「わんわんわんわん!!!」
心が通じ合ったと思った次の瞬間には、よくわからないことで私とジオラルドは、喧嘩をすることになったのだった。
だけど、すぐに私たちは仲直りをすることになるのだ。
それは、周囲に響き渡る「ぐ~~~~~」「きゅる~~~」っていう、ジオラルドと私のお腹の音でだ。
私たちは、お互いに疲れたように地面に座り込んでいた。
「怒鳴ると……。お腹がすくのね……。ここは、休戦と行こうじゃないの」
「くぅ~ん」
「でも、こんなところで食事だなんて……。そう言えば、魔物って……食べられるのかな?」
なんかもうね、疲れるし、お腹すくしで、私の思考は駄目な方にと進んでいたのよ。
でも、そんな私を止める人もいない今、私は、食べられるなら何でもいいやって方向に向かっていたのよね。
そして、ジオラルドもまた、そうとうお腹が空いていたみたいで……。
地面の文字をタシタシって指し示すのよ。
「えっと……。ぼ・く・か・り・い・く・お・う・え・ん・た・の・む……。僕、狩行く。応援頼む……。なるほど。うん。ジオラルド、頼んだわ! 私たちのご飯を獲ってきて!! 頑張るのよジオラルド!!」
「わふん!!」
こうして、ジオラルドは、勇ましく安全エリアを飛び出していったのだった。
って、えーーーーー!!
待って待って待ってったら!!
ダメダメダメよ!!
魔物なんて獲ってきても、捌けないし!!!