しんどいしんどい!!
ジオラルドの用意してくれたお金で船のチケットを購入した私は、今、船酔いでダウン中です。
加護の力で自分自身を応援しても、少し良くなるだけで、時間が経つとまた……ぎもぢわるい……。
うっぷっ……。
そんな私のことを心配して、ジオラルドが枕になってくれるのだ。
柔らかいお腹に顔を埋めてると、少し気分が落ち着いていく。
「じおらるどぉ、ありがとう……」
『いいよ。チヤは、眠ってて。中津国までは、まだ十日くらいかかるから』
「とおか……、じぬ……、わたじ……、じんじゃうぅ」
私が泣き言を言うと、ジオラルドがペロペロって顔を舐めてくれる。
はぁ、可愛い。でも、まだ十日もかかるとか……、死んじゃうよ……。
だけど、運がいいみたいで、海があれることもなく、平穏無事に十日間の航海を終えることができたのだ。
港に着いて、数日ぶりに陸に立った時には、感激したわ。
ジオラルドの勧めで、近くの飲食店で休憩することにした私だったけど、中津国に来てよかったって本気で思っている。
街を行きかう人は、着物っぽい衣装だった。
うん。なんか、和風な街並みと、和風な服装に安心する。
そして、入ったお茶屋さんで、あんこ餅が!! あんこ最高!!
中津国の食事は間違いなく和食だ!
急激に元気を取り戻した私に、ジオラルドはニコニコとした声で言ってくれた。
『よかった。チヤがここを気に入ってくれたみたいで』
「うん! すごーく気に入ったよ!」
元気になった私は、とりあえず今日泊まる宿を探すことにしたんだけど、その宿で運命的な出会いをすることになるのよ!
温泉旅館みたいな宿屋に入ると、推しが……。生きて歩く推しがいたのよ!!
明るい髪色で、きつい眼差し。長身でイケメン。腰に差した刀と黒を基調とした神父服に白いストラ……。
うわわーーーーー!!
どうしようどうしよう!!
推しが三次元に?!
しんどいしんどい!!
えっ?
こっち見た……。
目があった……。
尊い……。
そんなことを思っていると、推しにうり二つのその人は、そのまま私の横を通って宿の外に行ってしまったのよ。
もうね、すぐに追いかけたわ。
推しのそっくりさんの五メートル後をね。
不審な行動をする私に、腕の中のジオラルドが不機嫌そうに言うのだ。
『どうしたの? 宿は? あの男を追いかけてどうするの?』
「っ! ごめんね。でも、好きな人(推し)に似てて……。気になって……」
『ふーん……。チヤは僕のお嫁さんになってくれるんじゃなかったの? 嘘つき……』
「えっ、いや、ごめん? でもでも!!」
そんなことをしている間に、推しを見失ってしまっていた。
残念に思いつつも、本物の推しのはずがないと、私は追いかけるのを諦めて宿に引き返していた。




